アサド政権がさらに弾道ミサイルを発射

2012.12.22


 BBCによれば、NATO軍のアンダース・フォー・ラスムッセン事務総長(Nato Secretary General Anders Fogh Rasmussen)は、シリア政府軍が反政府軍戦闘員へスカッド短距離ミサイルを発射し続けていると言います。

 NATO筋は、監視組織は木曜日の朝に、複数のスカッドタイプのミサイルが発射されるのを探知したと言いました。ラスムッセン事務総長は、それが絶望した政権が崩壊へ近づく行為と言いました。

 先週、NATO軍とアメリカは6発以上のミサイルがダマスカス地域からシリア北部へ発射されたと言いました。しかし、シリア外務省はそうした兵器を使うことを強く否定しました。シリア軍は化学兵器を搭載できる一定の能力を持つロケット砲と中距離ミサイルを持っていると考えられています。それらにはソ連製のSS-21「スカラベ」とスカッドBを含みます。

 「そういうミサイルがシリアで使われたという事実は、我々の同盟トルコに効果的な防衛と防護を与える必要性を強調します」とラスムッセン事務総長は付け加えました。

 木曜日の夕方、米当局者もシリア軍が最近の反政府派の陣地となった場所へ弾道ミサイルを発射し始めたと言いました。彼らはミサイルが化学兵器を搭載している徴候や、犠牲者がでたという情報はないと言いました。攻撃の一つは、アレッポの近くのマアーラ(Maara)に対して行われました。ミサイルは目標を逸れ、誰も怪我をしなかったと言いました。

 金曜日、反政府派はアル・サフィリア(al-Safira)の軍事産業地域を守る防空基地(kmzファイルはこちら)を攻撃しましたが、政府軍に押し返されました。

 一方で、ロシアのウラジミール・プーチン大統領(President Vladimir Putin)は、現在のシリア指導者の擁護者ではないと言いました。彼はモスクワはシリアの秩序を追求し続け、民主的政権が確立されることを望んでいると言いました。

 オランダ政府はシリアにいる人権活動家に、人権侵害の証拠を記録する機材を提供したことを認めました。オランダは裁判に備えて、彼らが収集した映像と写真を分析する専門も支援します。


 スカッドミサイルのような弾道ミサイルは意外と精度は低く、目標を外れたことは不思議ではありません。弾道ミサイルは実は榴弾砲に比べると、射程は長いものの、精度は悪いのです。それがトルコが心配する理由です。

 しかし、精度の悪さが現実化し、成果があがらないことが分かると、アサド政権はミサイルに化学兵器を搭載したくなるかも知れません。精度の悪さを、弾頭の性能で補いたくなるということです。これも、精度の悪さが災いして、政府軍のいる位置に着弾することも考えられ、使いにくいということになるかも知れません。すると、最悪の事態として、住民が住んでいる広範な場所に向けて、無差別に撃ち込むことが考えられます。これは最悪の事態です。

 実際には、化学兵器は事前の情報収集と成果の判定をした上で発射するのが常識です。しかし、政府軍は各地で分断されていて、そうした情報収集を行うための資源を持つかも疑問です。

 こうした環境が、破れかぶれの、意味のない化学兵器による攻撃が行われ、悲惨な被害をもたらす可能性を生み出しています。

 アル・サフィリアには、北東部に市街地があり、南西部に軍事産業地域があり、その南には軍の地下貯蔵施設があります。さらに、産業施設と貯蔵施設の外側を取り巻くように、幾重にも道路があるのが見られます。これはこれらの地域を防護するための防衛施設です。それは東側にはほとんどなく、西側からの攻撃だけに備えているようです。防空施設は産業施設と街の中間にあり、これも西方からの攻撃に備えているように見えます。

 ロシアが公に、アサド政権を見放す発言をするようになった点も、状況が相当に悪く、ロシアが見切りをつけたことを明白にしました。すでに「終わりの始まり」の段階に来ているのです。


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