米がアフリカに無人機基地を展開

2011.9.23


 ワシントン・ポスト紙によれば、アメリカはソマリアとイエメンでアルカイダを追跡するためにエチオピアなどに無人偵察機の基地を置いています。

 ワシントン・ポストによれば、オバマ政権はソマリアとイエメンのアルカイダ協力者を攻撃する攻勢作戦の一環として、アフリカの角とアラビア半島に対テロリズム作戦のために秘密の無人機基地の一群を集めていると、米当局者は言いました。

 施設の一つは、国の大半を支配するソマリアの武装グループ、アル・シャバブとの戦いにおけるアメリカの同盟、エチオピアに設置されました。もう1つの基地は、インド洋上の諸島、セイシェル共和国です。今月、そこから無人機が効果的にソマリアをパトロールできることを示す実験的な任務の後で、無人偵察攻撃機が活動を再開しました。

 米軍は紅海とアデン湾の接点にあるアフリカの小国、ジブチの基地からもソマリアとイエメン上空に無人機を飛ばしています。さらに、イエメン上空に武装した無人機を展開できるように、CIAはアラビア半島に秘密の滑走路を造っています。

 宣戦布告なき無人機戦争の急速な拡大は、パキスタンのアルカイダ指導層がアメリカの対テロ作戦で弱体化させられた時、米当局者がイエメンとソマリアのアルカイダの協力者の活動を注視しているという増加する懸念の反映です。

 米政府は無人機を命を奪う攻撃を少なくとも6ヶ国(アフガニスタン、イラク、リビア、パキスタン、ソマリア、イエメン)で行っていることが知られています。セイシェル共和国の基地の設置に先行した交渉は、無人兵器の射程を広げようとするアメリカの努力を例示します。

 人口85,000の島国は、2009年9月から米海軍と空軍が運用するMQ-9「リーパー(Reaper」)の小飛行隊を受け入れており、セイシェル当局者は過去に無人機の駐留を認めていますが、それらの主要な任務はこの地域の洋上にいる海賊を追跡することだと言ってきました。しかし、アメリカの機密外交公電は無人機は、800マイル北西のソマリア上空で対テロリズム作戦も実行したことを示します。

 機密に反対するグループ「ウィキリークス(WikiLeaks)」が入手した公電は、米当局者はセイシェルの指導者に対テロ任務を秘密にするよう求めていたことを明らかにしました。ヘルファイヤミサイルと衛星誘導爆弾を装備できるので、リーパーは軍隊では「追跡・殺害(hunter-killer)」無人機と言われます。

 島民の間の懸念を和らげるため、2年前に任務が発表された時、米当局者はリーパーを武装させる計画はないと言いました。公電はしかしながら、米当局者は無人機の武装化を考えていたことを示します。

 会議を要約した公電によれば、2009年9月18日のセイシェル大統領、ジェームズ・ミシェル(President James Michel)との会議で、米外交官は米政府が、「かねてから望まれていた」リーパーを武装させるための「承認を求めるには、個々に(discrete・原文のまま)、固有の議論を求めるでしょう」と言いました」。ミシェル大統領は是認したものの、米当局者に承認のために政府の誰とでもなく、彼に単独で接触するよう要請したと、公電は言いました。

 別の公電によると、ミシェル大統領の主席副官は米外交官に、セイシェル大統領は無人機の武装化に「哲学的には反対ではない」と言いました。しかし、主席副官はアメリカ人に「大統領以外の政府の者に問題を提案することに非常に慎重にしてください。そうした要請は政治的に極めて微妙で、最大の慎重な取り扱いをしなければなりません」と要請しました。

 米軍広報官は、セイシェルのリーパーが武装しているかを言うのを辞退しました。

 「作戦上の安全への懸念のため、詳細に立ち入ることはできません」と、セイシェルの基地を監督するアフリカ軍広報官、ジェームズ・D・ストックマン少佐(Lt. Cmdr. James D. Stockman)は言いました。しかし、彼はMQ-9「リーパー」が偵察と攻撃の両方に設定できることを指摘しました。

 ミシェル大統領広報官は、大統領はコメントできないと言いました。

 2009年にミシェル大統領の主席副官で、現在外務大臣を務めるジャン・ポール・アダム(Jean-Paul Adam)は、米当局は無人機にミサイルや爆弾を装備する許可を求めなかったと言いました。

 「対海相手の偵察とその他の活動を目的とするセイシェルでの無人機の作戦は常に非武装で、米政府は決してそれらを武装化することを求めませんでした」とアダムは電子メールで言いました。「これは最初の派遣の際に両政府で合意されましたが、状況は変化しませんでした」。

 国務省の外電は、それらが大衆には武装していると見える装備を持っている点を指摘し、米当局は無人機が武装しているかも知れないという認識に敏感なことを示します。

 潜在的な懸念を払拭するため、彼らは2009年11月に、首都のビクトリアの小さな滑走路一つの空港で約30人のジャーナリストとセイシェル当局者のために「メディアデイ」を設けました。リーパー1機がエプロンに駐機しました。

 「セイシェル政府は海賊と戦うために我々をここへ招きました」と米外交官、クレイグ・ホワイト(Craig White)はイベントの最中に言いました。「しかし、こうした航空機は多大な能力を持ち、その他の任務にも仕えます」。

 事実、会議を要約した公電によると、米当局者はすでに、ミシェル大統領とアダム外務大臣に見せた機密任務の説明において、無人機のその他の目的を概説しています。米政府は「完全な透明性をすると望む」と言い、米外交官はセイシェルの指導者にリーパーは、「直接攻撃」ではなく、「進行中の対テロ活動を支援するため」にソマリアの上空も飛ぶと知らせました。

 米当局者は「この対テロ任務の微妙な性質と最高のチャンネルの外に公表されないことを強調しました」と公電は言いました。「大統領は心からこの要請に同意し、こういう問題は彼にとってとても政治的に微妙だと指摘しました」。

 セイシェルの無人機作戦は比較的小さな足跡を持ちます。公電によれば、主要な旅客ターミナルから4分の1マイルに位置する格納庫を拠点にして、3〜4機のリーパーと約100人の米軍要員と請負業者がいます。

 軍は、作戦を中断した4月まで継続的に飛行を運営しました。彼らは今月、これを再開したと、アフリカ軍広報官ストックマン少佐は言いました。

 アフリカの角とアラビア半島の一群を集める狙いは、アルカイダの分派がここ数年間浮上している地域に偵察の重なり合う円を造ることにあると、米当局者は言いました。

 その位置は「潜在的な目標のセットを基本にしています」と米軍高官は言いました。「地理的に見れば――気がつきます。飛び立つところから(無人機が)飛べる距離を定規で描いてください」。

 ある米当局者は、エチオピアに4年間無人機基地を置く議論があると言いますが、この計画は「エチオピアの諸事情」のために遅れていると言いました。別の当局者は、エチオピアはアル・シャバブがもたらす脅威により、重要な対テロリズムの協力者となって来たと言いました。

 「情報収集と言語上の能力の点で、我々はエチオピアとの協力と調整に大きな関心を持っています」とこの地域の特殊作戦任務に詳しい元米軍高官は言いました。

 ワシントンのエチオピア大使広報官は火曜日夜にコメントが得られませんでした。

 元当局者は、アメリカはアメリカがアル・シャバブのメンバーの通話と電子メールを監視して集めた通信を翻訳するためにエチオピアの言語学者をあてにしていると言いました。CIAとその他の部局は国境を越えて情報を集めるエチオピアの情報提供者も雇っています。

 全体的に、当局者は基地を集めるのは、より広範に理知的に覆うこと、この地域の国々とのより大きな活動と個々の滑走路が閉鎖される場合の予備施設を得るための活動を反映していると言いました。
 「いま現在展開するホットスポットがあると言うことが意識的に認識されています」と元米軍高官は言いました。


 この記事が国内で報道される時に、どれだけ省略されるかを例示するために、時事通信の記事を転載します。

 【ワシントン時事】米紙ワシントン・ポスト(電子版)は20日、オバマ政権がソマリアやイエメンのアルカイダ系武装勢力を掃討するため、エチオピアなどに秘密の無人機基地を建設していると報じた。
 西インド洋のセーシェル共和国には、高い監視能力と攻撃能力を持つMQ―9リーパー無人機3、4機が配備されている。2009年9月から米海軍と空軍が海賊対策の名目で作戦の運用に当たっているが、機密外交公電によると、ソマリアの対テロ戦にも利用されているという。 

 間違いではないものの、あまりにも短く、詳細な背景がないために、読者が評価を間違える恐れがあるとは思いませんか?。

 さらに、ジブチの基地が抜けていて、米軍高官が言うように、運用したい地域を取り囲むように3ヶ所に滑走路を設けるという米軍の手法がここでも実行されていて、エチオピアの計画は遅れているらしいことが完全に無視されています。

 しかも、翻訳や情報収集のためにエチオピアで翻訳家とエージェントを集めていることも無視されています。これらは軍事問題を評価する上で重要な事柄です。

 だから、日本の海外報道は不十分だと言うのです。これでは新聞に金を払う意味がありません。

 military.comは先月(8月19日)、ソマリアの首都モガディシュで、誰が操作したかは不明の無人偵察機が墜落し、街中心部の家に突っ込んだと報じています。この無人機を誰が運用していたかは不明とされていますが、この頃に米軍がソマリア上空を飛行する実験をやっていたはずなのです。死傷者はなかったようですが、こうした事故が起きた場合に誰が補償をするのかは、当然決まっていないでしょう。特に、ミシェル大統領との取り決めは秘密めかしていて不気味です。

 こうした動きが報道されたことは、アメリカがアフリカ軍による対テロ活動を周知させておく必要があると感じ始めているためでしょう。急速に米軍は方向を転換しているように思われます。

 米当局者が言うように、基地が置かれた場所からソマリアまで円弧を描いてみてください。Google Earthを使えば、これは簡単に確認できます。リーパーの航続距離は5,926 kmです。往復のために半分にして2,963km。これを地図にあてはめてみてください。



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