米軍人が銃の乱射で戦友を殺害

2011.4.22


 military.comによれば、米陸軍のジョセフ・ボジセビッチ3等軍曹(Sgt. Joseph Bozicevich)が戦友殺しで軍事裁判にかけられています。その内容は凄まじいものです。

 主任検察官のアンディ・マッキー少佐(Maj. Andy McKee)は、ボジセビッチ軍曹は2008年9月に、バグダッド南部のパトロール基地で「殺してやる」と叫んで、27発の弾丸を放ち、分隊長と兵士に致命傷を負わせました。ボジセビッチ軍曹は、ダリス・ドーソン2等軍曹(Staff Sgt. Darris Dawson)とウェズレー・ダービン3等軍曹(Sgt. Wesley Durbin)殺害で有罪になれば死刑に直面します。

 「彼は起こり得る結果について冷静を失っていました」とマッキー少佐は陪審団に言いました。

 弁護戦略に関する議論を拒否したボジセビッチ軍曹の弁護団は、7ヶ月続くと予測される公判の後半まで冒頭陳述を延期しました。41歳のボジセビッチ軍曹は無罪を宣言し、彼の弁護人、チャールズ・ギティンズ(Charles Gittins)は、依頼人は自身を守るために発砲したと言いました。

 水曜日の公判前に、発砲に至ることについて、少ない情報が明らかになりました。証言した目撃者は、バグダッド南部約30マイル(50km)の難儀したパトロールのあとで、上官が彼に制裁を加えると決めた後で乱射が勃発したと言いました。パトロールに同行した衛生兵、マイケル・ダンカン技術兵(Spc. Michael Duncan)は、ボジセビッチ軍曹は近くで銃声がした時、3マイル(5km)のルートの出だしで、数名の兵士を率いていたと言いました。分隊は隠れ、ボジセビッチ軍曹が再集合を試みた時、彼はチームを間違った道筋を下るよう導きました。それから、イラクの警察署に集合し、基地に戻ると決めた時、ボジセビッチ軍曹は誤って兵士を置き去りにしたと、彼は言いました。

 数時間後、目撃者たちは基地の方から2回の別々の連続射撃が聞こえたと言いました。何人かは待ち伏せを恐れました。ダンカン技術兵は防弾ベスト、ヘルメット、拳銃、医療キットをつかみ、飛び出しました。そこで彼はドーソン軍曹が6発の銃創から出血しているのを見ました。他の目撃者は、ボジセビッチ軍曹がドーソン軍曹を追いかけていたのを見ました。彼は背中を数ヶ所撃たれました。

 「彼が俺を撃った。ボズが俺を撃った」と24歳のドーソン軍曹が言ったと衛生兵は言いました。ドーソン軍曹は、バグダッドの野戦病院へ搬送後に死亡しました。

 衛生兵はそれから近くの保安施設に駆けつけ、ダービン軍曹が首の1発を含む7発の銃創による血の海に横たわっているのを見つけました。

 当惑した兵士たちの集団が集まった時、ダンカン技術兵は、彼が銃撃の直後に死んだとみられる、26歳のダラス出身の兵士を蘇生させようとした、と言いました。

 2007年に入隊してから、数回の海外派遣を務めた、21歳のダンカン技術兵は、未だに銃撃に震えると言いました。彼が血まみれの地面で3人の兵士の蘇生をしていた時、ボジセビッチ軍曹がどのように見えたかが忘れられないと言いました。

 彼は笑っていたとダンカン技術兵は言いました。

 「彼は尊大でした」と衛生兵は付け加えました。「ほとんど勝ち誇っていました」。


 久しぶりに軍事裁判について書きます。(記事は一部省略しました)

 この事件は内容がなかなり明らかなのに、公判が始まるまでに時間がかかりすぎています。これは、26歳の兵士が危篤状態を脱するのを待ったためかも知れません。彼が死亡すれば、3件の殺人罪で裁判をすることになるからです。しかし、証拠が明白なのに、裁判が7ヶ月も続くのは理解できません。これらの理由が気になります。まだ、知らされていない事実があるのかと疑います。

 一部確認したい事実もありますが、ドーソン軍曹とダービン軍曹がボジセビッチ軍曹を処罰しようとしたのは当然です。私的制裁は駄目ですが、小隊長に報告して処罰を求めたのなら上官として当然です。米軍だけでなく、間違った合図を出すのは軍規に抵触する場合が多いのです。ボジセビッチ軍曹が道を指示するのを間違えたのは、これに該当します。さらに、部下を置き去りにしたのは最悪の失敗で、見過ごせません。多分、最初の失敗が恥ずかしくて、それが次の失敗を読んだのでしょうが、彼の年齢からいっても、こういう失敗は許容できません。

 弁護団が冒頭陳述を後回しにしたのも疑問です。正当防衛を主張するなら、裁判の最初にやるべきです。これは公判の様子を見てから冒頭陳述の内容を決めるということで、弁護団が難しい裁判だと考えている証拠と見ます。しかし、ボジセビッチ軍曹がドーソン軍曹を追いかけて撃ったという事実だけでも、正当防衛は成り立たないと考えられます。武器を持っているなら威嚇発砲をしながら、その場を離れ、救援を求めればよいからです。

 当サイトでは、過去に米軍人による殺人事件をいくつも紹介してきました。中には、折り合いの悪い上官をクレイモア地雷で殺した者もいます(過去の記事はこちら)。それでも、ボジセビッチ軍曹の事件は五本の指に入る大きな事件でしょう。



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