ハディーサ事件の冒頭陳述が行われる

2012.1.11


 military.comによれば、2005年に24人のイラク人を殺害した海兵隊の分隊長、フランク・ウートリッチ2等軍曹(Staff Sgt. Frank Wuterich)に対する公判が行われ、軍検察官は彼が致命的な思い込みをして、自制しきれなくなったと追及しました。

 検察官のニコラス・ギャノン少佐(ニコラス・ギャノン少佐)は、4人の将校と4人の下士官の陪審団に対して、ウートリッチが道路爆弾が爆発して海兵隊員の命を奪った後で、標的を特定する時間をとらずに無差別に発砲したと言いました。ウートリッチはその日に殺された24人のイラク人の内19人の死に関係があるとされました。

 ウートリッチの他の海兵隊員は爆弾が爆発した現場の近くで車に乗った5人を射殺しました。ウートリッチは彼の分隊に銃と手榴弾で近くの家を掃討するように命じ、先に発砲し、あとで尋問するように言いました。最初の家で男性、女性、子供を殺した後、海兵隊員は2番目の上に行き、そこで彼はベッドの足下に立ち、女性と子供に銃弾を放ったとギャノン少佐は言いました。

 冒頭陳述で、ウートリッチの弁護人、ヘイザム・ファラジ(Haytham Faraj)は陪審員に、海兵隊が虐殺を隠蔽しなかったことを示す必要に迫られた海軍の調査官は、他の海兵隊員に最高14時間もの容赦ない尋問を行い、彼らの分隊長に不利な証言をするなら起訴を取り下げると申し出たと言いました。「何が起こらなかったかを話そうとする、免責を約束された大勢の怖がる海兵隊員がいます」とファラジ弁護士は言いました。退役海兵隊員のファラジ弁護士は、陪審員に審理する際は海兵隊の知識と戦闘経験を適用するよう要請しました。彼はウートリッチの大隊は指揮官から街が武装勢力の温床となっていることを示す情報を与えられていたと言いました。爆弾が爆発した後、ウートリッチが家を捜索するように命じたあとで小火器の攻撃を受け、武装勢力がそこに潜んでいると考えたとファラジ弁護士は言いました。「我々はこれに犯罪が行われたとは考えません」「それは正しいことをしようとして、悲劇になった不幸な結果です」。

 ウートリッチは9件の故殺罪で起訴されています。彼は民間人が死んだことは残念ならがも、彼は軍の戦闘規則の範囲内で活動していると思っていたと言いました。彼は起訴された海兵隊員8人の最後の1人です。6人への起訴は取り下げられ、1人は無罪になりました。

 ギャノン少佐は、証拠はウートリッチが「分隊の統制を失っていなかったが、一連の致命的な思い込みをして、自制心を失った」と言いました。彼はテレビ番組「60 Minutes」のインタビューから、ウートリッチが彼の命令に反した者はいないと考えていると言ったことを引用しました。

 完全な調査はタイム誌の記者が、事件の2ヶ月後の2006年1月に死者について質問するまで始まりませんでした。初期の調査を指揮したグレゴリー・ワット退役陸軍大佐(Retired Army Col. Gregory Watt)は、ウートリッチが彼に家に入って発砲するように指示したと言い、「私は彼らに先に撃ち、あとで尋問しろと言いました」と思い起こしたと証言しました。「私ははっきりとそれを憶えています」「その時のウートリッチ軍曹は非常に単刀直入で、非常にプロフェッショナルで、まったく包み隠そうとしませんでした」。「彼は、我々が起こった出来事を話す間に何度もそれを言いました」。

 ワット大佐の調査を補佐したデビッド・メンデルソン中佐(Army Lt. Col. David Mendelson)は陪審員に、ウートリッチがそうした方法で分隊に命令を出し、致命的な火力を決定する際の基本的戦闘ルールである、積極的に標的を特定しなかったと認めたことに驚いたと言いました。「それらは明らかに突出しており、私を悩ませました」。

 法律の専門家は軍検察官は、あまりにも長い年月の後でウートリッチの行動が犯罪だと証明するために苦戦に直面すると言います。「60 Minutes」の放送されなかった映像を巡る論争は、検察官が映像を見る権利を得る前に裁判を何年も遅らせました。一部の者は、ウートリッチが命令された活動に似たイラクでの家屋捜索を行ったことが多い戦闘部隊の海兵隊員の陪審員は、戦争の混乱の中での適切な対応は何かを審理することを不快に感じるかも知れない民間人よりも能力があると考えています。


 この事件の初期の報道を見ると、海兵隊員の行動は明らかに異常だったと私は考えます。車に乗った5人は通りがかったタクシーに乗った乗務員と乗客の学生でした。このタクシーを停車させ、銃弾で蜂の巣にしたのです。家に侵入して、女性や子供まで殺しています。

  「海兵隊が虐殺を隠蔽しなかったことを示す必要に迫られた海軍の調査官」とは、事件が起きた後で現場に到着した別の部隊が、殺害の事実を隠そうとして、死体を家の外に運び出し、武装勢力が殺したようにみせかけたことを示しています。海軍はこれらを隠蔽する必要に迫られ、生け贄としてウートリッチを罪人にしたとファラジ弁護士は主張しています。確かに14時間にも及ぶ尋問はアメリカでは異常です。民間の警察なら尋問は最大4時間までで、裁判所に送致されます。

 私自身はウートリッチが無罪なら、軍の司法は絶望的だと思っています。アフガニスタンでも地元の民間軍事会社が、車列を警護するために、敵が見えなくても周辺に銃弾を浴びせる手法を使い、米軍が止めるように指導したことがあります。道路爆弾による攻撃を受け、その後に小火器による攻撃を受けたとしても、それが部隊の生存に関わるようなものでなければ、周辺を警戒しつつ、死体や負傷者を回収し、現場から一端離れるという選択肢もあります。というのは、少人数の敵が現場を離れる際に、追撃を避けようとして発砲しただけかも知れないからです。そのために発煙弾が装備されているのです。それでは敵に負けたような気がすると思うようでは、軍人は務まらないと言えます。そして、攻撃を下令した時点で、敵が見えていなかったという点はやはり交戦規定に反すると、私は考えます。

 気になるのは、小火器による攻撃がどの程度だったかです。周辺の家を掃討すべきと考えられるレベルだったのかどうかが、今後の裁判で明らかになることを期待します。



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