イラクのシーア派民兵が武力闘争を放棄へ

2012.1.7


 military.comによれば、イランの支援を受けていたイラクのシーア派民兵が武器を置き、政治的プロセスに加わることに合意したと、イラク政府当局は言いました。

 マリキ首相の顧問、アメール・アル・クザエイ(Amer al-Khuzaie)は、シーア派グループの「アサイブ・アール・アル・ハク(Asaib Ahl al-Haq)」はまだ武器を置いていないものの、これ以上行使しないことに合意したと言いました。彼はグループの決定を歓迎し、このグループが次の国政選挙で新しい名の下に活動する予定だと言いました。「彼らは武力闘争を止め、政治的プロセスに加わりたがっています」「政府はグループの武器を買い取るつもりはありませんが、彼らが望むなら、それらを受け取る準備ができています」。

 アル・ハクの上級メンバーは今週のインタビューで、グループが地方・国政選挙で他のシーア派グループと同盟したいと言いましたが、グループが完全に武装解除したとは言いませんでした。彼はグループの計画を公に話す権限がないために匿名を用いました。

 アル・ハク(高潔な者たちの絆の意)は、急進的シーア派聖職者、ムクタダ・アル・サドル師(Muqtada al-Sadr)から分派して、アメリカのイラク駐留と戦うために結成された武装グループです。過去2年でイラク駐留米軍で最大の死者が出た昨年6月に米軍基地に致死的攻撃を実行した、イランに支援されたシーア派民兵グループの一つです。

 アル・ハクは2008年にサドル師からの独立を発表し、聖職者からのグループ再統合の何度もの要請を拒否しました。マリキ首相のシーア派政府の主要な構成要素であるサドル支持者との関係は緊張したままです。サドル師は最近このグループを批判し、彼らは不誠実だと言いました。彼はイラク人の死は彼らの責任だと批判もしました。アル・ハクがより伝統的な政党へと自身を組織するなら、サドル師の政治的野心に打撃を与え、連立政権での立場を弱めるでしょう。


 記事の後半は最近のイラク国内でのテロに触れていますが、省略しました。

 こうした合意はあとで破られる恐れもあり、恒久的なものではないかも知れません。しばらく、様子を見ないと何とも言えないのですが、テロ活動を行っている者も、それ自体が活動の目的ではなく、その背後には政治的意志があるという点を再認識することはできます。タリバンもいずれは政治組織として認められないと思っているわけです。唯一、アルカイダだけは、テロ活動だけに活動を絞り、合法的な正当に参加しようとは考えていません。中東から北アフリカや西アジアにかけて一大イスラム帝国を建設するという構図は描いているものの、その活動と目標とはかけ離れているように思われます。

 当面は、アル・ハクが本当に合法的な政治活動に転じるのかと、それがサドル派にどんな影響を与えるかに注目したいと思います。



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