ステルスヘリの残骸を中国が入手か?

2011.8.16


 military.comによれば、米当局者はパキスタンが中国軍に、アメリカの秘密技術であるオサマ・ビン・ラディンを殺した急襲で使った米軍ヘリコプターを見せたと疑っています。

 国防当局者2人は月曜日に、確実ではないものの、当局はパキスタンが中国に航空機を見せたと疑っていると言いました。当局者は匿名を条件に語りました。

 国際的ビジネス新聞、ファイナンシャル・タイムズ紙は、氏名不詳の当局者が中国人技術者が、5月の襲撃でビン・ラディンの住居に墜落したステルス・ヘリコプターの残骸の写真を撮り、サンプルを得たという当局者の言葉を引用しました。

 残骸はその後、アメリカに返却されました。

 さらに、ファイナンシャル・タイムズ紙の元記事から目新しい部分をチェックしました。(記事を読むには登録が必要です。登録は無料です)

 「アメリカはいま、パキスタンが、特にISIが、中国軍にアボタバードで墜落したヘリコプターに近づく許可を与えたという情報を得ています」と諜報界のある人物は言いました。中国人技術者は、アメリカ人チームをレーダーに探知されずにパキスタンに侵入させた特殊な「ステルス」の外装のサンプルを得るだけでなく、残骸を調べ、その写真を撮るのを許されました。

 バラク・オバマ大統領の国家安全保障会議は、この事件について議論し、対応を議論しています。高官は、状況は「我々を喜ばせない」が、政権は僅かな手段しか持たないと言いました。

 軍事技術の機密を守る努力として、シールズは機材を粉砕するためにハンマーを使い、それから起爆するために爆発物を取り付けましたが、尾部は住居の壁の外に着地し、原型のままでした。米上院外交委員会議長、ジョン・ケリー(John Kerry)は、尾の部分の返還を図るために、襲撃の2週間後にパキスタンに行きました。その時、アメリカがイスラマバードに事前通告なしに襲撃を行ったことに激怒したパキスタン当局者は、中国が残骸を調べることとインターネットで流布された尾部の写真に興味を示していると暗示しました。しかし、ホワイトハウスとCIAに近い人物は当紙に、中国は実際に残骸に接近する許可を与えられたと言いました。

 「我々は襲撃の直後に、誰もヘリコプターの破壊された残余物に近づけないよう、パキスタンに明確に要請しました」とCIAに近い人物は言いました。

 米当局の高官はパキスタン軍参謀長、アシュファク・カヤニ大将(General Ashfaq Kayani)にこの件を突きつけましたが、彼は断固否定したと、この会談を知る人物は言いました。パキスタン高官も当紙に否定しました。中国はホワイトハウスとCIAと同様にコメントを辞退しました。

 北京はイスラマバードと強力な軍事的関係を持ち、パキスタン軍の主要な武器供給者です。

 「中国はこの最新技術に多大な関心を持っています」とパキスタンとの対立に関与している人物は言いました。「彼ら(シールズ)は理由なく、ヘリを爆破しませんでした」と彼は言いました。しかし、政府高官は、どんな有益な情報があるかもしれないので、それを「述べるのは困難」だと言いました。「ヘリコプターのほとんどは、作戦中に実質的に破壊されました」。


 読売新聞や時事通信の記事は、ファイナンシャル・タイムズ紙を引用しながらも、パキスタンが中国に残骸を見せたことを確定的な事実として報じています。しかし、ファイナンシャル・タイムズ紙は未確認の事実として報じています。

 米当局が得たという情報がどういうものかは、ファイナンシャル・タイムズ紙は書いていません。パキスタン政府関係者からの情報かも知れないので、詳細は公開されないでしょう。しかし、確度の高い情報と言えるものの、米当局も事実関係の確証はないようです。それを何ら説明なく、証拠があるかのように書いてしまうところに、国内報道の問題があります。

 読売新聞は「急襲作戦を受けて悪化している米パ関係がさらに冷却化する恐れが出てきた」と書いています。これもお決まりの文句です。この程度のことで、アメリカがパキスタンとの関係を台無しにできる訳はありません。アフガニスタンへの米軍補給路がパキスタンを通っており、テロ組織との戦いでもパキスタンを味方につける必要があるのです。

 パキスタンにすれば、主権を侵害して軍資作戦を強行したアメリカの要請にこたえるよりも、中国の手助けをする方が、アメリカに再び同じような作戦をさせないための布石になると考えられます。これはゲームセオリーなのです。本当に中国に残骸を見せなくても、アメリカに「見せるぞ」という姿勢を見せたり、明確な情報を与えないことで圧力を与えられます。今回の情報も、そのためにパキスタンが流した偽情報かも知れません。

 ファイナンシャル・タイムズ紙が書いているように、オバマ政権にできることは僅かであり、この見解こそ紹介する価値があります。アメリカにできるのは、関係修復と軍事・民生支援の増加くらい、つまりは「冷却」ではなく「懐柔」なのです。

 これは、国内メディアの国際記事は注意して読まないといけないという好例です。日本人はこういう記事に慣らされ過ぎています。



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