兵士のセラピストがストーカーに変身

2011.2.2


 重要な軍事問題とは言えませんが、米軍ではこんなおかしな事件もあるということを実感する出来事を紹介します。日本の軍事メディアはこうした話題をまず取り上げません。

 military.comによれば、フォート・リレー基地(Fort Riley)にあるアーウィン陸軍地区病院(Irwin Army Community Hospital)に勤務する臨床ソーシャルワーカーのレイチェル・サンチャゴ(Rachelle Santiago)は、自分がPTSDの相談を受けていた軍曹にストーカー行為を行って刑事告訴されました。彼女は警察車両の追跡を逃れようとしたことでも告訴されました。

 サンチャゴの弁護士のコメントは、悪天候で国選弁護士事務所が閉鎖されたために得られていません。

 同基地の第78憲兵分遣隊の特別捜査官、リサ・メドラノ(Lisa Medrano)が提出した宣誓供述書は、セラピストから嫌がらせ、ストーキング、猥褻な行為を受けたという、先週出された軍曹の訴えについての彼女の調査を詳述しました。性的な虐待の犠牲者であるため、AP通信は軍曹の名前を伏せています。

 軍曹が捜査官に述べたところでは、カウンセリングは12月に始まり、最初のセッションはうまく行きました。しかし、1月22日にサンチャゴは彼の体をまさぐり、彼とセックスがしたいと言いました。彼はバカな事には応じられないと言って、帰りました。

 翌日、彼はピンクのランジェリーの写真を含む、15通の電子メールと電話の着信を受け取りました。彼はメールを送ったり、電話をかけないように返信しました。それはもっと多くのメールを生んだだけでした。

 1月23日、軍曹と彼の妻は、誰かがドアベルを鳴らして立ち去った後で、雪の上にドアにつながる足跡を見つけました。セラピストの車の特徴に合致する車が家に隣接しているのが見えました。

 彼は彼女に、電話や電子メール、嫌がらせを止めるよう頼むために、「バーガーキング」で会うように求めました。彼女は彼に「御主人様へ」と表書きした白い封筒を渡しました。彼は開封せず、それを返しました。サンチャゴは彼女の結婚指輪を外し、軍曹は今は「私の男」だと言いました。

 1月24日、軍曹は上官に相談し、問題を報告するよう助言されました。家に帰ると、軍曹と彼の妻は、彼の家の外で、セラピストが彼女の車の中に座っているのを見ました。

 軍曹は捜査官に、彼が彼女に会いに来ないなら、彼の子どもたちが通う託児所や彼の妻の勤務先に行き、彼らを傷つけるとセラピストが言ったため、家族が危険だと思いました。

 電子メールは次第に脅迫を増しました。「私はあなたを傷つけたくないの。あなたは私を傷つけてるわ」「あなたをメチャクチャにする。それがあなたの男の子を守るたった一つの方法よ」「私と話しに来なければ、日曜日にまでに6つの方法であなたの世界を奪う。私がそうする力を見くびらないで」「あなたは最高の女を望んでる。私はあなたの最高の女になるわ」。

 1月25日、サンチャゴはフォート・リレー基地への進入を禁じられましたが、その後、彼女は進入を試み、不法侵入のために裁判所の召喚状を発行されました。

 翌日、彼女は別の入り口を高速で突っ切りました。憲兵隊は時速110マイルに達する、1時間に及ぶ追跡を始めました。警察は後退し、最終的に彼女が止まるまで、安全な距離で追跡しました。

 家族はギアリー地区病院(the Geary Community Hospital)に移送され、警察の警護下に置かれました。彼女のは検査室の壁の物を引きちぎったので、監禁しなければなりませんでした。救急処置室のスタッフは、彼女は完全に自制を失い、躁病で、品位を失い、妄想を持ち、悲鳴を上げ、怒鳴り、カートの周りを連打していたと言いました。

 4時間後、彼女は治療のためにオサワトミー州立病院(Osawatomie State Mental Hospital)に移送されました。同病院の医師は彼女が呼吸と気管支の障害で処方されていたステロイド薬の過剰服用による「精神崩壊」としました。

 同じ日、軍曹は彼の車の座席の下に「御主人様へ」と表にプリントされた封筒を見つけました。封筒は証拠として押収され、開封されました。中には、彼女の彼に対する愛の宣言を自筆で書いたカードが入っていました。サンチャゴは軍曹に、香水を染み込ませたパンティ2枚も残しました。


 この事件はステロイド薬の影響で引き起こされたと思いたいです。カーチェイス以降のサンチャゴの行動は明らかに異常です。ストーカー行為自体も薬の影響でやったのならば、彼女にも情状酌量の余地があります。しかし、ストーカー行為が成就しないので自暴自棄になり、薬を大量に飲んで事件を引き起こしたのなら罪は重大です。多分、警察はそこを明確にしようとするでしょう。

 かねがね、私は軍隊や軍人、軍属を神聖化する考え方に反対してきました。インターネットでそのような発言を見ると、何とも情けない気持ちになります。そうした意見はあまりにも幼稚だからです。軍隊で働く人たちも普通の人間であり、そういう視点で見ないと、客観的な考えはできません。

 インターネットのおかげで、こうした事件も容易に知れるようになりました。かつては米軍については活字しか情報がありませんでした。国内報道は量が少なく、報じられる内容にも制限がありました。いまは、米軍基地内で十代の少女が死体で発見されても、すぐに知ることができます。

 おそらく、他の国でも状況は同じでしょう。しかし、アメリカほど情報は多くは流れません。こうした情報の格差は解消されることが望ましいのです。軍隊に関する神話も、それが実現すれば、少しは和らぐと考えたいです。



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