シリアがトルコ領内を再度砲撃

2012.10.6


 BBCによれば、シリア軍によるトルコ領内への砲撃が再び起こりました。

 水曜日に、ティムシン氏(Timucin)の妻、ゼリハ(Zeliha)と7人の子供のうち、14歳のファトマ(Fatma)、エイセグル(Aysegul)、8歳のゼネプ(Zeynep)が、アクチャカレ(Akcakale・kmzファイルはこちら)の自宅近くに落ちたシリア軍からの砲弾で殺されました。他の3人の子供、16歳のハティス(Hatice)、10歳のマーヤム(Maryam)、4歳のエイセル(Aysel)が爆発で負傷しました。子供たちは別々の病院に送られました。ハティスは集中治療室におり、一番若い子は整形外科で治療を受けています。父親はまだ彼らに母親と兄弟の死を話していません。彼はアサド大統領に同じく痛を味わって欲しいと言います。「アサドはカダフィと同じ運命になるべきです」。

 外のテントにいる男性たちは、シリアからの砲撃は入念だったと確信していると言いました。「近頃、砲撃はミリメートル単位で正確です」とある男性は言いました。男性たちは少なくとも2週間は砲撃を受け、政府は大して助けてくれなかったと言いました。「ここ2週間、我々が砲撃を受けているとき、政府はどこにいたんだ?」。女性用の哀悼のためのテントの中で、家族たちは公然と泣きました。「彼らは私の家を殺して、家の魂を殺しました。なぜこれが起こったのですか?」と、殺された3人の子供の祖父は言いました。

 砲弾の爆発の破片は通りに面したアパートに被害を与えました。ティムシン氏の家はシリアに面する道路から通りを一つだけ離れたところにあります。多くの家族はこれらの家を出ました。彼らは最前線に住むには危険すぎると考えます。約100mの低木地がシリアとの国境フェンスから続いています。

 シリアの国境検問では旗竿に前政権の旗が翻り、反政府派がそこを占拠していることを示します。トルコ側の国境は閉じられています。しかし、警察官が門の外に立っています。彼らはフェンスの隙間を通って2ヶ国を行き来する人を見張っています。多くのシリア人がアクチャカレで買い物をするために越境します。

 BBCによれば、トルコ軍はシリア軍の迫撃砲弾が再びトルコ領内に着弾した後で反撃しました。事件はハタイ州(Hatay province)で金曜日の午後に起こりました。負傷者は報告されていません。

 金曜日に、トルコは戦車と対空ミサイルをアクチャカレに移動し、トルコ外務省はシリアが国境から戦車とその他の資材を引き揚げたと言いました。トルコのNTVチャンネルは、シリアが軍用機とヘリコプターにトルコ国境10km以内に入らないように命令したと報じましたが、シリア政府はこれにコメントしていません。

 金曜日の砲撃事件は、アルティノズ(Altinozu・kmzファイルはこちら)の近くでありました。農村地帯に迫撃砲弾が落ちた後、トルコ軍が応戦したとハタイ州知事は言いました。

 金曜日、シリア全域で政府軍と反政府軍の戦闘が続きました。ホムス(Homs)は5ヶ月で最も激しい爆撃を受けました。アレッポ(Aleppo)で激しい戦闘があり、ダマスカス(Damascus)、ハマ(Hama)、イデリブ(Idlib)でも、政府軍の砲撃がありました。東ゴウタ(eastern Ghouta)を爆撃したという軍用機を撃墜するビデオ映像がインターネット上に公開されました。軍用機がヘリコプターかジェット戦闘機かは不明でした。


 記事は一部だけ紹介しました。

 この記事で、アクチャカレ砲撃の詳細が分かりました。Google Earthで現場を見ると、砲弾が落ちた場所は国境から100m足らずであることが推定できます。不正確な砲撃なら、これくらいの誤差がでても不思議ではありません。おそらく、砲であまり精密な狙いをつけなかったか、砲の設置が不安定で狙いが逸れたのです。

 現地の人がいう精密射撃はあてにならない情報です。シリア軍は検問所を占拠する反政府派に打撃を与え、自由シリア軍への補給を切るために、不正確な砲撃を行ったのです。検問と隣接する街は反政府派の手にあるので、政府軍は遠方から砲撃したのです。地図を使った照準だけで、砲撃観測員を着弾点の近くに配置していないかも知れません。被害がそれほど大きくないので、攻撃に使われたのは迫撃砲だろうと思われます。迫撃砲も榴弾砲も照準をつけたら、その照準を変えずに数発を撃ち(斉射といいます)、砲撃観測員が着弾位置を確認して、修正した座標を砲撃指揮官に連絡し、照準を直して、また斉射を行います。さらに正確にするには、斉射の前に発煙弾を撃ち込み、照準点を確認し、それから斉射を行います。反政府派に砲撃場所を探られる危険を減らすには、これらの手順をできるだけ省き、斉射をしたら直ちに逃げます。これを繰り返すのです。その間に、ある斉射がトルコ領内に落下したのでしょう。一つの斉射の照準は同一なので、精密射撃のように見えてもおかしくありません。

 アルティノズへの砲撃はアクチャカレとは、位置がかけ離れているので、別の攻撃と考えられます。しかし、かなりトルコ側へ10kmくらい入り込んでいるので、シリア領内を狙ったのが逸れたのではなさそうです。口径80mm級迫撃砲の射程は2〜5km、120mm級なら5〜8kmです。10kmを越える射程となると、100mm以上の榴弾砲になります。迫撃砲ならトルコ領内に入らないと、アルティノズヘへは着弾しません。本当に迫撃砲弾だったのかを含めて、確認が必要です。また、この付近は入りくねった道路がある山地で、補給ルートには相応しくありません。攻撃した理由も考える必要がありそうです。



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