レンジャー部隊が自己治療を重視

2011.8.18


 military.comが米陸軍レンジャー部隊の自己治療で生存率を高める方法について報じました。

 陸軍レンジャーのルロイ・ペトリ1等軍曹(Sgt. 1st Class Leroy Petry)が戦闘中に戦友を救うために手榴弾で手を吹き飛ばされた時、彼は何をするかが分かっていました。彼は失血死を避けるため、三角巾を腕に巻きつけるのに無事だった手を使いました。

 先日、名誉勲章を与えられたペトリ1等軍曹は、戦場での自己治療を訓練された連隊にいました。こうした戦場における応急処置は、過去7年間にわたり、連隊の生存率を92%にすることにつながったと、研究は明らかにしました。32人の死者の内、生存できる可能性があったのは大量出血をした1人だけでした。そのレンジャー隊員は手術後の合併症で死亡しました。

 研究は、2001年10月から2010年4月までの間に、第75連隊で生存可能な負傷者の死亡率が3%だったことを明らかにしました。イラクとアフガニスタンでの戦死者の過去の報告の24%と同等です。それはレンジャー型の訓練をしていない兵を含みます。

 ペトリ1等軍曹は「この作業の最高例です」と研究の主著者で、特殊作戦軍のラス・コトワル医師(Dr. Russ Kotwal)は言いました。

 歴史的には戦闘に関連する死亡の90%は、野戦で兵士が医療施設に到着する前に起こりました。過去の戦争の犠牲者を評価した後、特定の怪我に集中し、レンジャー部隊は十年以上前から新しい手法を採用しました。

 考え方は単純です。戦傷者を治療する十分な医師や衛生兵はいないので、レンジャー部隊は応急措置を装備し、それらの使い方を訓練しなければなりません。

 「自分で治療ができなければ、それをする誰かを捕まえます」とコトワル医師は言いました。 

 月曜日に外科アーカイブズに公開された研究は、レンジャー部隊の手法を詳解し、それは若干の他の部署でも採用されています。

 レンジャー部隊は陸軍の特殊作戦軍の一部で、彼らは戦傷の治療法について、2日間の訓練を経験します。

 その焦点は「生存の可能性」がある3種類の主要な傷、腕や脚からの大量出血、胸部外傷による肺虚脱、喉に引っかかった血液や組織により気道閉塞を応急治療することです。

 兵士は、三角巾、特殊な創傷包帯、主要な胸の怪我の治療に使うニードルを装備しています。彼らの医療訓練は「射撃と同じく重要」と考えられると、主著者のジョン・ホルコム医師(Dr. John Holcomb)は言いました。

 「この訓練と考え方を全連隊に本当に叩き込むのに2年かかります」とホルコム医師は言いました。

 衛生兵のハロルド・モンゴメリー曹長(Master Sgt. Harold Montgomery)は、この手法にやに「絶対的信奉者」です。

 彼は衛生兵でない者が不安なく治療を行うのを見てきたと言いました。「彼らが不満を感じるのを見る」のは、胸部の重傷を治療する時です。それは、空気が胸腔を満たし、肺虚脱を起こし得ます。治療は空気を抜くために「大きなニードルを誰かの胸に刺すこと」です。「それで即座に命が救われます」が、衛生兵でない者は、それが必要な時により医療の経験のある戦友に確証を得たがると、モンゴメリ曹長は言いました。

 IEDと銃創を含む、研究が調べた負傷と死の原因は、死亡の半分にのぼりました。戦場の治療の大半は出血の制御に集中し、衛生兵でない者は三角巾を42%適用しました。

 研究された手法は、兵士に戦闘中に「深呼吸」し、負傷者の生存を高めるために、この研究が示した概念と操作の基本セットに頼るよう教えていますと、空軍の外科医で、陸軍外科研究所の副指揮官、トッド・ラスムッセン医師(Dr. Todd Rasmussen)は言いました。

 この手法は、軍隊の一部と非軍事の警察で、「戦場での爆発やショッピングモールの銃撃犯を問わず、この種の事件の混沌を克服するため」に採用されているとラスムッセン医師は言いました。彼は研究に関与していません。


 ペトリ1等軍曹が負傷した経緯は以前に紹介しました(過去の記事はこちら)。

 米陸軍で応急治療に力を入れていることは以前から言われていました。

 前線にいるのは衛生下士官で、彼らを補佐する者として、戦闘救命士がいます。戦闘救命士の主任務は戦闘で、国際人道法(ジュネーブ条約)が定義する衛生兵ではありません。しかし、周囲で負傷者が出れば、戦闘を中止して救命活動を行います。以前は部隊に少数配置していた戦闘救命士ですが、イラクとアフガンに派遣する兵士は全員がこの訓練を受けるようになりました(過去の記事はこちら)。

 レンジャー部隊では、基本的に自分で応急措置を行うようにしており、それが効果をあげているということです。

 陸軍が宣伝用に提供しているシューティングゲーム「the America's Army」も、負傷した味方を治療すると評価されるシステムです。治療された味方は戦闘に復帰したり、行動不能でもゲーム終了時に生存し、戦死を免れることがあります。陸軍は味方を助けることの重要性を強調しているのです。

 ところで、以前にペトリ1等軍曹に最初に救援に駆けつけた兵士が、敵を制圧するのではなく、応急措置を始めたことに、私は疑問を指摘しました。レンジャー部隊が自己治療の訓練をしているのなら、治療は本人に任せ、応援は敵制圧に集中すべきだったと改めて感じます。また、あとから来る応援に任せるべきです。

 つまり、戦闘を有利にするためにも、自己治療は効果があるのです。



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