元シールズ隊員の本を米軍が批判

2011.11.16


 military.comによれば、米軍はオサマ・ビン・ラディンを殺害した実話を描いたと主張する元海軍シールズ隊員の本を非難しています。

 米特殊作戦軍広報官、ティム・ナイ大佐(Col. Tim Nye)は「それは真実ではありません」と言いました。

 陰謀説とオバマ大統領のホワイトハウスへの攻撃でいっぱいのチャック・ファーラー(Chuck Pfarrer)の「SEAL Target Geronimo」は、政府の説明とは別のバージョンを主張します。

 ファーラーはホワイトハウスがシールズの外観を不適切にする虚構で有害な報告を出したと主張します。彼はオバマ大統領が急襲をすばやく承認したことは、急襲のために集められた情報のほとんどを無駄にしたことを示す臆病な政治的な動きであったと言います。

 この本は先週、アマゾンのトップ20になり、ファーラーは宣伝のためにFox NewsやCNNやその他の場に現れました。

 「私の側に真実があります」とファーラーはAP通信とのインタビューで言いました。「私は現場に入った者と2番目の鳥(航空機)に乗っていた者たちと話しました」と彼は言い、第1のチームがパキスタン領内で攻撃を受けた場合、救援するためにそこにいた第2のシールズ・チームを満載した航空機に言及しました。

 「これはすべて作り事です」とナイ大佐は反論し、今年夏に特殊作戦の指揮を執った海軍シールズのビル・マクラベン大将(Adm. Bill McRaven)の代理として公式に否定しました。ナイ大佐は、この本がアメリカ人が事件の政府の説明に疑問を持つことを懸念していると言いました。

 ナイ大佐は、come forwardがこの任務に関係するどの兵士とも接触しなかったと言いました。大佐はファーラーの説明は間違いが多すぎるので、シールズ隊員がファーラーを話したかは調査しないと言いました。

 ファーラーはホワイトハウスが急襲直後に墜落し、地元のパキスタン人が墜落音を聞いたと報告したステルス・ヘリコプターは、実際には後で墜落したと主張します。彼はシールズは計画通りに襲撃を開始できて、別のチームが下から殺到する間に建物の屋上に着地したと言います。ファーラーはビン・ラディン作戦の英雄を讃えるための愛国的な方法だとして、この本を擁護しました。彼は儲けは、大腸癌との長く、負けつつある戦いの医療費を辛うじてまかなうと主張しました。血色のよい顔と太い胴回りは病気と矛盾しますが、親しみを感じさせるファーラーはいまや癌は肺に広がっていると言います。

 ファーラーは、彼がまだシールズのネットワークの一部だと主張し、彼がビン・ラディン急襲の準備の一角だったとさえほのめかします。「ネプチューンの槍作戦(ビン・ラディン作戦の暗号名)」に先立つ日々、並行するHVT(high-value target: 高価値の目標)任務を提案し、実行するために、兵士と小隊の訓練を支援することは私の栄誉でした」とファーラーは書きます。「それはまったく間違っている」とナイ大佐は言いました。「彼は任務立案、実行や任務の詳細版分析に関与しませんでした」。急襲について知る匿名の軍高官2人は、その否定を支持しました。

 ファーラーは、自分が彼の民間軍事会社「Acme Ballistics」を通じてチーム6の親組織、海軍特殊作戦軍の訓練を行っていたと言って、その批判を逸らしました。彼は契約が機密のために、そうした訓練がどれほど急襲に関連していたかを言うのを拒否しました。記事は彼だけが接触できるトップシークレットであり、読者は彼の言葉を信用しなければならないとは、証拠を求められた時のファーラーの常套句です。

 しかし、公の情報に関する彼の記述は多くが間違っています。たとえば、オバマ大統領がマクラベン大将を今年4月にシールズから米統合特殊作戦軍(JSOC)の指揮官にしたと書いています。マクラベンは実際には2008年にこのポストにブッシュ大統領によって任命されました。彼は陸軍特殊部第グリーンベレーは1952年ではなく1962年に創設されたと述べています。米特殊作戦軍が有名な1970年のベトナムのソン・タイ襲撃のリハーサルをした時、彼らはネブラスカ州のオファットではなく、フロリダ州のイグリン空軍基地で訓練を受けました。そして、2006年に無人攻撃機ではなく、ジェット機がイラクのアルカイダ指導者、アブ・ムサブ・ザルカウィ(Abu Musab al Zarqawi)を殺害しました。

 何人かの特殊作戦指揮官がファーラーが最大に誤解した、最悪の不正な儲けを得る自己宣伝者だと言うために名乗りを上げました。「衝撃、憤激、失望という反応です」とシールズのジョージ・ワシントン少将(Rear Adm. George Worthington)は言いました。「これはまったく特殊作戦のコミュニティが必要としないものです」と、ファーラーと同時代に最精鋭部隊を指揮したシールズ退役大尉、リック・ウーラード(Capt. Rick Woolard)は言いました。

 ファーラーは約8年間のシールズでの経験を含めて20年間の軍歴があります。1980年代後半に大尉で退官し、1990年の「ネイビーシールズ」の脚本を共同執筆しました。シールズに関する2冊の本がそれに続きました。彼の最近の本は所属部隊と共に彼の軍歴を追跡し、急襲に関する2つの章を仕上げました。それはシールズの襲撃者の非現実的な説明を含みます。「部屋に突入した時、シールズは悟りー覚醒した禅の意識のような状態になります」とファーラーは書きました。「シールズの感覚すべては研ぎ澄まされます」。


 軍事的な意味合いは薄いものの、非常に奇妙な出来事なので紹介しました。

 彼の主張を検討するまでもなく、癌に冒されているのに、まったく痩せていない身体がすべてを物語っているように思われます。単行本というものは数が売れれば大きな利益を生みます。反対に、関心を持つ人が少ないテーマを書くと、やはり売れないし、そもそも出版という話にならないわけです。そこで、何を考える人が出てくるかというと、面白そうな話をでっち上げて、売り上げだけを稼ぐことです。シールズ経験者にとって、今一番稼ぐのはビン・ラディン襲撃の本というわけです。

 これが小説のような虚構作品なら問題はないのですが、ドキュメンタリーとして書けば嘘となります。私は常に虚構作品とドキュメンタリー作品の文章は、性質がまったく異なると考えています。日本の新聞は文学的な表現を使うことを好み、反面、事実関係の裏付けが弱い書き方を続けていて、虚構とドキュメンタリーの区別がつかない人もいます。

 最近、巨人軍の内紛が報じられていますが、「読売新聞グループ本社代表取締役会長・主筆」という肩書きを持つ渡邉恒雄氏が巨人軍代表の清武英利に対する反論として12日に発表した談話の文章が、85歳のトップリーダーとは思えないほど子供っぽかったことに、これが日本の報道界の指導者の文章かと私はショックを受けました。しかし、これも自然なことで、文学とドキュメンタリーの混在は、日本のメディアに広く見られることです。このため、日本では虚構をドキュメンタリーとして書いた本が大ヒットしたこともあります。

 もしかすると、この本が日本で翻訳出版されることがあるかも知れません。その際は要注意です。



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