カダフィ軍がミスラタから撤退

2011.4.24


 ワシントン・ポストによれば、リビアの反政府派は土曜日にミスラタから政府軍を締め出したと言いました。

 「(カダフィ軍の戦車と兵器のすべてはミスラタ市内で押収されました」と、市議会の広報官、モハメッド・アリ(Mohamed Ali)は言いました。アリは、街を分ける3マイルのトリポリ通りの青果市場に対する最初の無人攻撃機プレデターの攻撃と見られるものを目撃したと言いました。そこには未だに少数のカダフィ軍が籠もっていました。

 NATO軍は、米軍のプレデターが土曜日に、民間人を攻撃するのに使われる、ミスラタ地域の多連装ロケットランチャーを破壊したと言いました。米国防総省は、土曜日に最初のプレデターの攻撃を行ったと言いました。アリ広報官は、NATO軍の大規模な空爆が市南部のカダフィ軍が使用している市場に対してあり、重大な被害が出たらしいと言いました。アリは反政府派の死者は22人、負傷者は65人だと言い、「何かを祝うにはあまりにも多くの人を失った」と言いました。医師によると、包囲戦の間に市内では少なくとも400人が死亡し、1,000人以上が負傷しました。

 カリド・カイム外務副大臣(Deputy Foreign Minister Khaled Kaim)は金曜日に、政府軍はNATO軍の空爆のためにミスラタを鎮圧できず、カダフィ大佐を支持する、反政府派の封鎖で港へアクセスできないのに怒っている地方部族に仕事を任せると言いました。

 ミスラタの反政府派は、政府の発表はトリポリの東方131マイルの都市でのカダフィ軍の崩壊を覆い隠すためだろうと言いました。「カダフィ軍は、彼らが破綻したことを知っています」とアリ広報官は言いました。「私は(カダフィ大佐は)彼の負けを偽ろうとしていると思います」。

 政府軍によるミスラタへの砲撃は土曜日に街の南部と南西部に対して続けられました。中心部では、反政府派が市を捜索して、道路を開いていましたが、彼らはカダフィ軍が撤退する前に家や車に爆弾を仕掛けていったと言いました。

 土曜日の早い時刻に、カイム外務副大臣は部族指導者が反政府軍に接触し、次の48時間に交渉による解決に達することを試みて時間を費やすだろうと言いました。アルカイダの外国人が反政府派で主要な役割を果たしているという政府の断定を反映して、「彼らの主要な要求は、外国人戦士が街を出るか、軍隊に降伏することだ」と彼は言いました。「別のオプションはミスラタを開放するための軍事行動です」と彼は言い、60,000人の部族が戦う準備をしていると付け加えました。「部族が市内に入れば、大量の血を見るでしょう」「私は我々がこれを避けるよう神に祈ります」。

 トリポリでは、NATO軍の空爆が土曜の早い時刻に、カダフィ大佐の拠点「バブ・アル・アジジヤ(Bab al-Aziziyah・kmzファイルはこちら)」近くの軍用地下掩蔽壕とみられるものを攻撃しました。記者を現場に連れて行ったリビア当局者は、それが民間人用の駐車場の地下水システムだと言いました。地上に地下水システムのコンクリート製の屋根を打ち抜いた2個の穴があり、操作員のいない携帯用地対空ミサイルのケースがありました。

 NATO軍は59回の空襲を金曜日に行い、首都の指揮統制掩蔽壕、戦車3両、ミスラタ付近の掩蔽壕とその他の標的を攻撃したと言いました。


 プレデターの最初の攻撃について、米国防総省は詳細を公表していませんが、この記事で大体のところはつかめました。

 前回取り上げたばかりの青果市場が、この記事に登場したことに驚かされました。

 戦車や武器を投げて逃げたのは、カダフィ軍が総崩れだったことを意味します。しかし、その一方で爆弾を残していく余裕もあったことになります。すべての装備を投げていったというアリ広報官の話は確証があるものではないのでしょうが、多分、大量の装備品が置き去りになったことを意味していると思われます。仕掛け爆弾がどれくらいあるのかにより、カダフィ軍の慌て振りが判断できそうです。

 しかし、その理由がよく分かりません。プレデター2機が偵察のために投入されていることは、すでにカダフィ軍は知っているはずです。この2機が空爆を始めたとしても、爆撃の正確性は恐れるでしょうが、数が少なすぎます。地上を攻撃できる搭載武器は、ヘルファイアミサイルが2発だけです。4発を発射すると、基地に戻ってミサイルを積み直さなければなりません。これは総崩れを起こさせるほどの脅威ではありません。同時に行われたというNATO軍の空爆も、しばらく前から継続中でした。そうだとすれば、カダフィ軍の撤退は継続されてきたNATO軍の空爆に耐えられなくなったためと考えるべきでしょうか。あるいは、現地部隊と中央とに何らかの意思疎通があり、現地部隊が撤退しなければならないと考えたのでしょうか。たとえば、トリポリへの空爆で通信施設が破壊され、連絡がとれなくなったとか、「カダフィ大佐死亡」といったNATO軍の偽情報にだまされたとかが考えられます。装備品を置いていくような事態を引き起こす何かがあったのかも知れません。

 カイム外務副大臣が言うことは、ほとんどが脅しと考えるべきです。60,000人も戦える部族がいたら、すでにミスラタに投入されています。あるいは、彼らが独自にカダフィ軍を追い出そうとしたかも知れません。それに、政府軍がミスラタから撤退すれば、反政府派も道路封鎖を解き、港にも行けるようになるわけですから、地元部族には戦う理由がありません。カイム外務副大臣が祈らなくても、流血の事態にはならないでしょう。

 この大きな変化に対していくつも考えるべきことがあります。撤退したカダフィ軍がどこまで行ったのか。これが東部地域での戦闘にどのような影響を及ぼすか。反政府軍がどこまで前進できるか。トリポリ攻略戦はどうなるか。次に出てくる情報に注意が必要です。


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