シリア内乱は中東を混乱に陥れるか?

2012.10.8


 military.comがシリア内乱が周辺に及ぼす影響について報じました。

 アサドに立ち向かう者たちの多くはスンニ派で、シリアのエリート層はシーア派の分派であるアラウィー派です。シリア国内のキリスト教徒と少数派のクルド人は争いから離れているように努めました。イラクとレバノンどちらにも、シリアと似た民族的、宗教的な混合があり、レバノンでは派閥の闘争が起きています。5月以来、戸外でアサド派と反アサド派のグループ間の衝突がレバノンのスンニ派の港町、トリポリで繰り返され、2ダース以上の人が殺されました。さらに複雑なことに、シリアに戦闘員を派遣していると考えられる親アサドのヒズボラ民兵は、レバノンの主要な政治的、軍事的な力です。レバノンの有力者たちは、シリア内乱を時刻での政治力を増すために利用したいという誘惑を長いこと我慢していると、アナリストは言います。

 1990年に終わった、レバノンの15年におよぶ内乱は、まだ大勢の記憶に深く焼き付けられていて、誰も望んでいません。「私は、レバノンの主要な政治的指導者と政治的な派閥の中に、派閥抗争を望む者がいるとは思いません」と、レバノンの「Daily Star newspaper」のマイケル・ヤング(Michael Young)は言いました。

 しかし、レバノンのもろい連立政権は隣国の長引いている闘争に耐えられず、あらゆる誤算が暴力に火をつけるかも知れません。「危機が起こすことが国家の回復力を損なっています」と、国際戦略研究所のエミール・ホカヤム(Emile Hokayam)は言いました。「小さな治安事件がまずい対処によって拡大するかも知れません」。

 シリアの内乱は、シーア派のイラク政府に、主要なパートナーであるアメリカとイランとバランスをとる必要性を、さらに難しくしました。先月、ヌーリ・アル・マリキ首相(Prime Minister Nouri al-Maliki)は、イラク空域を使ってシリアに武器を運んでいると疑われるイラン航空機を禁止するようワシントンから求められました。公式にはシリアについて中立を堅持し、マリキ首相は前向きな返事をしたものの、抜き取り検査をやっただけでした。シリアのスンニ派の闘争心は、何年も衰退していたイラクのスンニ派の武装勢力を鼓舞しました。アサドが打倒され、シリアがこの地域のスンニ派連合に参加すると、イラクはイランとより緊密な結びつきを模索すべきだと気がつくかも知れません。

 アサドの説得を試みた後に2011年8月に採用した政策で、シリアの反政府派を積極的に支援するトルコは、トルコ南部の分離主義者、クルド労働党(the Kurdistan Worker's Party: PKK)の攻撃の急増を受けているところです。8月に、トルコのビュレント・アルンチ副首相(deputy prime minister, Bulent Arinc)は、こうした攻撃の多くはイランから侵入したクルド人のガンマンによって行われているようだといいました。トルコの政府派新聞「Sabah」は、イランの情報部がクルド人の反政府派の侵入に関する情報をトルコに提供するのを止めたと言いました。

 アサド大統領はトルコに対する駒として、シリアのクルド人も利用しました。春に、トルコがシリアに国際的な強制力のある安全地帯を設けるアイデアを繰り返し出した後、シリアの政権は夏の間、トルコ国境にあるいくつかのクルド人の街から撤退しました。それは先例のない自治を与えましたが、緩衝地帯にもなりました。アサド大統領はトルコに「トルコは(シリアに)介入できるが、その前にPKKと闘わなければならない」と言った、と「the Washington Institute for Near East Studies」のトルコ専門家、ソナー・カガプティ(Soner Cagaptay)は言いました。シリアが立場を選んだことは、イランを含むすべての国と仲良くすることで地域的な影響力を増すという、多数派のスンニ派トルコ人の十年越しの努力も終わらせたようです。

 ヨルダンでは、国境を越えて殺到した、約200,000人のシリア人難民が国の乏しい資源に重圧を与えていることが問題となっています。イスラエルは傍観するだけに留まろうとしましたが、先月、すべてのシナリオに対する準備ができているという明白なメッセージを送りました。緊急の軍事演習の中で、イスラエルは1967年にシリアに占領された戦略的台地、ゴラン高原へ大勢の兵士を空輸し、そこで実弾演習を行いました。ゴラン高原に近いシリア領域が混沌とした中間地帯になるならば、イスラエルは深刻な安全保障上の脅威に直面すると、イスラエルの前国家安全保障顧問のギオラ・エイランド(Giora Eiland)は言いました。先週、シリアの迫撃砲弾がゴラン高原のリンゴ園の近くに落下しましたが、イスラエルは意図的な攻撃ではないとみなすと言いました。


 時間がなくて、記事は一部だけを紹介しました。

 アメリカの記事なので、結局、シリア内乱がアメリカにどう影響するかという話になっている点は不満ですが、この紛争に関係する国やグループについて書かれている点は参考になるはずです。

 時間がないので一言だけにしますが、私はこの記事が言うほど、シリア内乱は周囲に影響を与えないと思っています。



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