シリア政府がイスラム過激派の化学兵器使用を懸念

2012.12.18


 military.comによれば、シリアの国連大使、バシャル・ジャファリ(Bashar Ja'afari)は、イスラム過激派がシリア国民に対して、化学兵器を使い、政府がやったと言うかも知れないと警告しました。

 ジャファリ大使は潘基文事務総長への書簡で「シリアはどのような状況でも化学兵器を使うことはありません」と繰り返しました。彼はシリア政府は「アメリカを最前線として、よく知られた国々に支援されているテロリスト」から国民を守っているのだと言いました。

 ジャファリ大使は、シリア政府はテロリズムとテロリストを支援する国々が化学兵器を武装グループに提供し、シリア政府が使ったと主張することを真剣に懸念していると言いました。彼はトルコのヨート紙(Yurt)の、アルカイダのメンバーがトルコの町、ガジアンテップ(Gaziantep)の施設で、シリア国民に使うと脅している化学兵器を作っているという記事を引用しました。「シリアに対するキャンペーンを主導する国々は、こうした活動を監視し、化学物質へのアクセスを容易にするテロ犯とグループを起訴することが、より適切でしょう」とジャファリ大使は言いました。彼は国連の監視団がシリアにいた時に、シリア政府が国選チームに、テログループが支配下に置こうと計画している保管物を調べて、安全を確保するために、アレッポ東部にある塩素の私有施設を訪問するように求めたことを想起しました。国連監視団はテログループからの攻撃を受け、訪問できませんでしたと、彼は言いました。「何トンもの有毒な塩素を保管するこの施設は、最近、テログループに占領されました」とジャファリは言いました。「最近のアメリカと西欧諸国のキャンペーン中に彼らがそうしたという事実は、状況がすべてさらに危険になったことを意味します」。彼はこうした展開を処理するために何の行動も取られず、反政府派の責任は維持されなかったと遺憾を表明しました。「シリア・アラブ共和国政府はテログループがシリア国民に対してこれらの兵器を使うかも知れないと警告します」。

 シリア大使は、シリアに対するキャンペーンを始めたことで、化学兵器や類似する兵器を使っていることを理由に、アメリカを「無道徳主義」と批判し、シリアは2003年に、中東の化学・生物・核兵器廃棄に関する決議草案を提出したと言いました。議会は草案を取り上げませんでした。


 記事は一部を紹介しました。

 ジャファリ大使の懸念は可能性がないとは言えないものの、盗っ人猛々しいというコメントしか見つけられません。シリア政府が大規模に国民を拷問していることはすでに知られているところであり、いまさら国民の人権を尊重していると言われても、納得はできません。

 さらに、これはシリア政府が化学兵器を使用するための偽情報ではないのかという見方もできます。シリア政府が化学兵器を使い、それをイスラム過激派がやったのだと主張するために、事前に種をまいているかも知れないのです。

 イスラム過激派の勢力はかなりの程度に膨れあがっているようで、心配すべき材料ではあります。しかし、彼らに化学兵器を使う能力があるかは疑問です。過去に、アルカイダが化学兵器を用いて、成果をあげた実績はなく、物資を手に入れても、使い方を突き止められるかという問題もあります。

 また、化学兵器は単に散布すればよいというわけではなく、事前の情報の収集と、最適な散布方法の選択といった、高度な考察が必要になります。もちろん、オウム真理教がサリンを散布した方法は実に原始的でした。殺傷したい裁判所の職員官舎の近くでばらいただけ、地下鉄に持ち込んで袋を破っただけでは、化学兵器の戦術を用いたとは言えないのです。もちろん、アルカイダが何かの効果が出ればよいという判断で、原始的な散布方法を使う可能性は十分にあります。それが行われれば、かなりの被害が出ると考えなければなりません。

 こうした事態に対処するには、すでに隣国ヨルダンに派遣されている米軍の化学戦部隊の活動が必要です。彼らはどのような情報分析をしているのかが気になるところです。


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