3号機の爆発は水素が原因ではない?

2011.4.8


 週刊現代4月16日号に載っている、福島第1原発の基本設計を担当した元米GE社のデザイナー、菊地洋一氏の見解には驚かされました。

 菊地氏は、福島第1原発を上空から撮影した写真を分析し、3号機の鉄骨がアメ状に曲がっているは水素爆発によるものではないという見方を示しました。建屋の骨組みが1号機や4号機と違い、グニャグニャに曲がっていることは、鉄骨を溶かす800度を越した高熱が発生したことを示しているというのです。菊池市は水素爆発以上の問題が起きているはずだと指摘します。(同誌には、原子炉を上空から撮影したカラー写真が掲載されています)

 爆発は、私がテレビ中継を見ているときに起こりました。アナウンサーがすぐに水素爆発が起きたと言ったのを聞いて、私は爆発の特徴が「1号機とまったく違うのに」と腹を立てました。映像を見れば分かるように、3号機の爆発は規模が大きいだけでなく、キノコ雲状の煙の塊が立ち上るのが、はっきりと見えました。このような煙は1号機の爆発には見られませんでした。この煙は高熱が生じた場合に見られるものです。そのすぐ後に書いた記事(記事はこちら)に「煙が高く立ち上っていることから煙が高熱であることが推定できました」と、原子炉部分の爆発を疑う記事を書きました。この頃までには、東京電力の発表が信じられなくなっていました。しかし、水素爆発という説明しかなされず、水素爆発と信じることになってしまいました。

 水素爆発でないのなら、何が起きたのかという問題があります。原子炉内で、あれほどの爆発を引き起こすのは、原子炉の爆発以外には考えられません。プール内の使用済み燃料は発熱しても、密閉されていないので爆発はしません。

 では、原子炉が爆発したのかというと、その証拠はありません。圧力容器内に一定の圧力が観測されていることから、ここが大きく破損して、穴が開いているとは考えにくいものがあります。もっとも、測定値が不正確だとか、本当の値が隠蔽されているという可能性も否定はしません。しかし、原子炉の圧力容器が壊れたら、もっと強い放射線が観測されるはずです。全国各地で、様々な団体が放射線の値を計測していることから、これは誤魔化せません。

 一番可能性が高いのは、格納容器の外側にあるコンクリート製の主隔壁が破壊されたことだと、私は推測します。爆発のビデオ映像をよく見ると、1号機の場合と違い、3号機は2回爆発しているように思えます。この検証にはYouTubeの映像を利用しました。

 3号機は爆発するとき、最初に1号機の時と同じような爆発が起こります。原子炉建屋から噴出する煙が見えた途端、建屋の屋上にオレンジ色の炎が見えます。その次に屋上を突き破るように、最初の爆発よりは黒っぽい煙が空に向けて登っていきます。最初に見えた煙は1号機の時と似た感じで拡散していきます。2つの色が違う煙は、明らかに違った動きをしており、爆発は2回起きたという推測は成立しそうに思えます。

 最初に建屋内で1号機と同じように水素爆発が起き、それが主隔壁を吹き飛ばさせ、空高く突き上げたのです。菊池氏は、建屋の天井部分は柱がないので軽く作られていると証言していますが、そうとは思えないほどの塊が飛んでいます。

 しかし、主隔壁をあれだけ上空へ吹き飛ばすには、相当なエネルギーが必要です。一番考えやすいのは格納容器の上部が水素爆発を起こし、それが主隔壁の上部を吹き飛ばしたことです。これなら放射線の上昇が一定程度で済み、格納容器内の高熱が放出されることもあり得そうです。この場合、格納容器内の圧力が大気とほぼ同じになるはずですが、現段階で計測データを確認できておらず、推測止まりです。

 週刊現代には、その他にも興味深い記事があります。原子炉の設計者、デール・ブライデンボー氏の独占インタビューは目を通しておきたい記事です。また、免震重要棟のドアを開けると放射線が入るので、食料の搬入がままならないということも書いてあります。これは言い訳に過ぎないように思えます。非常時に対策本部となる場所の放射線防護がこの程度なのです。



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