シリア反政府派が第46連隊基地を占領

2012.11.22

 military.comによれば、シリアの反政府派は北部にある第46連隊の基地を占領し、戦車、装甲車、トラックに積んだ弾薬を運び去りました。

 反政府軍のアーメド・アル・ファジ大将(Gen. Ahmad al-Faj)は、反政府軍が土曜日に基地を攻撃して、内部にいる政府軍兵士を倒すか、捕らえるかした後、日曜日に完全な支配を手にしたと言いました。

 月曜遅くに、アレッポの西方25kmの基地を訪問したAP通信の記者は、7人の兵士の死体以外、政府軍の痕跡を見ることはありませんでした。反政府派は静かに基地を歩き回り、略奪品を求めて建物を捜索しました。

 月曜早くに、AP通信の記者は、大勢の反政府派が、トルコ国境近くの反政府軍司令部へ、この基地から奪ったロケット、迫撃砲、砲弾、ライフル銃で一杯のトラックから荷下ろししているのを見ました。

 アル・ファジ大将は、この戦闘が反乱が始まってから最も大きな軍需品の奪取だと言いました。「我々は体制を倒そうとする戦士たちにこの略奪品を与えます」「この多くの略奪品以上の戦いはありませんでした」。アル・ファジ大将はこの戦いで反政府派7人が死亡したと言いました。彼は戦闘開始時に、どれだけの政府軍兵士が基地の中にいたかや、どれだけが殺されたかは分からないと言いました。しかし、彼は反政府派は約50人の捕虜をとり、彼ら全員は反政府派の裁判所によって裁きにかけられると言いました。


 第46連隊の位置がまず気になるところです。アレッポから西へ向かう幹線道路「ハラップ・エドレップ道路(Halap-Edlep Road)」を辿ると、巨大な弾薬庫があります。2011年10月の衛星写真を見る限り、連隊駐屯地という感じではないのですが、ここが第46連隊です(kmzファイルはこちら)。

 急速な展開に驚きましたが、先日、指摘したように、そろそろ目立った戦果が出てもおかしくない時期なのです。ハラップ・エドレップ道路も反政府派の手中にあると見てよいですし、バブ・アル・ハワ道路(Bab Al Hawa Road)もそうだと言って構わないでしょう。この付近には政府軍施設がいくつもあります。第46連隊が陥落したのなら、それらも陥落しているはずなのですが、そういう情報はありません。例によって、反政府派の公報の不備なのか、まだ占領していないのか。 下の図を見てください。赤丸は第46連隊の位置、紫の丸はシリア軍の施設の位置です。

図は右クリックで拡大できます

 常識的に考えると、紫の丸はほとんどが反政府派の手に落ちているはずなのです。そして、反政府派がそれを宣伝し、アレッポの占領を宣言してもおかしくない状況なのです。しかし、今回報じられたのは、第46連隊の占領だけです。ということは、政府軍施設は反政府派に包囲されながら、まだ持久しているのかも知れません。

 それを裏づけるのが、第46連隊の政府軍兵士の数です。AP通信の記者は政府軍兵士7人の死体を確認し、反政府派は50人しか捕虜を取りませんでした。到底、この人数は連隊規模とは言えません。この辺の政府軍はこのように漸減しており、第46連隊が先に限界に達したのかも知れません。

 ところで、取り上げる前にガザ停戦が成立しました。イスラエルは地上戦の構えを見せましたが、思い止まりました。当サイトで2006年に何度も取り上げたように、イスラエルのレバノン侵攻は予想以上に成功しませんでした。それがまだ、イスラエルの頭の中に残っているのだと思われます。侵攻しようとしても、短期間で完全に制圧しない限り、ハマスはロケット攻撃を続け、イスラエル国内に大きな被害が出ます。ハマスもイスラエルを食い止められるかは、完全な自信はありません。アラブの春で国際社会の信任を得たエジプトの仲介は、どちらの側にも利用する価値があったのだと考えられます。いつも書いていますが、人は争う理由がないときには争わないものなのです。ひどい戦いになる時には必ず理由があります。



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