炉心溶融で作業員が被曝

2011.3.25


 FNN系の報道によれば、福島第1原発の3号機で24日、3人の作業員が被曝しました。これについて、東京電力は燃料が破損して原子炉の外部に流出したためではないかとしています。

 作業員が踏み入れた水たまりの放射性物質の濃度は通常運転中の原子炉内の水が含む量のおよそ1万倍でした。水に含まれた放射性物質はコバルト60、ヨウ素131、セシウム137、セリウム144でした。セシウムやセリウムは核分裂反応時に生成されるので、燃料が破損して原子炉の外部に出たと東京電力はみています。


 燃料棒が破損し、原子炉の外部に出たのなら、これは明らかに完全な炉心溶融(メルトダウン)です。当初からその可能性を指摘してきましたが、東京電力はごく一部の燃料棒が損傷したと認めただけでした。

 作業員が被曝して、ようやく東京電力が完全な炉心溶融を認めたことになります。もっと早くに認めていれば、作業手順や注意点が変更され、この被曝は防げたと考えられます。作業員は警報が鳴ったのを誤作動と思い込み、作業を続けて被曝したと言います。これを作業員のミスと考えるべきではありません。炉心溶融の危険をもっと強く上層部が認識していれば、作業員に放射線レベルに十分注意するように指導できたはずです。作業員は指導者の指示に従って作業をします。炉心溶融が考えられるのなら、特に地下での作業には水たまりなどに入るなという指示ができたはずです。これが軍隊なら、上官の敵勢力の見積もりが甘く、部下が死傷したという状況と同じです。

 スリーマイル島原発事故では炉心溶融は食い止められました。チェルノブイリ原発事故では、完全な炉心溶融が起こりました。いずれの事故も単一の原子炉での事故でした。しかし、福島第1原発は6基の原子炉が損傷しており、少なくとも3号機は完全な炉心溶融が起きたとする材料が出ています。これは世界最大級の事故なのです。

 事故の度合いがより高かったことが分かったのに、なぜかメディアはこの件について、意外に大人しい反応しか示していません。



Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.