リビアは東西に分割か?

2011.2.24


 stratfor.comがリビア動乱をエネルギー供給の観点から見たレポートを公開しました。

 以下にそのレポートを掲載します。

 多くのアフリカ国家と異なり、リビアの石油と天然ガスのほぼすべては陸上で生み出されます。これは開発費を減らしますが、政治的な不安定は生産に影響します。

 リビアの1日あたり180万バレルの石油産出量は2つのカテゴリーに分けられます。第一は、国の西端の盆地から出て、トリポリのすぐ西にある単一の主要拠点から輸出されます。第二の盆地は国の東部地域にあり、東部都市にある様々な施設から輸出されます。リビアの人口は半分に別れています。ムアマル・ガダフィーの権力基地は西端のトリポリに、反対勢力は東部のベンガジに集中し、間にほとんどが何もない砂漠がある、幅600kmの湾があります。

 これは効果的に国に2つの政治的派閥、2つのエネルギーを産する盆地、2つの石油出荷インフラを与えます。少なくとも経済的には、長期化する対立の種は、カダフィの身に何が起こるかや彼の出国後のいかなる政治的変化に関わらず、すでに撒かれていました。リビアが内戦に向かうなら、それぞれの側は、標的となる他方の類似した収入源と共に自身の糧となる収入源を持つことになるでしょう。今のところ、エネルギー区域へはいかなる攻撃もありませんが、公然で暗黙の安定性への脅威は、リビアで操業する国際的な石油会社の大半がスタッフを引き揚げさせるのに十分でした。

 こうしたスタッフは重要です。650万人というリビアの極めて小さな人口は、合理的な大きさのエネルギー区域を運営するのに必要な大量のテクノクラートとエンジニアを生み出せません。外国企業それ自体は、ほとんどの投資と重労働のすべてを行います。リビア人は無能力ではありませんが、彼らの技術と労働力が十分なものであり、そうでないとしても、政治的な不安定が多くの労働者を自宅に置いたままにします。過去24時間以内に、我々は産出における最初の減少を見ました。約100,000バレルが現在閉鎖中で、もっと多くがあとに続くことは確実です。

 これはイタリアのエネルギーメジャーENIにとって最大の問題です。ENIのリビアとの関係はローマのそれを反映しています。文字通りローマ帝国時代以来、いまリビアで起きていることに影響を及ぼしてきました。ENIは1959年のエネルギー産業の夜明け以来、北アフリカ諸国に実働部隊を置いており、その活動の規模を縮小することはありませんでした。様々な軍閥がカダフィを支援したために米企業が去り、リビア人の工作員が1988年にパンナム103便を墜落させ、270人を殺した後で国連とアメリカが制裁を科した時、1980年代にリビアが西欧から排斥された暗黒の日々ですら、ENIは採掘していました。ENIそれ自体は、リビアで約250,000バレルを産出し、それはイタリア企業が世界中で産出する15%になります。それはまた、パイプラインで送られる安価な天然ガス輸出に続く主要なパワーでもあります。

 ENIは部分的には国営企業で、そのために非効率の影響を受け勝ちで、技術的な問題に立ち向かう傾向がありません。ENIそれ自体は、他者が設けた合意を除くと、新しいエネルギー源をまったく確保できずにきました。驚きではありませんが、その市場占有率は、より熟練した民間の挑戦者エジソン社(Edison)によって浸食されてきました。合計すると、イタリアは年間約60bcm(約600億立方メートル)の天然ガスが、国の天然ガス不足に及ぶことを知らなければなりません。カダフィのような人物と手を結ぶという欠陥に関わらず、リビアは約11bcmを供給でき、ローマの中央政府の完全な支援を受けたENIはそのすべてを手に入れます。ENIを介して、イタリアはリビアで単一の最大の石油消費者で、その他の大半はヨーロッパの他の場所です。

 安全の懸念、供給の中断、あるいは終始一貫してカダフィに利用された企業を好意的に見ないトリポリの新政府によって、ENIがリビアのエネルギーへのアクセスを失うかどうかに関わらず、大きなリスクと小さな好機がENIとリビアとの将来の関係の行方にあります。(以上)

 他に、毎日新聞が地元住民への取材から、外人部隊はリビア軍の戦闘服を着て、カダフィ氏のシンボルカラーである緑のスカーフを首に巻いていると報じています。(兵士が)住民の尋問に答えた国籍は、ニジェール、モーリタニア、ギニア、ジンバブエ、ガーナ、ソマリアなどさまざまで、モーリタニアの民間軍事会社のカードを所持していた雇い兵もいた。「日当2000〜3000ドル(約16万〜24万円)と白状した」との情報もあるとのことです。


 昨日は記事を更新できずに申し訳ありませんでした。本日掲載したのは昨日掲載しようとしていた記事です。

 ぜひ記事にリンクされた地図を見てください。ここにはリビアの未来が見えます(地図への直接リンクはこちら)。

 天然資源を産する場所は東西に完全に分離していて、東部の産出量は西部(カダフィの拠点)の2倍以上です。ここから、内乱が長期化すれば、リビアは東リビアと西リビアに分割され、天然資源を多く持つ東リビアが西リビアを席巻する可能性が出てきます。地政学的に見て、カダフィ大佐の未来は極めて悲観的だと言わざるを得ません。

 国際的にリビア政府批判が吹き荒れている中で、イタリアがカダフィ支援のためにイタリア軍を派遣することは論外です。まして、ベルルスコーニ首相は少女買春疑惑の渦中にあり、どんな決断もできそうにありません。

 カダフィ大佐が外人部隊を使ったのは失敗でした。私が外人部隊に注目したのは、彼らが元々リビア軍に設置されていた外人部隊ではなく、民間軍事会社に雇われた可能性があると考えたためですが、それは毎日新聞の記事でも明らかになりました。これにより政府職員や閣僚から辞任する者が相次ぎ、国軍が離反しつつあるのです。

 アフリカは再び傭兵の市場となりつつあり、それが政治に大きく介在するようになる可能性があります。リビアの例は単純な雇用関係ですが、いずれは国家単位での政治に大きく関わるかも知れません。

 この中東や北アフリカの動乱は、将来的にはアフリカ全体の民主化に影響を与えうる壮大な規模を潜在的に抱えています。ひょっとすると、これは世界史の上で大きな変化の前兆なのかも知れません。

 記事には、リビアの住民が携帯電話で撮影した外人部隊の兵士の映像を記者に見せたと書かれています。こうした映像はインターネットに掲載されるなどして、世界中で見られるようになります。このように携帯電話のカメラ機能が、第三世界の動乱で大きな影響力を与えていることがはっきりと分かります。

 以下はそうした映像の一例です。死体など、気分を害する映像が含まれるものもありますから、見たくない方は再生しないでください。



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