アフガン軍が治安権限委譲に自信

2011.6.23


 military.comによれば、アフガニスタン軍は国の重要な地域の治安を守る準備ができていると、アフガン国防省は言いました。記事を広報官、モハマッド・ザヒル・アズィーミ大将(Gen. Mohammad Zahir Azimi)の発言を中心に紹介します。

 「いくらかの戦いがあるでしょう。自爆攻撃と爆弾による攻撃があるでしょう」「しかし、我々アフガン軍は外国部隊と置き換えられる準備ができており、私は軍が可能性と能力を十分に持っていると確信しています」。

 アフガンにはオバマ大統領が就任した時よりも3倍多い100,000人の兵士がいます。オバマ大統領は夏に5,000人を撤退させ、冬か2012年春までにさらに5,000人を撤退させるとみられています。アフガン軍は7月20日までに5つの州都と2つの州の治安に責任を持つことになります。

 アズィーミ大将は、アフガン当局者は移行を確信しており、タリバンが弱体化させられ、カンダハルの拠点から追いやられたと指摘しました。10月までにアフガン軍には171,600人の兵士とNATO軍の兵器が装備されるとアズィーミ大将は言いました。

 しかし、タリバンは恐るべき敵のままで、4月末に毎年行っている春の攻撃を始めました。今月初めに発表された報告書によれば、続く月は国連が2007年に死者を調査し始めてから最悪となりました。武装勢力は5月に殺害された368人の民間人に責任があると報告書は言いました。

 治安権限が移行される州都は、ヘルマンド州のラシュカル・ガー(Lashkar Gah)に加え、西部、東部、北部の州と、カブール州のほとんどと特定されます。治安のよいバーミヤン州(Bamyan)とパンジール州(Panjshir)もアフガンに治安委譲されます。

 アズィーミ大将は、パキスタン国内での攻撃に関与したタリバンを狙ったとみられる、4日間にわたるクナール州への越境砲撃についてパキスタンに厳しく警告しました。彼は150発の迫撃砲弾がサカワイ地区(Sakawai district)へ撃ち込まれたと言いましたが、犠牲者の正確な人数は提供しませんでした。アフガン政府は越境の暴力に関して外交的な解決を見出そうとしていると彼は言いました。

 アフガン南部での戦況に関する部分は省略します。


 ペトラエス大将は4月に「タリバンの春の攻勢はないでしょう」と言いました(記事はこちら)。しかし、この宣言と異なり、5月には攻撃が続発しました(記事はこちら)。分かっている範囲では、戦いは一進一退というところです。タリバンはより弱い目標を狙って攻撃を繰り返しています。アズィーミ大将の発言はお決まりの文句と言うべきで、実態とは合いません。

 今朝のテレビ番組で、誰かが「追い詰められていなければタリバンは交渉に出てこない」と言っていましたが、こういう人の意見は信用できません。相手の様子を見るために交渉を続けることもあります。北朝鮮が6ヶ国協議で見せた態度を思い出してください。タリバンはそれほど追い詰められてはいませんし、いざとなればパキスタンの部族地域に逃げ込めるのです。オバマ政権はアフガンから撤退するために、タリバンの勢力を殺ぐことに成功したと言うでしょうが、それは撤退を円滑に進めるための方便です。夏にかけて、特に日本の保守系メディア上にアメリカに胡麻を擂るような評論が出てくるはずですが、慎重に聞くべきです。



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