なぜバニ・ワリド進撃は始まらない?

2011.9.6


 バニ・ワリド(Bani Walid)の和平交渉は失敗に終わりましたが、現在のところ、反政府派は攻撃を始めていません。いつ戦闘が始まるとも知れませんが、反政府派はカダフィ軍が降伏するのを待っているのかも知れません。military.comとBBCの記事から現状を考えます。

 military.comによれば、数千人の反政府軍がバニ・ワリドを包囲しています。少数の反政府軍の車列が月曜日にバニ・ワリドから70kmの検問所に到着しました。イスマイル・アル・ギタニ(Ismail al-Gitani)は、戦闘員は彼が指揮するより大きな部隊の一部で、彼はバニ・ワリド北部の入り口を増強するよう命じられたと言います。彼は何人の戦闘員を連れてきたかを言うのを拒否しました。もう1人の反政府軍指揮官、モハメッッド・アル・ファジ(Mohammed al-Fassi)は、街の降伏について、交渉の扉はまだ開かれていると言います。

 以上は元の記事に追加された最新版です。元の記事の要点をこの下に掲載します。

 反政府派の交渉人、アブドラ・カンシル(Abdullah Kanshil)は、交渉は広報官のムーサ・イブラヒム(Moussa Ibrahim)が、反政府軍が街に入る前に武器を置くことを主張した後で決裂したと言いました。

 反政府派は、カダフィ派の中核は街の中では小さな少数派ですが、重装備で、住民が降伏しないように恐怖をかき立てていると言いました。「私たちはバニ・ワリドの人たちを気の毒だと思っています」とこの街の出身者であるカンシルは街から北に70kmの検問所で言いました。「私たちは我々の街に最善のことを望みます」。

 反政府派は土曜日にカダフィの生地、シルト(Sirte)と他の支持派の地域の降伏期限を延長しましたが、政権の最も有名な高官が内部にいると考えられるため、一部はバニ・ワリドをすぐに攻撃するかも知れないと警告しました。カダフィ大佐自身と、息子のサイフ・アル・イスラム(Seif al-Islam)がある時点で市内にいたという推測があり、イブラヒムの存在は街がカダフィ側近の避難所であることを示しています。

 「この戦いはすでに決定済みです」「時間の問題に過ぎません」と、ベンガジの反政府軍広報官アーメド・バニ(Ahmed Bani)は言いました。彼は過去4日間で街の周辺で衝突があり、反政府軍はロケット砲と機関銃の攻撃を受けたと言いました。

 カダフィの支持者たちは「(反政府軍の)戦闘員たちがやって来て、彼らの女性たちを強姦するだろうと主張している」と、バニ・ワリドの反政府派評議会の代表、ムバラク・アル・サレハ(Mubarak al-Saleh)は言いました。「私たちは人々を、戦闘員は、手勝ちで汚れている者を除いて、誰も傷つけない本物のイスラム教徒だと保証しようとしています」。

 ミスラタ(Misrata)から到着した反政府軍は土曜日遅くに、バニ・ワリド郊外に2つの軍野営地を設けた時、抵抗に遭わなかったと報告しました。

 「交渉は終わり、我々は命令を待っています」とアル・ファジは言いました。「我々は血を流さずにこれをやりたいと望みますが、彼らは自分たちを守るために我々の予定を利用しました」。アル・ファジは、より多くのカダフィ支持者が南方からバニ・ワリドに移動しましたが、人数は分からないと言いました。

 NATO軍は一晩中、シルトに近い軍の兵舎、警察の訓練所、その他いくつかの目標と、シルトとセブハ(Sabha)の間にあり、準備基地と疑われているフーン(Hun・kmzファイルはこちら)を爆撃しました。バニ・ワリド近くの弾薬貯蔵施設を爆撃したとも報告されました。

 リビアの民間人を守るというNATO軍の国連の負託は9月27日で期限が切れます。それを再開させるのが政治的に難しい場合があるので、反政府派はそれが切れる前に戦闘を終わらせることで不安に思っているかも知れません。

 カイロに亡命している反政府派、ファイズ・ジブリール(Fayez Jibril)は、カダフィはワルハラ族(Warfala)と、大佐自身のガッダーファ族(Gadhdadhfa)のような一部のグループに特権を与え、その他を外すことで、部族の違いを利用しようとしたと言いました。しかし、リビア人は過去に植民地統治に対して団結したと言い、カダフィに対してもそうすると考えています。リビアの反政府派の地上軍指揮官と密接に接触するジブリ氏は、多くのカダフィ政権当局者がシルトとセブハで避難所を探してきました。当局者たちは反乱の取締において、強姦を含む虐待を行ったことで告発されています。「これらの人たちが関与した犯罪は、リビアのような保守的な国では許されません」「そうした人たちは死んでいることを彼らは承知していて、他に選択肢がないので彼らは戦っているのです」。

 シルト郊外で、街の部族長と交渉の一翼だった反政府軍指揮官、ムスタファ・アル・ルバイエ(Mustafa al-Rubaie)は、反政府軍はシルトの郊外96kmに配置されていますが、過去数日間に時々、カダフィ支持者と衝突したと言いました。反政府軍は部族長に、犯罪に関与し、女性を強姦した将校と兵士を引き渡すように求めています。

 BBCによれば、暫定政府は情報局長の息子、アブドアラ・セヌーシ(Abdullah Senussi)も殺されたと言いました。

 バニ・ワリドは、未だにカダフィ軍に支配される4つの街、ユフラ(Jufra)、セブハ、シルトの一つです。

 反政府軍は三方向からバニ・ワリドに向かっています。

 カダフィ大佐の息子の1人、サーディ・カダフィ(Saadi Gaddafi)はサイフ・アル・イスラムが交渉が行き詰まった原因だと主張しました。サーディは、サイフ・アル・イスラムが数日前に行った攻撃的な演説が対話のチャンスを損なったとCNNに言いました。サーディは、彼がバニ・ワリドの少し外側にいると言いました。

 暫定政府広報官は、バニ・ワリドの内部で街の一部を獲得するために反政府派が立ち上がり、彼は残りが数時間で同調することを望んでいると言いました。


 まず、新しい地名などの確認をします。ユフラが正確にどこかは不明です。フーンの北東10kmにある軍用空港はユフラ空軍基地ですが、付近に街はないようです。他に荒野に同じ名前がついているところを見つけましたが、ここにカダフィが逃げるとは考えにくいところです。それから、NATO軍が爆撃したバニ・ワリド近くの弾薬貯蔵施設は、私が4日に紹介した街の西端にある空港の南東にある地下壕だと思われます。

 サイフ・アル・イスラムがバニ・ワレドにいるという観測はあたっていないと思われます。目撃証言があるように、彼はすでにこの地を離れて、遠くに逃げています。カダフィ大佐のことですから、支持者たちが反政府軍に勝てないことを理解しているでしょう。そんなところに身を寄せるほど彼は愚かではないと思います。

 バニ・ワレドは反政府派に包囲されていますが、街全体を軍が取り囲んでいるのではなく、幹線道路を支配することによって、街を実質的に包囲しているのです。これは砂漠の国特有の状況です。三方向というのは、トリポリ方面、ミスラタ方面、南方方面のことで、これらの幹線道路を反政府派が占拠しているのです。

 今朝のBBCのテレビニュースでは、バニ・ワリドに入っている反政府派がおり、街の外側にいる兵士は市内から、入ってよいという合図があるのを待っていると言っていました。交渉は打ち切られたとは言え、現場では続けられているのだと思われます。上手く行けば、戦いなしにバニ・ワリドを解放することができるかも知れません。



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