ソマリアの人質救出作戦の真相

2012.1.27


 military.comが、ソマリアで行われた米海軍特殊部隊「シールズ(The Navy SEAL)」による人質奪還作戦について、それが極めて正確な対テロ攻撃を行う、より小さな、より機敏な軍隊を作るというオバマ政権の公約の現れだという見解を報じました。この記事について、気になる部分を紹介します。

 匿名を希望する高官2人によれば、作戦はシールズのチーム6によって行われました。メンバーの中に、オサマ・ビン・ラディンを殺害した者が含まれていたかは不明です。徒歩で移動する前に、シールズは米空軍特殊作戦航空機から、見たところ気がつかれずに、戸外の野営地へパラシュートで降下しました。彼らは、昨年秋に人質になったアメリカ人のジェシカ・ブキャナン(Jessica Buchanan)とデンマーク人のポール・ハーゲン(Poul Hagen)を見つけました。1〜2時間半続いた作戦の間、シールズは誘拐犯人から小さな抵抗に遭いました。攻撃者の1人だけが撃ち返し、すばやく鎮圧されました。残りは殺されたと考えられますが、現場での空中偵察が雲が多く、暗い夜に妨げられたので、逃走した可能性は否定できません。陸軍特殊作戦軍のMH-60ブラックホーク・ヘリコプターが野営地の近くのアダド(Adado・kmzファイルはこちら)にシールズと人質を運ぶために急降下しました。

 救助隊が現場に到着した時も、誘拐犯たちは重装備し、爆発物を持っていだと、国防総省広報官、ジョージ・リトル(George Little)は言いましたが、それ以上詳しく言いませんでした。シールズは誘拐犯がカート(qat)を噛んだ後で眠っていたので捕まえたと、ベイル・フセイン(Bile Hussei)という名前の海賊はAP通信に電話で言いました。フセインは現場にいませんでしたが、そこにいた他の海賊と話したと言いました。彼らは9人の海賊が殺され、3人が捕まったと言いました。しかし、米高官2人はソマリア人は捕まえていないと言いました。


 記事から気になる部分だけ抽出しました。人質に関する事柄は省略しました。

 アダドの位置はGoogle Earth上で「Cadaado」という町だと考えられます。Wikipediaに記された緯度経度からすると、この街がそれだと考えられます。海岸まで最短距離で約220kmです。

 国内メディアの報道を見ると、やはり特殊部隊を忍者か何かのような存在のように紹介しています。時事通信は次のように書いています。「特殊部隊は今月25日早朝(現地時間)、ヘリコプターに分乗し、2人が拘束されていた建物を急襲。激しい銃撃戦となり、武装勢力側の9人を殺害した。人質と特殊部隊にはけがはなかった」。

 しかし、撃ち返したのは1人だけで、それもすぐに鎮圧され、他の者たちは抵抗することもなく撃ち殺されたのが、米高官の話です。夜間に激しい銃撃戦を行って、片側にまったく損害が出ないのは確率の低い話です。ビン・ラディン暗殺の時もそうでしたが、特殊部隊の戦いは一般の部隊よりも激しいという誤った常識が働くようです。ソマリアの作戦で、シールズ隊員は暗視ゴーグルをつけ、サイレンサー付きの銃を持ち、ほとんど眠っている者たちを次々と殺し、人質を取り戻したのです。ビン・ラディン暗殺時とまったく同じ方法です。これにはあまり時間がかかりませんし、実は動かない的を撃つという点では、初歩的な射撃能力で十分です。しかし、作戦全体をこなす能力は高い技術が必要とされます。特殊部隊には、そうした技能を持った者たちがいるのです。

 作戦時間が最大で2時間半というのは、恐らくパラシュート降下から迎えのヘリに乗るまでの時間でしょう。大半は徒歩での移動時間で、戦闘時間は短かったと思われます。特殊部隊の作戦時間は短い方がよいのです。

 こうした特殊作戦は、同時多発テロ直後に私が考えられる作戦としてあげたものです。ブッシュ政権が去って、ようやくあるべき道に戻ったと思うと、感無量というよりも、これだけの失敗を繰り返さないと人間は学ばないのかと改めて呆れるだけです。 世の中は、こんなものなのです。


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