NATO軍がズリタンの病院を爆撃か?

2011.7.26


 military.comによれば、月曜日にNATO軍がリビア西部の病院を攻撃して、医師3人を含む7人を殺害しました。

 リビア政府は首都から東へ来るまで約2時間のズリタン(Zlitan・kmzファイルはこちら)に記者たちを連れて行きました。記者たちは、空爆を受け、未だに燃えている、いくつかの食物倉庫にも連れて行かれました。救急車の運転手、オサマ・マフムード(Osama Mahmoud)は医師3人がズリタンの死者の中にいると言いました。「この地域にはどこにも軍隊はいません」。

 破壊された病院の現場で、レントゲン撮影機、医薬品、ストレッチャーが混乱した瓦礫と捻れた金属から覗いていました。ブルドーザ4台が損害を片づけていました。住人は月曜の早朝にNATO軍の航空機が建物を爆撃したと言いました。ナポリのNATO軍広報官は、同盟国は空爆に関する情報を火曜日よりも前に公開しないと言いました。

 イギリス国防省によると、イギリス軍のジェット機がトリポリの情報局の建物を爆撃しました。「土曜の早朝、イギリス空軍のトルネードとタイフーンが電子工学研究中央機構(the Central Organization for Electronic Research)に対して精密爆撃を行いました」「表向きは工学アカデミーですが、ここは実際には政権の邪悪な活動の隠れ蓑でした」と、ニック・ポープ少将(Major General Nick Pope)は言いました。

 ポープ少将によれば、イギリス空軍のジェット機は土曜にズリタンに近くの、戦車と砲兵が集まるのに使われていた集結地点2ヶ所を狙うことに成功しました。

 「午後遅くに、トリポリの南にあるナフサ山脈の端にあるガリヤン(Gharyan・kmzファイルはこちら)近くで、武装した偵察隊が政府軍の主力戦車を見つけて破壊しました。

 BBCによれば、ロンドンでイギリスのウィリアム・ヘイグ外務大臣(Foreign Secretary William Hague)は、ヘイグ大臣はフランスのアラン・ジュペ外務大臣(Foreign Minister Alain Juppe)との会談に先立ち、イギリスの希望はカダフィ大佐が出国することだと言いました。

 ヘイグ大臣は、国家の運命を決定するのはフランスやイギリスではないとして、「カダフィに起きることは、最終的にはリビア人の問題です」だと言いました。「明らかに明白なのは、アラン(ジュペ)が言ったとおり、何が起ころうと、カダフィは権力を放棄しなければならないということです。彼が再びリビア国民の命を脅かしたり、彼が権力を放棄した後でリビアを不安定にすることは決してあってはなりません」「彼がリビアを離れることは明らかに、リビア国民にカダフィを恐れて生きる必要がないことを示す最善の方法です」「しかし、私が初めから言っているように、これは最終的にはリビア人が決定する問題です」。

 ジュペ大臣は、同盟国はリビアで「完全な共同作戦」を行っているとして、ヘイグ大臣のコメントを支持しました。

 以下は省略します。


 NATO軍が病院を誤爆したとすれば大問題です。記者が現場に行ったのなら、病院が破壊された事実は間違いがないように思えます。ただ、病院に見えるように医療機材を運び込み、爆破すれば、似たような現場は作れます。また、記者は犠牲者の遺体を見ていないようです。

 ズリタン周辺に軍隊がいないというマフムード運転手の発言は非常に疑問です。ズリタンはいまや東部から首都へ攻め上る反政府派の最前線となっており、カダフィ軍は何としてもズリタンを守りたいはずです。そんな地域に軍隊がまったくいないということはあり得ません。ポープ少将の言にあるように、ズリタンで戦車と砲兵の集結所が見つかっているのです。病院誤爆が事実としても、彼は政府の依頼で嘘をついた可能性があります。誤爆については、NATO軍の調査結果を待たなければなりません。

 電子工学研究中央機構の爆撃は、記事には月曜日朝とも書いてあるのですが、他の記事での引用で確認すると、土曜日朝が正しいようです。

 ガリヤンがまだ陥落しておらず、カダフィ軍が残存しているようです。南部戦線も進展が非常に遅い点が気になります。ブレガ方面でも進撃の続報は聞こえてきません。

 政治面では、カダフィの出国に関する各国や反政府派との意見の相違は大した問題ではないことが分かります。国内メディアは面白がって、同盟国内での亀裂と報じています。こうした見解は大抵の場合であとで筋違いであることが証明されるものです。一方で、当サイトで指摘してきたように、NATO軍の出足の遅れについては、メディアは大して頓着しません。特に、日本のメディアには、お得意のシナリオに合致しているように見える状況にだけ注目し、そればかりを報じるという問題があります。これは旧日本軍が基本的な戦略書「統帥要綱」に固執しすぎ、戦況を「統帥要綱」に合致するようにだけ解釈し、よけいに判断を間違えたことに、なぜか似ているのです。戦況は常に新鮮な視点で観察する必要があります。戦略書を参考にしながらも、臨機応変に考察すべきことなのです。だから、メディアに「よく見かける言い回し」が出てきた時は注意すべき時です。それはメディアがよく使う表現、解釈に過ぎず、現状と一致していない場合があります。



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