NATO軍の空爆は不十分?

2011.4.18


 BBCによれば、カダフィ軍は人口30万人のミスラタ(Misrata)に対する攻撃を継続しています。中部では、アダビヤ(Ajdabiya)とブレガ(Brega)の間で戦闘が続いています。

 ミスラタではカダフィ軍のロケット砲が何十もの工業地域に発射されたと反政府派が主張しましたが、確認されていません。多連装ロケットのグラート(Grad)は数日間、パンを待つ行列の8人を含む、民間人の死の原因となってきました。30分間の乳製品工場への激しい砲撃で、5人の民間人が死亡したと医師はいいました。

 人権団体「Human Rights Watch」は、カダフィ軍がクラスター爆弾を使ったと主張しました。(同団体の記事はこちら

 「ムアマール・カダフィがリビアの都市で起こしている破壊が膨大で広範囲なので、ミスラタやその他のリビアの都市で起きていることに対して、躊躇したり、決意を否定する余地はありません」と、反政府派の暫定国家評議会広報官、アブドル・ハーフィズ・ゴーガ(Abdel Hafidh Ghoga)は言いました。彼は、何百人もの負傷した民間人が、すでに治療のためにミスラタからトルコへ連れて行かれたと言いました。カタール首長国は医療援助を提供していると言われ、船で避難した別の犠牲者約1,000人がベンガジへ連れて行かれました。

 国際赤十字委員会が街への訪問を容易にした後、リビア政府はミスラタの人々を助けることに関与していると言いました。

 トリポリにいるBBC記者、ジェレミー・ボーエン(Jeremy Bowen)は、リビア国民を守るNATO軍の任務は明らかに機能しておらず、西欧諸国は彼らが冒す容易がある政治的、軍事的なリスクを再評価しなければならないでしょうと言いました。

 NATO軍は都市部のカダフィ軍を攻撃するのは難しいと言いますが、金曜日に空爆はこの地域の戦車2両を破壊したと言いました。


 各都市の位置は、記事末尾に掲載されてる地図を参照して下さい。普通の地図には載っていない場所も記されています。

 「Human Rights Watch」の記事によれば、クラスター爆弾はスペイン製の「MAT-120」です。国際的な禁止条約の締結後、スペイン軍はすでにこの砲弾を破棄していますが、リビアは保持していたようです。MT-120は、小弾が直径50〜60mの 範囲に拡散し、150mmの均質圧延装甲(RHA)を貫通し、650個の鉄の破片を致死半径約6m、有効半径18mにまき散らします。弾着内の戦車の大きさの目標の20%を直撃するとされます。

 リビア政府が否定しても、目撃談がクラスター爆弾の特徴を描写し、不発弾が見つかっていることから、使用の事実は確定的です。自国民を人間の盾に使っているカダフィ大佐ですから、特に不思議なことでもありません。

 カダフィ軍は、当初やっていたように、歩兵を市内に入れず、砲撃ばかりやっているようです。これは市街戦をやって、反政府派を追い出す力がないからでしょう。同時に、反政府派にもカダフィ軍を追い出す力はありません。両者共に、相手の息が切れるのを待っているのです。これは長期戦を考える方がよさそうです。

 記事にはNATO軍の空爆に対し、不十分だとの意見が増えていることが書かれています。開始が遅すぎた空爆ですが、気長にカダフィ軍の戦車、装甲車、大砲、ロケット砲を破壊していくしかない段階に来たようです。できるだけ、目標を榴弾砲、ロケット砲に絞る必要があります。

 リビアと関係の深いイタリアが反政府派に対戦車ロケット砲や機関銃のような武器を提供する予定です。これは大きな前進です。おそらく、小火器から小型の兵器類が提供されることになるでしょう。

 空爆でカダフィ軍の兵器を破壊し尽くせば、武器が増えた反政府派の部隊が前進できます。それにはかなりの時間がかかり、数ヶ月を要します。戦いの初期にすぐに空爆を開始していれば、あるいはカダフィ大佐を降参させるチャンスがありました。しかし、巨大な官僚組織の頂点に立つ国家元首は、迅速に判断できないものなのです。



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