リビア軍がスカッドミサイルを使用

2011.8.17


 BBCによれば、リビアのカダフィ大佐が6ヶ月になる内戦で初めてスカッドミサイルを使いました。

 ミサイルは沿岸のシルト(Sirte)から発射され、反政府派が保持するブレガ(Brega)を狙ったものの、砂漠に落下したとされます。

 カダフィ軍は200発以上のスカッドミサイルを保有するとされます。

 ザウィヤ(Zawiya)の外にいる医師は、カダフィ軍の狙撃兵と迫撃砲の射撃で民間人3人が死んだと言いました。

 カダフィ軍は依然として、西部で唯一、彼らの燃料のほとんどを得るザウィヤの製油所を支配していると考えられます。

 反政府派がガリヤン(Gharyan)を奪取したという主張は、住民によって確認されていません。

 トリポリにいるBBCのマシュー・プライス(Matthew Price)は、反政府派がどれだけの領域を保持し、どれだけ持ちこたえられるかは不明だと言います。

 反政府派とアメリカは、カダフィ大佐が増えつつある圧力の元にあると言います。反政府広報官、アーメド・バニ(Ahmed Bani)はリビア指導者の自暴自棄の表れであると言います。「この男は、たとえ数時間でも、彼の政権を存続させ、統治を復活させるためには、どんな兵器でも使うでしょう」。「カダフィの余命はいくばくもないことが明らかになりつつあります」とホワイトハウス広報官、ジェイ・カーニー(Jay Carney)は言いました。

 リビア専門家でシンクタンク「Demos」の特別研究員、ベンジャミン・バーバー(Benjamin Barber)はそうした主張を「希望的観測」と言いました。「私は彼が和解をしない限り、希望を持つ特別な理由があるとは思いませんが、反政府派評議会、NATO軍、アメリカはいま若いに強い関心を持っているようには見えません」「その未来をカダフィ政権の存続に依存する、とても多くの部族とグループが、トリポリの中と周辺にあります」「私は、自由主義圏、ヨーロッパ、NATO軍、アメリカはカダフィ大佐に権力から退いてリビアに残ることを認めることを検討していないという事実を隠蔽することは、さらなる希望的観測だと考えます」。

 月曜日のリビア国営テレビが放送した音声メッセージで、カダフィ大佐は「植民地入植者たちの終わりは近く、ネズミたちの終わりは近い」と言いました。彼は支持者たちにリビアを「解放する戦いの準備をしなさい」と訴えました。

 米軍がスカッドミサイルの発射を探知し、ミサイルは土曜日の朝に発射され、戦略的港ブレガ(Brega)の外、約80kmの砂漠に落ちたと言いました。

 BBCの別の記事によると、カダフィ軍はザウィヤの支配を巡り、反政府派と戦っています。政府と反政府派の両方が街を支配していると主張します。街はトリポリとチュジニア国境をつなぐ道路の上にあります。反政府派はここ数日の大きな進歩を主張し、政府は失地を取り戻せると主張します。

 NATO軍は、カダフィ軍にはもはや「首尾一貫した作戦」を行う能力はないと考えています。

 レオン・パネッタ国防長官(Defence Secretary Leon Panetta)は火曜日に、カダフィ大佐は「余命いくばくもない」と言い、6ヶ月間の紛争が最終段階に近づいているという一部のオブザーバーの間の印象を強めました。

 反政府派は常に、彼らがトリポリに到着できれば、街中の反政府派の支持者が立ち上がり、カダフィ大佐を妥当するのを助けると主張しますが、BBCのマシュー・プライス(Matthew Price)は首都ではそれは明確に感じられないと言います。

 NATO軍は、スカッドミサイルの発射は目新しさや、より危険な脅威を意味しないと言いました。同盟国はミサイルに気がつき、カダフィ軍の作戦能力を変えることはないと、NATO軍広報官、ローランド・ラヴォア大佐(Col Roland Lavoie)は言いました。

 火曜日に、国連特使でヨルダンの元外務大臣、アブドル・イラー・アル・カティブ(Abdul-Ilah al-Khatib)は、彼がリビア政府と反政府派の交渉を仲介したという報道を否定し、チュニジアで彼らに別々に会っただけだと言いました。反政府派は、国家暫定評議会がカダフィ大佐の代表と和平交渉をしたことを否定します。しかし、BBCは反政府派2人と政府大臣2人がチュジニアで会談を行ったと理解しています。ベネズエラ当局が両者をジェルバ島(Djerba)で会談するのを仲介し、それは週末に始まって火曜日の朝に終わったと消息筋は言います。


 シルトとブレガの間は約300km。です。射程が足りるのはスカッドB、C、Dで、発射したミサイルの半数が着弾する範囲(CEP)は順に900m、900m、50m。スカッドDの50mは疑わしいので、CEPは900mとしても、80kmもブレガから逸れたのは大失敗ということになります。ミサイルが飛翔中に壊れたとしか思えません。カダフィ政権にとって、これはとても不運なことでした。

 スカッドミサイルで反政府派を止められるかというと、それは疑問です。砲ほど正確ではない弾道ミサイルは元々が都市爆撃用で、散開している部隊に大きな戦果を上げられるチャンスは少ないのです。弾頭は1トン程度とされますが、通常爆薬1トンは区画一つを破壊する程度の効果しかありません。

 よって、スカッドミサイルを使ったのは、バニ報道官が言うとおり、カダフィ軍で通常兵器の運用が限界に来たことを疑わせます。反政府派、NATO軍、アメリカ政府の観測の通り、終わりが近いという見解に私は賛成します。



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