「放水しなきゃ処分」は本当か?

2011.3.22


 福島第1原発への連続放水について、海江田万里経済産業大臣がハイパーレスキュー隊幹部に「速やかにやらなければ処分する」と圧力的な発言をしたという話が、石原慎太郎東京知事から菅直人総理に伝えられたと報じられました。

 しかし、この話は最初から疑問です。経済産業大臣が総務省に属する消防庁職員を処分すると脅したのでは筋が通りません。総務大臣がその気にならなければ意味がないからです。また、発言が本当なら越権行為であり、総理から経済産業大臣に処分があり得るほどの問題です。

 石原都知事は、政府の指示で4時間の連続運転が限度の放水車を7時間動かしたので「完全に壊れた」と言ったようです。しかし、ポンプが壊れたとすれば、ポンプを交換すれば済むと思われます。仮にポンプが壊れたとしても、それは大きな問題ではありません。

 石原都知事は「そんなばかなことを言ったら戦が戦にならない」と言っているので、戦争を例にとります。

 砲兵には普通の発射頻度を越えて射撃をする全力射撃があります。砲身は砲の主要部品で、これが壊れたのなら「完全に壊れた」ことになります。でも、交換できる部品の場合は、そうは呼びません。

 全力射撃のように、戦果が得られるなら意図的に装備品を犠牲にすることは、しばしばあるのです。燃料プールの温度を下げるのに、連続放水しか方法がないなら、私は躊躇せずに放水車を突入させます。災害対策は戦争とは別物ですが、こんなに小さなことを言ってたら、それこそ「戦はできません」。

 海江田大臣は「私が直接現場と話したのではない」「かなり事実の混同がある」と述べており、まずは事実関係を客観的に見てみたいと考えます。



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