ズリタン攻略には時間が必要

2011.6.22


 BBCがリビアのズリタン(Zliten)の攻防戦について報じました。状況は難しいようです。

 北へ向けた銃撃戦があり、砲撃が私たちの背後の森が着弾します。1発は低く轟き、近くの果樹園で爆発しました。ここはほとんど塹壕戦のようです。遅い、行き詰まった、前方へ2~3m動く毎日の戦いがあります。「神は偉大なり!」と男たちは叫び、半ば本能的に、隠れるために冷静に屈みました。ここにいる戦士のほとんどはズリタンの住民です。彼らは反政府派の攻勢に加わるために町から密かにやってきました。ズリタンを奪取するか「解放」して、トリポリへ向けて西進することは、反政府派の最優先事項でしたが、彼らは希望を失っているようです。

 「私はあそこに家族がいます」と若い男が言います。彼は親族がズリタンにいるカダフィ軍の攻撃対象になるのを恐れて名前を言いませんでした。ここの反政府軍を妨げる沢山の混乱と政治がありますが、ズリタンの戦士たちは非常に思慮深く対処しているようです。1つの部隊で戦うのではなく、地元の知識を共有し、ズリタンとミスラタとの間に存在するプライドの問題とその他の地元民の競争を克服するために、彼らは意図的に前線に沿って分散しています。ズリタン出身の背が高い若い兵士、アクラン・マゾウジ(Akram Mazouzi)は、最近のロケット攻撃で黒煙が上がっている場所を指しました。「ロケットはいたるところに落ちています」「さらに、我々は全員が軽火器で反撃しなければなりません。カダフィはこんな重砲を持っているので、それは困難です」「ズリタンの人たちは共に立ち上がり、ミスラタの戦士と部隊を統合しなければなりません」「それが我々がカダフィ軍を排除する方法です」。

 子供たちはズリタンの近くでミスラタの家の瓦礫で遊び、ロケットに攻撃されます。反政府軍の広報官、イブラヒム・ベイト・アルマル(Ibrahim Bait Almal)はその分析を認め、より多くのことができないことでズリタンの住民を批判しました。しかし、反乱はいくつかの理由で起きていません。早い段階で、反攻した者はカダフィ軍に断固として粉砕され、20人以上の反政府派が殺されました。ズリタン内部のカダフィ軍を支持するレベルは測るのが困難です。一部の者はそれを10%としましたが、別の者はほぼ二分されていると言いました。私は多くの市民が自分自身の玄関先に戦争をもたらすのを避ける方法を見つけようとしているだけだと想像します。

 衛星電話で、私はズリタン内部に隠れている反政府派指揮官と連絡を取りました。明らかな理由により、彼は名前を出さないように私に依頼しました。「状況は悪くなっています。食糧はなく、燃料もありません」「毎日彼ら(カダフィ軍)は人々を逮捕しています。彼らはいたるところ、100mごとに検問所を設けて人々をチェックしています」「我々はここですべてを終えたため、戦闘はありません。我々は軍の装備を持っていません」。私が彼に弾薬が尽きたかを尋ねると、「はい。我々はズリタンの外から事態が変わるのを待っているところです。我々はミスラタの反政府軍がくるのを待っています」。彼は町の外にNATO軍の爆弾が落ちるのを聞けるものの、カダフィ軍は未だに重火器の多くを隠せていると言います。「彼らはモスクや病院…あらゆる公共の場にロケットランチャーを置いています」「それでも、彼(カダフィ)は敗北します。知っての通り、彼は人々と戦いますが、彼の軍隊は自分の家族とは戦えません」。

 BBCによれば、NATO軍は無人偵察ヘリコプターを失いました。マイク・ブラッケン中佐(Wing Cmdr Mike Bracken)は、イタリアのナポリにあるNATO軍のコマンドセンターは、グリニッジ標準時0720に無人航空機との連絡が途絶えたと言いました。彼の声明は、リビア国営テレビは、撃ち落とされたアパッチ攻撃ヘリコプターの残骸だと主張した映像が示された後に来ました。ブラッケン中佐は攻撃ヘリコプターは失われていないと言いました。「この無人ヘリコプターはリビア上空で、民間人に脅威をもたらすカダフィ軍の諜報、監視、偵察を行っていました」「我々は(損失の)原因を調査中です。我々は攻撃ヘリコプターを何も失っていないことを確認できます」。先に、リビア国営テレビは、ズリタンの西部地区で政府軍が撃ち落としたアパッチヘリコプターだという映像を放送しました。NATO軍当局者は、使用した無人ヘリコプターの正確な型を特定しませんでしたが、アナリストは同盟国はノースロップ・グラマン社のMQ-8「ファイアスカウト・ヘリコプター」を使っていたと言います。この無人機は、3月31日にNATO軍が飛行禁止区域の任務を引き継いでから失われた最初の航空機です。


 これまで分からなかったズリタン戦の状況が分かってきました。

 地元部族のプライドの問題は反政府派に何とかしてもらうとして、西欧ができるのは、外部から的確に支援することです。

 ミスラタとズリタンの間は、幹線道路の周囲に整然と広がる果樹園です。地形は平坦で移動は楽ですが、見通しはよいので兵器の射線も通りやすいという問題があります。道路沿いの樹木や農家などくらいしか、身を隠す場所はありません。お互いに敵を監視し、姿を見たら砲撃したり、直接銃撃戦を交わしているようです。カダフィ軍は反政府派が前進してくるのを阻止することに主眼を置き、ミスラタの奪還は考えていないでしょう。ここで前進して大敗すると取り返しがつきません。反政府派はカダフィ軍の隙を見つけて、付け入ろうとしています。これを第1次大戦の塹壕戦になぞらえるのはイギリスのメディアらしいことです。

 BBCの記事に掲載されたリビア国営テレビの映像とMQ-8の写真(写真はこちら)と比較すると、極めて似ており、同一と判断してよいと考えられます。これがズリタン西部で発見されたということは、反政府派が言う重火器をNATO軍が探し回り、破壊する準備をしているということです。ちょっと遅い気はしますが、近くズリタン周辺で空爆が始まるのではないでしょうか。反政府派の進撃はその後です。

 本来なら、反政府派の進撃のために爆撃したり、発煙弾を撃って支援したいところですが、それはリビア国民に脅威をもたらすカダフィ軍を攻撃するという任務から外れます。今後、時間をかけてズリタンの重火器を空爆し、戦力を低下させてから反政府派を前進させるしかなさそうです。



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