カダフィ軍は東部で後退、西部も制圧できず

2011.3.5
修正 2011.3.6 6:20


 military.comによれば、リビアの動乱に関して、アメリカのオバマ大統領はあらゆる選択肢を検討していると言いました。記事を簡単に要約します。

 「私は我々を挫折させることを望みません」とオバマ大統領は自分の態度を擁護しました。しかし、大統領は国際社会の同意なしに行動するつもりはなく、アメリカが難民を援助していることを強調し、人道的な危機を阻止して、カダフィ政権の終焉を早めるつもりであることを明確にしようとしました。訪問中のメキシコのフェリペ・カルデロン大統領(President Felipe Calderon)と共に現れたオバマ大統領は「徐々に流血が多くなり得る手詰まりの危険があります」と言いました。「そして、それが我々が明確に検討中の何かなのです。私が確保したいのは、人道的な危機が我々の手にかかっているほど状況が悪化したら、潜在的に迅速に、アメリカが完全に行動する能力を持っているということなのです」。

 オバマ大統領はチュニジアに逃げたリビア難民をエジプトへ空輸するために軍の輸送機を派遣しました。「国境に集まった何万人もの人たちがいます」「我々は彼らが家を得られることを確実にしなければなりません」。当局者は金曜日早くに最初の航空機が離陸できると言いましたが、詳細は明らかにしていません。国防総省広報官ウェンディ・L・スナイダー海軍中佐は「我々はこのために準備をして計画してきました」と言いました。軍事的対応の可能性について、オバマ大統領はアメリカが単独で行う計画はないことを明らかにしました。大統領はエジプトの反乱への対応は、アメリカからの高圧的姿勢に関して「我々が反米感情がこの運動から生まれたのを見ていない」ことを確実にしたと言いました。「この地域は我々が歴史の表側にいるのを確実にするために慎重に観察していますが、国際社会のメンバーと同じく、我々もそうしているということです」。

 アメリカ、イギリス、その他のNATO諸国はリビアに飛行禁止区域を設定するための非常事態計画を作成していますが、このアイデアは国連安保理で拒否権を持つロシアが拒絶しました。オバマ大統領は飛行禁止区域について直接言及しませんでしたが、「それは我々が検討する選択肢の一つです」と言いました。

 難民の輸送ではない、アメリカによる人道支援はすでに始まっています。

 military.comによれば、ヒラリー・ロダム・クリントン国務長官(Secretary of State Hillary Rodham Clinton)は、チュニジアのジェルバ(Djerba)にC-130輸送機を派遣し、国務省が武装反乱から逃げる外国人労働者を本国に輸送するのを助けるために民間機2機をチャーターしたと発表しました。

 国防総省広報官、デビッド・ラパン大佐(Col. David Lapan)は、C-130輸送機はドイツのラムステイン空軍基地から飛び、チュニジアへ向かう前にイタリアで米国国際開発庁の倉庫で補給品を受け取ったと言いました。補給品は、毛布4,000枚、10リットル入り水缶9,600個、シェルターに使うプラスチックシート40本を含みます。航空機はその後、ギリシアのクレタ島のスーダ湾の海軍基地に飛び、立ち往生しているエジプト人を乗せ、彼らを帰国させるために土曜日にチュニジアへ戻ることになっています。また、ラパン大佐は、すでに海兵隊員400人がスーダ湾にいて、強襲揚陸艦キアサージの海兵隊員と統合される予定で、この活動の作戦名が「Operation Odyssey Dawn」であることも明かしました。

 BBCが西部のザウィヤ(Zawiya)と東部の石油輸出港ラス・ラナフ(Ras Lanuf・kmzファイルはこちら)の戦いについて書いています。

 トリポリの西50kmにあるザウィヤからの報告は、街が東と西から十分に武装した政府軍に攻撃されたとありました。少なくとも18人が戦いで死にました。ザウィヤ住民のモハメッド(Mohammed)は、戦いが現地時間午前6時頃に始まりましたが、午前11時頃までに撃退されたと言いました。カダフィ軍は「東と西から来て、高層の建物に上り、撃ち始めました」「戦車数台が広場へ行き、捕まって燃やされました。カダフィ軍と我が軍の間の犠牲者はいくらかありましたが、ザウィヤはカダフィ軍に占拠されることはありませんでした」「私は広場の外にいます。カダフィ軍はどこに見えません。彼らは逃げました。一部は車両を失い、広場から別の建物の隠れ家へと歩かねばなりませんでした。しかし、反乱軍は彼らを殺したり、捕まえたりしました」。彼はカダフィ軍は郊外へ撤退しましたが、再度攻撃してくる可能性があると言いました。

 激しい戦闘はラス・ラナフでも報告され、複数の爆発音と重砲が反政府戦士が街に前進した後で聞こえました。さらに東部のベルガの戦いの後で2日前にラス・ラナフに撤退したというカダフィ軍の反撃の報告がありました。報告は戦車が住民の家に発砲したと言います。


 紹介したBBCの記事に掲載されている地図が非常に参考になります。「Oil」ボタンをクリックすると、記事に登場する場所がどこかが分かります。東部ではカダフィ軍は反政府派に押され、後退を続けているようです。西部ではザウィヤを制圧できずにいます。このままではカダフィ政権は1ヶ月くらいで追い詰められますが、それには反政府派の資源が底をつかないという前提が必要です。いざとなれば、ヨーロッパの軍隊が反政府派に武器供与を行う必要があります。

 アメリカが慎重なのは、現在進行中のアフガニスタン撤退の障害になったり、リビアに介入することでアフガン撤退の効果を打ち消すことを避けたいからです。人道支援も難民に対してに限定し、直接反政府派を支援してはいません。それでも、数日中には態度を明確にするはずです。何もしないとは思えません。反乱に協力すれば、新政府が親米的になる可能性が高まります。カダフィ大佐が主張するように、アルカイダは既存のイスラム政権を倒し、自分たちの新しい政権を中東全域に打ち立てることを目標にしています。反乱はそのための一環だというのがカダフィ大佐の主張です。事実、アルカイダはこの反乱を歓迎しています。しかし、アメリカやヨーロッパが適切に介入すれば、新政府がアルカイダ志向になることは防げます。ロバート・ゲーツ国防長官は慎重で、100機程度の航空機が必要な作戦だと指摘しています。しかし、防空施設を破壊し、たとえばカダフィ大佐の住居を破壊するような心理的効果を狙うのなら、それほど多くの戦力を必要とせず、効果も絶大です。武力介入の場合、反政府派への誤爆が心配です。だから、第一弾として、カダフィ大佐の関連施設、カダフィ軍の施設を爆撃することが選択されると考えられます。その後、カダフィ軍の集結地を無人偵察機などで探し出し、攻撃するのがよいと思われます。

 やや心配なのは、リビアは西部に行くに従って街も大きくなり、反政府派にとって攻撃が難しくなることです。東部の方が産油量が多いのに地元に還元されていないのは、Google Earthで見れば一目瞭然です。しかし、トリポリにつながるザウィヤで反政府派をカダフィ軍が鎮圧できていないことは有利な材料です。また、反政府派が西部に行くに従って、地元民が決起して味方につくことも期待できます。東部は街を落とすと、次の街までかなりの距離を移動しなければなりません。反政府派の補給が追いつくかが問題です。ここに航空機で物資を運ぶだけでも、強力な支援となるのです。



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