横須賀基地の水兵が娘殺害で有罪に

2012.2.17


 military.comによれば、ミサイル駆逐艦フィッツジェラルド(USS Fitzgerald)のレクエア・コールドウェル上等水兵(Seaman Lequae Caldwell)が横須賀海軍基地での軍事裁判で、5歳の娘アビアナ(Aviana)を殺した件で禁固15年を宣告されました。

 コールドウェル上等水兵は2011年1月15日に泣き叫ぶ娘に怒りをぶつけ、空手チョップのように2回娘の胸を叩き、彼女の心臓を破裂させ、彼女は「空気飢餓(air hunger)」を起こした後で数分後に死亡しました。

 コールドウェルは最初、同じ艦に勤務するカメリア・ジャーマン上等水兵(Seaman Camellia Ngirmang)の感情を傷つけないために子供を叩いたことを否定しました。「私は妻に死んだ子供と殺人者の夫を同時に与えることができなかったので嘘をつきました」。彼はビデオ録画された自白の中で海軍犯罪調査部の捜査員に犯罪を認めました。

 裁判官、デビッド・バーガー大尉(Capt. David Berger)は禁固21年を宣告しましたが、統一軍規法典の下では、司法取引によるさらに軽い宣告は裁判官の判決に優先します。横須賀の拘置所で過ごした407日がコールドウェルの刑期から差し引かれます。

 コールドウェルはアビアナを殴った後で狼狽え、呼吸を取り戻すためにアビアナに冷たいシャワーをかけました。彼はパソコンでオンラインの医療サービスを探し、戻った時には娘は息をしていませんでした。心肺機能蘇生を試み、娘を駐車場に運び、そこで妻に出会いました。彼らは病院に行き、コールドウェルは娘について嘘を言いました。病院は警察に通報しました。

 弁護人のアダム・パートリッジ大尉(Lt. Adam Partridge)はカメリアに、夫を愛しており、早く戻ることを望むかと尋ね、彼女は両方の質問に「はい」と答えました。アビアナの死後、彼女はコールドウェルの二番目の子供を産みました。検察官のエリック・ネルソン大尉(Lt. Eric Nelson)は息子の保護のためにコールドウェルが25年間監禁されるべきだと主張しました。弁護人のヘイズ・ラーシェン少佐(Lt. Cmdr. Hayes Larsen)はコールドウェルの苦悶と悲しみにについて触れ、禁固5〜8年を勧告しました。

 コールドウェルは不名誉除隊、給与等級E-1への格下げ、公判前の期間の給与喪失を受けました。


 妻の証言などは省略しました。

 コールドウェルは反省しているようですが、裁判官が禁固21年を宣告するなど、司法の判断は厳しいものでした。米軍は下級隊員がこの種の事件を起こした場合、非常に厳しい判断をする傾向があるように思われます。

 当サイトでは米軍の裁判記事をできるだけ取り上げるようにしていますが、それは米軍がどのような司法を行っているのかを知るためです。彼らが考える社会正義がどんなものかを知ることは、米軍について判断をくだす時に必要だからです。

 コールドウェルは早く家族の元に帰りたいと考えたのでしょう。娘を殺した埋め合わせを妻と息子に対して行いたいと考えるのは自然です。そこで有罪を認めるので刑期を縮めて欲しいと要望し、司法取引がなされたのでしょう。しかし、裁判官の判決自体が厳しく、司法取引を加味しても15年の刑という結果だったのです。これを厳しいとみるか、甘いとみるかは難しいところですが、私は厳しいと言ってよいと思います。

 この種の事件が日本の領域内(米軍基地は治外法権ですが)で起きていることにも注目して欲しいと思います。米軍隊員は基地内はアメリカと同じだという意識で生活しています。基地の学校では日本の文化を生徒に紹介するなど配慮は行っています。映画「スターウォーズ」の主演、マーク・ハミルの父親も軍人であったため、ハミルは少年期に日本にいたことがあります。彼が「スターウォーズ」に出演した理由のひとつが剣道をやっていたことがあるようです。彼の役は光線剣の使い手でした。こんな風に日本に駐留する軍人の家族なら、現地の文化を知ろうという考えがあるのは確かです。それでも、様々な問題が起きて、米軍基地と現地には軋轢が生まれるものなのです。この事件は完全に基地内で起きたことですが、場合によっては基地外が関係することもあるのです。


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