混沌の中、カダフィの終焉が進行中

2011.8.24


 テレビのCNNやBBCは、リビアのカダフィ政権崩壊で特集を組んでいます。かなりの部分はそうしたテレビニュースで報じられてしまいましたが、記事から目新しいことや気になることを拾い出してみます。

 BBCによれば、バブ・アル・アジジヤ(Bab al-Aziziya)は5時間の激戦の後に、反政府軍がメインゲートの一つを破り、すばやく施設を制圧しました。大勢のカダフィ支持者がそれを守る任務を与えられたという報道にもかかわらず、火曜夜までに施設で大きな抵抗はありませんでした。「我々は戦いに勝ちました」と、トリポリの反政府軍最高指揮官、アブドル・ハキム・ベルハジ(Abdul Hakim Belhaj)は言いました。「彼らはネズミのように逃げました」「我々は専制君主のオフィスに、彼の部屋に入りました。我々は至るところを探しましたが、誰もいませんでした」。

 しかし、アブ・サリム地区(Abu Salim)とアル・ハドバ地区(al-Hadba)、外国人記者が滞在するリクソスホテル(the Hotel Rixos)の近くを含め、首都にはまだ抵抗する孤立地帯があります。

 火曜日にバブ・アル・アジジヤ(Bab al-Aziziya)にカダフィ一家がいたかどうかは不明ですが、施設は地下トンネルで市全域の様々な場所につながっていると報じられます。カダフィ一家はトリポリとその外側にある多数の隠れ家にアクセスすると考えられています。大佐の故郷、シルト(Sirte)の状況は不明です。記者は撤退する政府軍がそこへ向かっていると言いました。

 military.comの記事を見てみます。

 世界チェス連盟の理事長、キルサン・イリュムジノフ(Kirsan Ilyumzhinov)は火曜日に、電話でリビア指導者と話し、彼が「生きており、まだトリポリにいる」と言ったと言いました。報告は独自に確認できませんでした。

 今月早くに離反した元カダフィ大佐の側近、アブデル・サラム・ジャロード(Abdel-Salam Jalloud)は、リビア指導者は個人の家、小さなホテル、モスクを隠れ家にして、トリポリ郊外周辺を移動していると考えると言いました。

 迫撃砲、重機関銃、対空機銃を使うバブ・アル・アジジヤの戦いは、カダフィ大佐の息子、サイフ・アル・イスラム(Seif al-Islam)が、彼を拘束したという反政府派の主張を挫いて、支持者を集め、自由の身で劇的な登場を果たした数時間後に起こりました。彼が不意に現れたことは、カダフィが権力を失ったと思われた時に、彼の反撃の可能性を明白に示しました。リクソスホテルに現れたカダフィの息子が、反政府派の拘束から逃げたのか、一度も捕まっていないのかは明らかではありませんでした。

 彼の逮捕は月曜日に、反政府派とオランダに拠点を置く国際刑事裁判所により発表されました。国際刑事裁判所広報官、ファディ・アル・アブダラ(Fadi El Abdallah)は、裁判所は逮捕について反政府派から公式の認証を受け取っていないと言いました。サイフ・アル・イスラムが拘束された場所について詳細を提供せずに拘束されたと発表した反政府派指導者は驚いたようでした。反政府派広報官、サディク・アル・カビール(Sadeq al-Kabir)は説明をせず、「これはすべて嘘です」と言うだけでした。

 彼は、別に拘束されたカダフィの息子、モハメッド(Mohammed)が自宅軟禁を逃れたと言いました。国家暫定評議会のムスタファ・アブデル・ジャリル(Mustafa Abdel-Jalil)は、月曜日にカダフィの三男の拘留を発表しました。

 トリポリにいる反政府派広報官、モハメッド・アブデル・ラーマン(Mohammed Abdel-Rahman)は「危険はまだここにあります」と言いました。彼はカダフィの旅団がトリポリ郊外にいて、「30分間で市内に来られます」と警告しました。

 火曜日の朝に1時間の戦闘がリクソスホテルの近くで起こりました。ホテルの外には重武装の大勢の兵士がおり、ホテルとその周囲は政府の厳しい統制下にあります。短い戦闘が午後にあり、爆発と重機関銃の音が朝の戦闘よりも近く、いくつかの流れ弾がホテルに当たりました。反政府派の攻撃がホテルを占領することが目的かは直ちに分かりませんでした。

 シルト(Sirte)の国家暫定評議会の代表は火曜日に、カダフィの旅団がブレガの石油ターミナルを逃れた後で街に退却したので、市内の状況は極めて不安定だと言いました。「シルトには電力がありません。私たちは衛星電話を通じてのみ市内の人たちと接触しています」とハッサン・アル・ダロウイ(Hassan al-Daroui)は言いました。彼はシルトの多くの人たちが、反政府派がトリポリに前進したことすら聞いておらず、住民は市内は検問所だらけで、恐くて家を離れられないと言いました。「私たちは、カダフィが終焉の前にできるだけ多くの人を殺そうとすることを恐れています」「彼は自分が終わったことを知っています。いま、彼はシルトと共に破滅させたがっています」。

 トリポリから東へ遠く離れ、反政府派は政府軍から領土を獲得したと報告しました。ベンガジのモハメッド・アル・ライジェリ(Mohammed al-Rijail)は、反政府軍兵士はラス・ラナフ(Ras Lanouf)から約25マイル(40km)にあるアル・アケイラ(al-Aqaila)へ前進したと言いました。「カダフィ軍がラス・ラナフへ退却したので、抵抗はなく、戦闘はありませんでした」。

 国際移住機構(the International Organisation for Migration)は、300人の外国人労働者をリビアの首都から引き揚げる任務が戦闘のために遅れていると言いました。機構がチャーターした船は、治安が向上してスタッフと移民の安全が保証されるまで、トリポリ沖合に残留すると言いました。


 サイフ・アル・イスラムの拘束に関して、情報と実状が食い違う点は理解ができません。反政府派はサイフ・アル・イスラムを捕らえたという部隊からの報告を根拠に発表したのでしょうが、本人が捕まっていないのなら、間違いが報告されたことになります。また、すでに彼の姿が確認されてから時間が経っているのに、訂正の発表もない点が気になるところです。影武者を使った恐れもありますので、ホテルに現れた男と本人の写真の耳の形を比較してみたいと思っています。ただ、バブ・アル・アジジヤの戦闘の直前に現れたのなら、カダフィ一家が逃げるための時間を稼ぐために、周辺に展開する軍と支持者に檄を飛ばしに出てきた可能性はあります。もちろん、その後はバブ・アル・アジジヤに戻り、地下トンネルで逃げたと推測できます。

 アブ・サリム地区とアル・ハドバ地区も、バブ・アル・アジジヤの周辺にあるようです。正確な範囲は分かりませんが、バブ・アル・アジジヤの南側やリクソスホテルに隣接する林の南側が該当するようです。これらの小さな範囲にしかカダフィ支持派がいないのなら、鎮圧は時間の問題です。

 気になるのは、カダフィ政権がシルト(kmzファイルはこちら)で最後の戦闘を行おうとしているということです。これは無益な惨劇を生みかねないので、できるだけ詳しく知りたいところです。

 結論から言って、シルトに逃げ込んでも、カダフィ政権に存続はあり得ません。しかし、シルトには巨大な軍事基地があり、カダフィ軍がそこの武器を使って、最後の抵抗を行う危険があります。しかし、シルトには防御に適した地形はなく、ここで最後の戦闘を行えば、住民や街の資産に大きな損害が出る危険があります。カダフィ大佐が捨て鉢の気分で、自分が滅ぶくらいならリビアをシルトを道連れにと思うなら、住民を巻き添えにした戦闘があり得ます。

 ちょっと見ただけでも、シルトには様々な軍事施設があります。リンクをクリックするとkmzファイルがダウンロードできます。

駐屯地1 駐屯地2 武器庫1 武器庫2

ミサイル基地 民生共用空軍基地

 先日、スカッドミサイルが発射されたのは、恐らく、このミサイル基地です。空軍基地には戦闘機を格納する堅固なシェルターがあり、かなりの設備が集中しています。探せば他にも施設が見つかるはずです。

 また、カダフィ大佐が使うというテントらしいものも見つかりました(kmzファイルはこちら)。まさか、ここにはいないでしょうが。

 なお、アル・アケイラの位置はまだ分かっていません。ラス・ラナフとブレガの中間にあるのだと思われます。



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