北朝鮮が西海で新エンジンのテスト?

2012.11.15

 38north.orgによれば、北朝鮮は弾道ミサイルの開発をさらに続けている兆候があります。

 商業用衛星写真は、北朝鮮が打ち上げ失敗以降、少なくとも2回、あるいはそれ以上のエンジンのテストを、最近では9月に西海衛星発射施設で行いました。こうしたテストは銀河3号衛星ロケットや、今年4月に平壌のパレードに見られたKN-08長距離ミサイルの、液体燃料の1段機体とみられます。

 さらに、西海衛星発射施設の衛星写真は、より大きな銀河3号かKN-08の打ち上げに必要な上部ガントリーの建設活動を示しています。

 北朝鮮は4月13日から9月17日の間に、西海で1回以上のエンジンテストを行ったようです。4月9日の写真は34台の燃料タンクが燃料貯蔵棟の両側にあることを示します(figure 1を参照)。

 9月17日の写真はエンジンテストが行われたことを示す、いくつかの変化を示します。燃料タンクがなくなっています。噴煙溝が燃料燃焼の噴煙でオレンジ色になっています。噴煙溝の東側の植物が燃えたように見えます(figure 2を参照)。

 北朝鮮が4月の失敗の飛行データを解析するために、エンジンテストまでに十分な時間があったかは不明です。

 北朝鮮はKN-08の長距離ミサイルのテストも行ったかも知れません。34台のタンク(直径1.2m、長さ2.2m)は、過去に北朝鮮で見られたソ連製の標準500リットルの燃料タンクのようです。

 9月28日の写真は、別のロケットエンジンが最近行われたことを示します(figure 3を参照)。再び噴煙溝が変色し、さらに正面と左側の植物が燃えています。さらに、燃料タンクらしいもに加え、小さなクレーンとトラックが見られます。クレーンはエンジンをテスト台に載せるのに使われたようです。テスト台から測定基地までの道路に約3分の1改良があり、車両が止まっています(figure 4)。光学測定は2008年6月に、この位置で初めて観測されました。

 施設の支援エリアへ戻る道路の脇にある、より大きなトレーラーは、白く、長さ3.2m、直径1.8mの物体を積んでいるようです。これがロケット用の燃料タンクだと言うことはできませんが、どちらも西海で見られたことはありません。物体が最近テストされたエンジンである可能性はより高いのです(figure 5)。トラック後部の物体の幅・直径は2m以下で、それは銀河3号の2.4mよりも、KN-08に近いとみられます。

 衛星写真は、北朝鮮が銀河3号よりも大きなロケットを打ち上げるのに必要な上部ガントリーを完成させることに取り組んでいることも示します(figure 6を参照)。以前の衛星写真は黒いキャンバスで囲み、覆った、ガントリー上の合計4つの作業用足場のセットを示しました。クレーンは発射台の長い軸に垂直に並び、囲った作業用足場の上にありました。

 9月28日の写真は、より低い、作業用足場の3つのセットが囲んだままで、天辺のセットはガントリーの後ろに格納されていることを示します。貨物を支えるアームは、2012年4月8日に初めてメディアが撮影しました。より低いアームは銀河3号の機体に使われ、このアームは将来、西海から打ち上げられる、より大きなロケットを支援するために使われます。ガントリークレーンは開放された足場の上に向いており、作業が行われたことを示していました。


 記事は一部を紹介しました。

 西海ロケット発射施設は、東倉里ロケット発射施設とも呼ばれる施設です。

 エンジンテストの痕跡は間違いないものと思います。噴射炎の跡と思われるものが確認できます。

 トラックに積まれたものが、エンジンか燃料タンクかは判別できません。このテストは計画されたものであり、4月の打ち上げ失敗の原因を突き止め、改良したエンジンをテストしたのだとするには、期間が短すぎます。北朝鮮は打ち上げ失敗の数日後に、現認を突き止めたと発表していますが、明らかにこれは嘘です。原因を特定するだけで半年くらいかかり、それに対する答えを出して、新しい機材を組み上げるのには、さらに時間がかかります。だから、これはテポドン2号以外のエンジンのテストと見るべきです。

 KN-08は4月の軍事パレードに登場して、張りぼて疑惑が世界を駆け巡ったミサイルです。ただし、北朝鮮はまだ完成していないものの模型をパレードに出す場合があり、開発計画自体は存在するかも知れません。

 発射台のタワーは、確かに4月の時よりも高くなっており、その上に大型のガントリークレーンが設置されています。テポドン3号と呼ばれるべきロケットの開発計画があり、それに対応したものだと考えられます。有人ロケットとの観測もあるようですが、打ち上げては空中爆発させているようでは、いつ実現するかは分かりません。

 開発が続けられることは予測できたことで、それが確認されたということが、この記事の価値です。

 北朝鮮のロケット開発は資金不足で遅々として進まず、いつになったら地球の軌道上に乗せられるのかも定かではありません。何のためのロケット開発かすら明確ではありません。人工衛星打ち上げビジネスには、到底、質の点で他国に追いつけそうにありません。巷で言われるように、弾道ミサイル開発だとしても、長距離型が必要なのかという疑問があります。北朝鮮に攻めてきそうなのは、彼らが言う「傀儡の韓国と日本。それらを操るアメリカ」なのでしょうから、ごく近距離に核爆弾を投下できるだけのロケットがあれば、侵略されたときに、数発を撃ち込み、黙らせるだけで十分なのです。韓国と日本はそれで参ってしまい、アメリカの言うことを聞かなくなるだけの効果があります。策源地を叩かないと、敵はまた来る、と考えるとしても、アメリカを完全に黙らせるには、何発の核爆弾が必要なのかという話になります。精々、イランなどへの技術提供のための開発計画なのかとも思えます。あるいは、単に「前進あるのみ」という発想なのか。通常戦力でかなわないので、核戦力を持ちたいだけなのか。多分、彼ら自身、焦点は定まっていないのだと思います。



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