NATO軍撤退で拘留者の虐待が増える?

2012.2.16


 military.comによれば、NATO軍がアフガニスタンで縮小されると、アフガン当局に引き渡された囚人が拷問されているかどうかを知るのが難しくなると報じました。

 通常、NATO軍は差し迫った脅威ではないと判断された拘留者はアフガン当局に引き渡しています。しかし、国連の調査者がこうした刑務所で拷問の証拠を見つけてから、同盟軍は9月に16ヶ所のアフガンの拘留施設への転送を止めました。それ以後、NATO軍は指摘された刑務所での調査・訓練のための集中プログラムを開始し、施設が改善された12ヶ所の施設への転送を勧告しました。アフガン当局は当初、いかなる虐待の告発も否定しましたが、NATO軍と共に改善プログラムを実行しているとNATO軍広報官、カーステン・ジェーコブソン准将(Brig. Gen. Carsten Jacobson)は言いました。

 しかし、ジェーコブソン准将はNATO軍は虐待の疑惑があれば転送を中止する一方で、国際軍が囚人を監視する組織的なプログラムがないことを指摘しました。NATO軍は現場の兵士と国連のような独立グループの報告に依存しています。「我々はすべての刑務所を調べる責任を負えません。我々は拘留者に責任があります。拘留者が転送される施設に合理的な疑いがある場合、その施設への転送を中止します」とジェーコブソン准将は言いました。アフガン全土で約100人の拘留者がいます。「この地域に永久にいて、合理的な疑いを提供する兵士がいなくなると、この地域では国連への依存が大きくなります」。

 虐待が見つかった16ヶ所の刑務所の再承認に取り組んでいるカール・ディック少佐(Maj. Carl Dick)は、NATO軍からアフガン政府に支配が変わった地域での軍の報告は減っていくだろうと言いました。NATO軍はすでにアフガンから撤退を開始しており、2014年末までに全土の治安がアフガン政府に渡されることになっています。「我々にはすべての刑務所に行くために待機させる兵士はいません」「我々はここで厳しい武装勢力との戦闘をしており、11月末までに30,000人の兵士を失っています」。

 アフガン人拘留者の扱い方の問題は国際部隊がこの地域での駐留を減らす上で問題になり続けています。アフガン政府には大勢の重要な武装勢力を含む施設の完全な管理を担う準備がないとして、アメリカは繰り返して、最大の拘留施設をアフガン政府に渡すのを送らせてきました。

 ハミド・カルザイ大統領(President Hamid Karzai)は国家主権の問題として、アフガン人と外国人3,000人を抱えるパルワン拘留施設(the Parwan Detention Facility)の管理をアフガン政府が得る期限を3月9日に設定しました。


 話が複雑になってきました。元々、NATO軍の米軍が武装勢力を拷問しているとして、アフガン政府が拘留施設の引き渡しを要請してきたはずですが、今度はアフガン政府が拷問をしているとNATO軍が主張しています。端から見ると、お互いに責任を押しつけ合っているようにも見えます。米軍からすれば、収容所の引き渡しを遅らせるための口実のようにも見えます。

 何が真実かは、これらの情報だけかは分かりません。しかし、国連が問題を発見していることから、完全な嘘ではないとも考えます。様々な状況が複合的に絡み合っているのでしょう。

 問題は根本的な解決が取られるという確証がないことです。アフガン戦の終わりには相応しい話ではあるものの、まったく救いがないという感じです。


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