シリア反政府派が東部のデリゾール市を占領

2012.11.23

 BBCによれば、シリアの反政府派はデリゾール市(Deir Ezzor・kmzファイルはこちら)とイラク国境の間にある産油地域を支配したと言いました。

 反政府派は北部と東部で前進をみましたが、まだ政府軍から主要な都市を奪っていません。

 人権団体は反乱がはじまってから40,000人が死んだと言います。人権団体「The Syrian Observatory for Human Rights」のラミ・アブドル・ラーマン(Rami Abdel Rahman)は、木曜日に、少なくとも民間人28, 026人、政権からの離反者1,379人、兵士10,150人、分類不明の人574人がシリアで過去20ヶ月間に殺されたと言いました。国連は少なくとも20,000人が死んだと見積もります。

 水曜日に、シリアの軍用機はダマスカス郊外と北部の反政府派が支配する地域を爆撃しました。報道は人びとが首都の南部と東部の地域から逃げたと言い撒いた。北部では、アレッポの反政府派グループと目撃者は主要な病院が政府軍の空爆で倒壊したと言いました。ダル・アル・シファ病院(the Dar al-Shifa hospital)への攻撃で少なくとも15人が死亡したと報告されました。

 木曜日の朝、反政府派グループは、22日間の包囲の後で、マヤディーン基地(the Mayadeen military base)を現地時刻の午前8時30分に支配下に置いたと言いました。この戦いで44人の反政府戦士が死亡しました。シリア軍の犠牲者の数は不明で、政府は基地の損失についてコメントしていません。この報告が確認されれば、反政府派は現在、イラク国境からデリゾール州の州都までの、ユーフラテス峡谷の広範な地域を支配していることになります。マヤディーン基地は、デリゾール市の南東約42kmにあり、政府軍の重要な拠点でした。

 アナリストは、反政府派の東部と北部で立て続けの獲得は軍事力の増加を示しますが、シリア軍はまだ非常に優れた空軍力を持ち、軍隊で反撃を行いました。反政府派は政府の空爆下にあるアレッポやダマスカスで本当の進展をみていないことに気がついています。


 マヤディーン基地の位置は特定できていませせんが、マヤディーン市の位置は分かります(kmzファイルはこちら)。先日、反政府派が占領したアル・ワード油田から約35km西、イラク国境からは約83kmにある街です。

 記事は控えめに評価していますが、これらの成果はとても大きいと私は考えます。油田地帯はシリア北東部に広がっており、そこへアクセスする地域を反政府派が半分くらいは占領しているわけです。デリゾール市からアレッポ市までの間の状況は不透明です。もちろん、政府軍は飛行機でやって来て空爆ができますが、地上軍を送り込んで再獲得できそうにありません。

 記事はアレッポで進展がないと書いていますが、昨日の記事にあるとおり、アレッポ南西部の軍基地を占領したのだから、アレッポ周辺の基地も陥落しているか、包囲下にあると思われます。

 この状態が何を意味するかというと、トルコがシリア軍の地上軍に攻められる可能性がほとんどないということになります。つまり、トルコがシリアに介入しやすい状況だと言えます。トルコはNATO軍にペイトリオットミサイルの配備を要求しています。こうなると、シリア空軍はパイロットと機体の損失を恐れ、シリア北部に飛行機を出せなくなります。トルコ国境からシリアに数kmの幅の安全地帯を設け、そこに国内難民を避難させる態勢が整いつつあるということになります。

 これらの成果は、先日、欧州連合がシリア反政府派を支持すると決めた直後に達成されたので、その影響によるものではありません。今後、携帯型対空ミサイルが配備されると、成果がさらに上がるかも知れません。都市部で成果がないとしても、これらはその前兆である可能性が高いのです。

 反政府派の進展がある程度進んだ段階で、トルコの地上軍が一気にアレッポを経て南下し、シリア軍の残存部隊に打撃を与え、アサド政権を追放するというシナリオが徐々に現実化しているように感じます。もちろん、トルコ軍はシリアを占領しに来るのではなく、反政府派を支援するためだけに越境するのです。



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