反政府派が防空基地を占領か?

2012.10.14


 BBCによれば、シリアの反政府派はアレッポ近郊の政府軍防空基地を占領したと言いました。アル・ターネヒ基地(The al-Taaneh base・kmzファイルはこちら)は、アレッポの東にあります。

 アル・ターネヒ基地はシリア全域の防空網の一部だとされます。インターネット上に公開されたビデオ映像は、反政府派が基地に入り、大きなミサイルの列を調べている様子を示しました。アレッポの革命評議会広報官、アブ・フィラス(Abu Firas)は、ガーディアン紙のウェブサイトに、基地を占領する作戦が開始されると、政府軍は航空機で基地を攻撃しはじめ、内部のロケットとレーダーのほとんどを破壊しました」と言いました。

 military.comによると、反政府派は マアッラト・アル・ヌーマン(Maaret al-Numan)近くの幹線道路の一部を掌握し、ダマスカスとアレッポの補給路を遮断しました。反政府広報官、フィラッツ・アブドル・ハーディ(Firaz Abdel Hadi)は、マアッラト・アル・ヌーマンでは3日間の内に約300人が殺されたと言いました。

 金曜日に、反政府派はアレッポからラッカ州(Raqa province)へつながる幹線道路上にある、さらに東のクェリス軍用空港(Kweris military airport)近くの大きな防空基地を攻撃しました。

「反政府派は真夜中過ぎに空軍大隊を攻撃し、戦いは未明まで続きましたが、反政府派は厳密に基地を支配しませんでした」と人権団体「the Syrian Observatory for Human Rights」は言いました。

 戦闘が続く中、週に一度のイスラム教の祈りの後、シリアの各地でデモ行進がありました。アレッポでは、政府軍がハラブ・アル・ジャディダ地区(the district of Halab al-Jadida)で抗議者に発砲し、数人が負傷しました。トルコ国境のデラバシヤ(Derbassiyeh)では、女性と子供がクルド人とシリア革命旗を振り、行進し、体制の崩壊を叫びました。

 military.comによれば、アルカイダにつながるとみられる謎のグループが金曜日に、シリア軍の防空基地を占領しました。

 金曜日にインターネットに投稿された、アル・ターネヒ基地の中を撮影したという映像は、過激派グループのジャバット・アル・ヌスラ(Jabhat al-Nusra)がアル・ターネヒ基地の夜通しの戦いに参加したことを示しました。ビデオ映像は、大勢の戦闘員が基地の中のレーダー塔、大型ミサイルの列、何人かはトラックの後ろにいるのを示しました。

 アルジャジーラの記者による報告は、ジャバット・アル・ヌスラが基地を占領したと言いました。報告は多くのミサイルと焼け焦げた建物、黒い布で顔を覆った戦闘員たちを示しました。アレッポに拠点を置く活動家と「the Syrian Observatory for Human Rights」は、ジャバット・アル・ヌスラがアル・ターネヒ基地の戦いに参加したと言いました。ジャバット・アル・ヌスラ(支援戦線という意味)については、僅かしか分かっていません。このグループはアルカイダが使用することがある聖戦士の掲示板で、今年初めにシリアで攻撃をすると主張しはじめました。お互いに公式に関係を認めないものの、アナリストは、アル・ヌスラの戦術、聖戦士の言葉づかい、アルカイダの掲示板を使うことが提携関係を示していると言います。

 金曜日に占領された基地は、シリアがイスラエルとの戦闘に備えて、長年にわたって国中に建設した防空基地の一つでした。

 先週、反政府派はダマスカスに近い、別の防空基地と南部のダラー州(province of Daraa)の基地を占領したと言いました。インターネット上のビデオ映像は、彼らが車両に放火し、ダラー基地の弾薬箱を押収しているのを示しました。

 反政府派がこれらを襲撃した後も確保しているかは明らかではありません。金曜日のアルジャジーラの報告では、政府軍のジェット機による空爆を恐れ、反政府派はすでに撤退の準備をしていると言いました。


 記事は一部を紹介しました。

 アル・ターネヒ基地の隣にあるクェリス軍用空港は、別の資料では。ラシン・アル・ブード基地(Rasin El Aboud)、ダイヤ・ハ・フィア基地(Dayr Ha Fir)などとも呼ばれ、軍民共用飛行場ともされています。

 やっと、戦果らしいものが出てきたという感じです。地上戦闘の能力が低い空軍基地から被害が出ているようです。シリアの防空網は軍事パラノイア的な感覚でイスラエルとの戦争に備えたもので、この国の異常な軍事主義の象徴でもあります。それが崩壊しはじめたのなら、国際社会は空爆のカードをちらつかせて反政府派を支援できます。すると、攻撃しがたい地上軍にも動揺が広がります。これがシリア軍崩壊のきっかけになる可能性があります。陸軍は空軍の支援に回らなければならなくなり、さらに悪循環に陥るかも知れません。

 幸いに、ミサイルはシリア軍が自分で破壊したようです。問題は基地の地下倉庫にある備蓄されたミサイルがどうなったのかです。政府軍が破壊したか、反政府派が入口を開けて、爆破したか。この辺も確認したいところです。兵器が破壊されたのなら、ここを占領し続ける必要はありません。隣の飛行場は、資料によっては、訓練基地だと書かれています。確かに、置かれている航空機はそのように見えます。ここもレーダーや燃料タンクを破壊してしまえば、政府軍は利用しにくくなります。

 ようやく戦闘で戦果が出てきました。しかし、軍事面だけ見れば、先は長いのです。アサド大統領が亡命しない限り、この戦闘は来年まで続くでしょう。気になるのはシリア政府の財政です。金の切れ目は縁の切れ間ですから。

 ジャバット・アル・ヌスラも気になりますが、彼らは革命が成功した後は、シリアに留まれないでしょう。リビアがそうだったように、この大きな革命の後は、誰もが平和を望むはずです。



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