シリア軍がクラスター爆弾の使用を増加

2012.10.15
追加 2012.10.16 9:00


 BBCによれば、ニューヨークに拠点を置く人権団体「The Human Rights Watch: HRW」は、インターネット上のビデオ映像が、シリアで最近クラスター爆弾が使用された証拠を示すと言いました。

 クラスター爆弾は民間人への脅威を理由に77ヶ国が条約で禁止ていますが、シリアはこの条約に署名していません。シリアはこの件についてコメントしていません。

 マアッラト・アン・ヌウマーン(Maarat al-Nuaman・kmzファイルはこちら)で、ダマスカスとアレッポとを結ぶ幹線道路を巡って、政府府軍と反政府派の激戦が続いています。反政府派は火曜日にこの戦略的都市を確保し、政府軍のアレッポへの増援を妨げました。政府軍はまだ近くの二つの基地、ワディ・ダイフ(Wadi Daif)とハムディヤ(Hamdiyeh)を確保しています。HRWは、最近のクラスター麦言の攻撃の多くは、マアッラト・アン・ヌウマーンを通る幹線道路周辺の街に対して行われたと言いました。HRWによれば、ビデオ映像の中のクラスター爆弾の弾筒と子弾は、航空機に取り付けられ、投下されることで生み出される破壊と摩耗の形状を示しています。爆弾は、子弾AO-1SChを持つ、ロシア製のRBK-250シリーズのクラスター爆弾弾筒と特定されました。

 クラスラー爆弾を示すビデオ映像はこちら

 この記事の元記事となったHRWの記事によれば、10月9〜12日にインターネットに公表されたビデオ映像は、イデリブ州(governorate of Idlib)のタマネア(Tamane`a)、タフタナズ(Taftanaz・kmzファイルはこちら)、アル・ター(al-Tah)、マアッラト・アン・ヌウマーン、ホムス州(Homs governorate)の東ボウェイダ(Eastern Bouwayda)、アル・サロモニヤ(al-Salloumiyyeh)、アレッポ州(Aleppo governorate)のテル・ライファット(Tel Rifaat)、ラタキア州(Lattakia governorate)の農村部、ダマスカス近郊の東ガウタ(Eastern Ghouta)の中とその周辺で報告されたクラスター爆弾の残骸を示しました(記事はこちら)。

 タフタナズとタマネアの住民は、HRWとのインタビューで、10月9日にヘリコプターが彼らの町とその近くに、クラスター爆弾を落としたことを認めました。

 クラスター爆弾による被害はまだ分かっていません。

 ここ数日で、少なくとも18本のクラスター爆弾の結果を示すビデオ映像がYoutubeに投稿されました。

 軍事専門出版社のジェーン・インフォーメーション・グループは、シリアが、ロシア製の RBK-250/275とRBK-500を所有することを公表しています。これらをシリアがいつどのように入手したかという情報はありません。

 7月にHRWは、ハマ州のジャバル・シャーシャブ(Jabal Shahshabu)で見つかったとされるRBK-250シリーズの弾筒と子弾AO-1SChを特定しました。8月に公表されたホムス州(Homs governorate)のタルビシア(Talbiseh)とディア・アル・ゾア州(Deir al-Zor governorate)のアル・ブカマル(Abu Kamal)のビデオ映像も、クラスター爆弾の残骸を示しました。8月にアル・ブカマルを攻撃したクラスター爆弾は、対戦車爆弾のPTAB 2.5Mを含んでいるようです。

 タフタナズの住民はHRWに、政府軍が過去6週間にわたって町を攻撃し、10月9日に「ヘリコプターが爆弾を投下し、半分に別れて、小さな子弾を放出しました。私は(最初に)一つの爆発音を聞きました。しかし、子弾が放出された後、(さらに)いくつもの爆発音を聞きました」と言いました。この攻撃は空港から2〜3km離れた、タフタナズの南にあるオリーブ畑に命中しました。犠牲者はいない模様です。住民は現場で約30個の爆発していない子弾を見たと言いました。

 別の住民は、もう一つの町北部への攻撃を説明しました。「10月9日、タフタナズの北にあるシラキヤ(Shelakh field)から来たいくつもの、より小さな爆弾に続いて、私は大きな爆発音を聞きました。私たちは何が起きたかを見ました。私たちは大きい奴(爆弾)が半分に割れ、沢山の奴(子弾)が起爆しなかったのを見ました。私は自分で爆発しなかった子弾を一つ見つけました。小さな穴が地面にありました。穴は300mにわたって分散し、広がっていました」。

 別の住民は、自由シリア軍の兵士がタフタナズに爆破していない子弾20個があると知らせたと言いました。

 タマネアの住民はHRWに、10月9日の正午頃、低く飛ぶヘリコプターが、半分に別れ、より小さな奴(子弾)を放出した(爆弾を)投下し、(爆弾は)非常に近い位置にある中学校と小学校の2つの学校の間に拡散したと言いました。「爆発した奴(子弾)は先端が地面に落ちていました。私たちは爆発しなった奴を集めました。それらの先端は地面に落ちていませんでした」。

 10月10日に投稿されたビデオ映像は、明らかにアル・ターのRBK-250クラスター爆弾とAO-1SCh子弾の残骸を示しました。

 こうした不発の子弾は起動していて、僅かに触ったり、動かすと爆発することがありますが、これらのビデオに見られる民間人たちは、子弾を運び、物に叩きつけ、地面に投げています。タマネアで撮影されたビデオは、数人の男たちが爆発していないAO-1SCh子弾を持ち運ぶという、極めて危険な行為をしていることを示します。タマネアの住民はHRWに、人びとは子弾をお土産として取っていると言いました。別の8月のビデオでは、爆発していない子弾を持つ子供が撮影されました。


 ついに、クラスター爆弾が多用される状況に来ているようです。それも、明らかに、ダマスカスとアレッポをつなぐ幹線道路上で使っています。シリア政府はどうしても、この幹線道路から反政府派を追い払いたいのです。それは戦略上、必要不可欠なことです。しかし、大勢の国民が反政府派に転じている現在、これだけの領域をクラスター爆弾で制圧できるわけではありませんし、再び、反政府派が集結することを防ぐ手もありません。結果を予測すると、この攻撃はシリア政府を勝利へ導かず、その上、非人道的行為としてアサド政権を追及する材料となります。シリアがクラスター爆弾禁止条約に参加していなくても、こうした兵器を多用することは、民間人を直接狙ったものだとされるからです。この状況は、人道的な危機ではあっても、反政府派にとって、戦略的危機ではないのです。

 記事には、シリア軍が反政府派の拠点を狙って攻撃しているとは書いていませんが、オリーブ畑は反政府家が拠点として活用しそうな場所であり、そこにいる反政府派を攻撃したいのか、そこに反政府派が入らないようにしたいのでしょう。タフタナズの南にある空港は、軍用の基地で、主にヘリコプターを置いています。

 子弾を持ち歩いて爆発させる事故は、過去にいくつも起きています。それがまた繰り返されていることには失望を覚えます。現地で誰かが声をあげないといけないのです。



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