米が暫定政権をリビア政府として承認

2011.7.16


 military.comによれば、アメリカとその他の国は正式に、暫定的行政機構が形成されるまで、リビアの反政府派を同国の合法的な政府と決定しました。

 この決定はカダフィ政権がすでに合法的ではないことを宣言し、反政府派がリビア軍と戦うのに必要な現金の問題を潜在的に解消します。

 金曜日に、外務大臣といわゆる「リビア交渉グループ(Contact Group on Libya)」の代表は声明の中で「カダフィ政権はもはやリビアの合法的な権力ではありません」と言いました。彼らは、リビアの指導者と彼の家族の特定のメンバーは退陣しなければならないと言いました。グループは、リビアの中心的反政府派、暫定国家評議会(the National Transitional Council: NTC)を、暫定政権ができるまでの「リビアの合法的な政府」と交渉すると言いました。アメリカを加えて32ヶ国のリビア交渉グループはNATO軍、ヨーロッパ連合、アラブ連盟の加盟国を含みます。

 評議会が外交上で承認されたことは、アメリカが国内の銀行で凍結したカダフィ政権の資産、300億ドル以上を反政府派に供給できることを意味します。米当局者によれば、クリントン国務長官が暫定国家評議会をアメリカが承認すると発表した時、接触グループの代表たちは自然発生的に拍手を始めました。

 反政府派広報官、マムード・シャンマン(Mahmoud Shammam)は暫定国家評議会が承認されたことを歓迎し、他の国々に何億ドルもの資金を反政府派に供給するよう要請しました。「資金。資金。資金」とシャンマンは反政府派の要請を協調するために言いました。彼は、反政府派は1年以内に選挙を実施し、石油施設への被害は僅かで修理できたとして、非常に早く石油の輸出を再開しようとしていると言いました。しかし、シャンマンは新しく選挙で選ばれた政府ができるまで、いかなる新しい石油の契約も排除しました。

 反政府派がリビア社会のすべての範囲を代表するかは懸念がありました。「ヒューマン・ライツ・ウォッチ(Human Right Watch)」は交渉グループに、最近、西部の山地帯で反政府派が手中にした、アワニヤ(Awaniya)、レイヤニヤ(Rayayinah)、ザウィヤト・アル・バグル(Zawiyat al-Bagul)、グアリシュ(Qawalish)の4つの町での虐待を、略奪、放火、カダフィ軍が撤退した時に残った民間人の殴打を含めて取り上げ、反政府派が支配したとみなせる地域で民間人を保護させるよう主張しました。6月に、ヒューマン・ライツ・ウォッチはカダフィを支持する疑いがある男たちを任意拘留したことで避難しました。今週、同団体はリビアの西部山地帯の反政府派は征服した村で店と家、医療施設を略奪していると避難しました。早くから、西部の一部では反政府派がイスラム過激派を含むことを恐れました。何人かの戦士が過激派グループを古いつながりがあることが判明したものの、非宗教的な憲法に基づいた民主政府を確立しようとしている反政府派の指導者には誰もなりませんでした。

 それでも米高官は、暫定政権が約束を守り、本当に民主的なリビア政府へむけて方法を探ると保証した後で、暫定国家評議会は国際的な承認を勝ち取ったと言いました。匿名で話した当局者は、この保証には国際的な義務を守ること、地理的、政治的の両方を含めて民主的な改革プロセスを続行し、リビア国民の利益のために資金を分散することを含むと言いました。

 この会議に先立って、リビア政府広報官、ムーサ・イブラヒム(Moussa Ibrahim)は、政府メンバーは反政府派とNATO軍の攻撃から時刻の石油を守るために死ぬ準備ができていると言いました。「石油のために、我々は殺し、死ぬでしょう」「反政府派だろうが、NATO軍だろうが気にしません。我々は我々の石油を最後の血の一滴まで守り、我々はあらゆる物を使うつもりです」。

 交渉グループの声明は、「生活の正常化」のために停戦の確立と人道支援の用意を要請しました。それはまた、民主主義へのなだらかな移行、将来政治的な結果において「民間人に残虐行為を行った者」が参加することを排除すること、参加国へのリビア資産の凍結解除と反政府派が石油の生産と輸出を復活させるのを助けることを含めた反政府派への資金援助の要請を主張しました。

 米当局者は暫定国家評議会の承認は、各国に反政府派がさらなる資金にアクセスするのを助けると言いました。しかし、彼はアメリカを含む一部の国と国連では、完全に合法的に手順を踏むため、より多くの法律事務が必要だと言いました。この承認はベンガジにいる米外交団が現在、米国大使館であることは意味しません。スタッフの肩書きと氏名は来るべき日に決定されるだろうと当局者は言いました。

 木曜日、カダフィ大佐は支持者たちにリビアの敵を攻撃するために武器を取るようにテレビ演説で言いました。「怒りの塊の波をぶつけ、頭をあげて我々は決して降伏しないと叫び、困難に立ち向かうのです。NATO軍を破壊しなさい!。我々は勇敢です。我々はムジャヘディン(聖戦士)です!」。

 military.comによれば、リビア政府はロシアの特使が、トリポリが反政府派の手に落ちるなら、カダフィ政権が首都を爆破すると脅したというロシアの新聞報道を否定しました。

 ロシアのリビア特使、ミハイル・マーゲロフ(Mikhail Margelov)は木曜日のイズベスチャ紙で、リビア首相、アル・バグダッディ・アル・マムーディ(Prime Minister Al-Baghdadi al-Mahmudi)が、最近、彼に「反政府派が街を奪うなら、我々はミサイルで街をいっぱいにして、爆破するでしょう」と述べたと言いました。イブラヒム広報官は報道を否定しました。マーゲロフの事務所も、彼らはそのような声明を出していないと述べました。「これはまったくの根拠のない、偽りです。我々は決して自分たちの街を爆破しません」とイブラヒム広報官は記者に言いました。マーゲロフは停戦の調停者でした。


 クリントン国務長官のコメントは、当然ながら、合意の内容と合致しているので省略しました。

 軍事的な進展が乏しい中で、政治的な動きがあり、アメリカが暫定評議会をリビアの政府として認めました。アメリカの承認が遅れたのは、反政府派の中にどれだけイスラム過激派がいるかをアメリカが確認したり、調査の不備から発見できなかった過激派が見つかった場合に例外なく新政府から排除すると、暫定政権に交渉して、確約させたためだろうと想像します。

 人権団体と先進国政府の方向性は一致しています。発展途上国での人権侵害を防止しようとする流れは世界的な傾向です。残念ながら、日本ではそれが十分に認知されておらず、イラクで日本人の人権活動家とジャーナリストが武装勢力に誘拐された時、総理大臣が彼らの行動を批判するという失態を生みました。これは日本がルールを守らない国だという批判を招きかねないことでした。軍事力を行使する場合も、こうした問題を念頭に置かないと、日本は国際的な批判を招くことになるのですが、そんな議論は自衛隊の海外派遣においてなされたことがありません。せめて、自衛隊内部で十分な議論がされていることを願うばかりです。

 マムーディ首相がトリポリを爆破すると言ったのは、多分、本当だと思います。ロシアはリビアを擁護しており、中傷する必要はありません。しかし、首都を爆破するというのは、第2次世界大戦中にヒトラーが、外国に負けるくらいならドイツそのものを破壊しろと、焦土作戦を命じたことを連想させます。それに気がついたリビアは、今になって否定しているのだと考えられます。



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