CIA報告が過激派のベンガジ領事館襲撃を示唆

2012.10.20


 military.comによれば、CIAリビア支局長は、先月の米領事館への攻撃について、マホメットを嘲笑したアメリカ製ビデオに対して自然に発生した暴徒ではなく、武装勢力によって実行された証拠があると24時間以内にワシントンに報告したと、米当局者は言いました。

 米当局者2人は、CIAリビア支局長が、領事館襲撃の24時間以内に、意図を隠すためにエジプトの米施設に対する抗議デモを口実にして、武装勢力が暴力行為を開始したという、目撃者から得た諜報レポートをまとめたと言いました。この報告は9月12日水曜日の遅くに書かれ、ワシントンの情報局に翌日到着したと諜報当局者は言いました。その週の土曜日、CIAから議会に送られた状況説明は「ベンガジの抗議デモはカイロでの米大使館に対する抗議に自発的に影響を受け、直接的な攻撃に発展したとありました。

 AP通信が得た説明の要旨は「過激派が暴力的な抗議デモに参加した兆候があります」が、武装勢力が単独でやったという目撃者の説明には言及しませんでした。

 こうした現地CIAの生の諜報レポートは、普通、吟味したり、無人偵察機と衛星写真から得られた他の情報と比較するために、バージニア州ラングレーの本部にいるアナリストに最初に送られます。それが終わってからだけ、こういう情報はホワイトハウスと、その後に議会と共有され、その過程は数時間、情報が1〜2の情報源から来たり、信頼性が疑わしい場合は数日間かかります。

 情報当局者は、この場合、遅延は様々な矛盾する説明を分析するのに時間がかかったためだったと言います。ある匿名希望の当局者は、ベンガジであの晩、人びとが集まったのは明白ですが、そもそもの疑問は過激派が群衆を乗っ取ったのか、彼ら自身が群衆だったのかであり、それがはっきりするまで翌週までかかったと説明しました。

 攻撃の1週間後にデビッド・ペトラエスCIA長官(CIA Director David Petraeus)が非公開の公聴会で証言したのを聞いた当局者2人は、質疑の間に、彼がビデオに対して怒った群衆が暴力行為をはじめたという結論に反対した情報アナリストが何人かいることを認めました。しかし、当局者はペトラエスはCIAの初期の目撃報告に言及しなかったと言いました。彼は議員に、この説明はさらに情報が明らかになると変化することがある、と警告しました。

 情報当局者は主要な容疑者は地元の民兵アンサル・アル・シャリア(Ansar al-Shariah)だと言います。このグループは攻撃を否定しますが、イスラム・マグレブのアルカイダ(al-Qaida in the Islamic Maghreb)とつながっていることが知られています。その指導者と戦闘員の何人かは事件の間に領事館で地元民に見られており、武装勢力が攻撃の前後にイスラム・マグレブのアルカイダに接触していたことが傍受されていたと、当局者は言います。しかし、米情報機関員が事件の直後にベンガジを撤退したため、米諜報機関はこうした目撃報告と攻撃を記録した監視カメラに撮影された攻撃者の顔を照合できませんでした。


 パネッタ国防長官が、事件直後に、こうした証拠があると発言していましたが、それがこの報告に基づいていたことが、ようやく分かりました。

 この報告は、地元民の目撃とイスラム・マグレブのアルカイダとの接触の傍受なのか、別に何かがあるのかは分かりませんが、中身を知れないことが残念です。通信の内容が分かっているのだから、領事館への攻撃計画に関するものかどうかは、すでに分かっているはずです。それが未だに結論が出ていないのなら、通信の中身が直接テロ攻撃に関係がなかったのではないかと想像します。同時多発テロの直後、通信解析により、アルカイダが関係していることは、すぐに分かりました。アンサル・アル・シャリアがやったのなら、犯行声明を出しているはずです。もっとも、リビア当局から取り締まられないように、黙っている可能性も否定はできません。監視カメラの映像さえあれば、問題はすぐに解決したでしょう。

 PRGが領事館への放火のために使われ、迫撃砲が撃たれたことも分かっています。警備員の元シールズ隊員が死亡したのは、この迫撃砲が原因でした。軍隊が使う武器が使われたのだから、軍隊経験がある者が関わっているのは明白です。しかし、それは自然発生的な抗議デモの場合でも、リビアでは起こり得ることです。武器は大衆に広く普及しているためです。

 事の真偽は、まだ慎重に検証する必要があります。

 国務省にとっては、大統領選挙に影響する問題として、現在、事件を調査中です。しかし、外国にある領事館を完璧に警備することは不可能であり、地元国を信頼するしかないのが実状です。国際法上も、第一に責任があるのは地元国なのです。アメリカが大使館や領事館の警備を理由に、国務省の外国施設に大勢の戦闘部隊を配備できるわけはありません。しかし、こういう問題は政治家が相手を攻撃するのには格好の材料です。そのため、実際の問題以上に話が拡大していく傾向があります。



Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.