退役軍人グループも占拠抗議活動に参加

2011.11.10


 military.comが退役軍人グループが占拠抗議活動に参加している様子を報じました。

 退役軍人は2ヶ所の野営地を設立し、テントの整頓された並びからして、その背景に軍事的な計画があったのは明らかです。大型の白いテントは明らかに応急処置を示していました。人々が食事を出来る食堂用テントもあり、露営地の中心を大通りのように走るコンクリートの道はすべて整頓されていました。

 「『Veterans for Peace』が主催者で、我々は少し歳を取っています」と元海兵砲兵隊員でベトナム帰還兵のビル・ミニッティ(Bill Miniutti)は言いました。彼は10月のはじめに抗議するためにフロリダのジャクソンビルから来ましたが、「Veterans for Peace」のキャンプはさらに先に遡ります。「彼らはウォール街(占拠)のずっと前、3月から実際に活動しています」。「我々は携帯トイレを実際に持っていて、我々年寄りにはそれが必要です」と彼は冗談を言いました。

 退役軍人グループはしばらくの間、反戦活動を行っていましたが、戦争が国家の負債、貧困、保健医療費、政府に対する共同した影響力につながっていることを説明する必要があると感じました。

 『Veterans for Peace』は警察と良好な関係を持っているとミニッティは言いました。「我々は警察と戦うためにここにいるのではありません…我々は老人です。我々は建物に火をつけません。我々は政府を信じているこれらの団体と話をしたいのです」と1969〜1970年にベトナムのゴイ・リン(Goi Linh)で第3海兵師団第5砲兵隊(175mm自走加農砲)にいたミニッティは言いました。ミニッティは約50人の退役軍人が抗議に参加していますが、この数字はカレンダーと参加者の仕事の予定によって変わります。彼は一部の現役兵が私服で参加するのを見たと言いました。

 『Veterans for Peace』の暫定代表、マイク・フェルナー(Mike Ferner)は退役軍人は「占拠」事件に、特にオークラントで2人の退役軍人が負傷してからは特に強く注目していると言いました(過去の記事はこちら)。「国中で(占拠抗議活動)に関心を持つ沢山の退役軍人がいます」と元海兵隊軍曹のシェーマー・トーマス(Shamar Thomas)は言いました。彼のニューヨークの警察官との対決はカメラで撮影されYouTubeで世界中に放送されました。「数日前、2百人の退役軍人がニューヨーク市を行進しました」と彼は言いました。トーマスは少なくとも3人を行進に参加させたと言いました。

 しかし、退役軍人が国家的な占拠抗議活動に果たす役割についてはいくつもの疑問があります。半数はオンラインで、指導者のいない運動は、正確にどれだけの退役軍人がそれに貢献しているかの独自の感覚を持つことを難しくします。

 たとえば、大勢の海兵隊員がいると主張する「OccupyMarines」と呼ばれるインターネット・グループを取り上げます。この組織の詳細は不足しており、グループ自体が質問に答えようとしません。担当者としてトーマスをあげました。彼はこのグループとは誰かと一度だけ電話で話しただけで、それがより大きな実態にどう合致するのかは分からないと言いました。別のグループ「Iraq Veterans Against the War」も「OccupyOMC」としても知られる「OccupyMarines」を調査しようとして失敗したと、同グループの上級理事のホセ・バスケス(Jose Vasquez)は言いました。「我々は注意深く進んでいます」と彼は言いました。「我々は(OccupyOMCが)退役軍人グループかどうかすら分かりません。民間組織かも知れません」。国中の沢山の「占拠」キャンプがこの種の不確実性を増し、グループの沢山の立場にいるほとんどの現役兵や退役軍人がいる場所を評価するのをさらに難しくしています。トーマスは彼は「OccupyOMC」のメンバーではなく、どこの組織にも属していないと言いました。「私は、信条に関係なく(現役兵と退役軍人を)守らなければならないと言うだけで、政治的な立場を取っていません」。

 ワシントンでは、ミニッティはイラクとアフガニスタンの戦争が彼をフリーダム・プラザの野営地に連れてきたものだと言いました。彼はこれ以前は行動主義に不慣れでした。彼は40年前、彼がジョン・ケリー(John Kerry)という元海軍将校(現在はマサチューセッツ選出の上院議員)と共にワシントン特別区にいました。彼と大勢の人たちはベトナム戦争に反対しました。しかしその後、ミニッティは嫌なことは忘れて、電話会社で働き、後にいくつかの大企業のために働きました。これは彼に「占拠」運動の中心的な焦点である裕福なエリートの視点を与えました。しかし、彼は常にその外側に取り残されたと言いました。「私は1パーセントと共に働いたけども、1パーセントでは決してありませんでした」。それは、十年間継続した戦争の後、ベトナムの不快な反響と共に、彼に再び出かけて、立場を支持しなければならないと考えさせました。「私は自分が崖の端に立つタビネズミみたいに感じました」と彼は言いました。そして、私の隣の男は「君がジャンプしなければ、君の前にジャンプしたすべての兵士の名を汚してしまう」と言いました。


 記事は一部省略しています。

 正直なところ驚きました。占拠抗議活動への退役軍人の関心が気になると書いた途端にこの記事です。この動きに注目するのは、アメリカで退役軍人たちが怒り出すと、それは大きな動きになる場合が多いからです。オバマ政権誕生にも、ブッシュ政権の対テロ政策に対する退役軍人の怒りが関係しました。これはオバマ政権に対して、思い切った経済政策をとるよう強い圧力となり得ます。

 現役兵が私服で抗議活動に参加しているのは、軍の中立を守るために、制服を着用して政治活動に参加することを禁じる軍規があるためです。規則を守った上で抗議しているわけです。 退役軍人にはこうした制約がありません。

 このように、インターネットを通じた抗議活動は、今後の世界の一つの潮流となります。北アフリカと中東、アメリカで似たような形式での抗議活動が起きている点が興味深く感じられます。残念ながら、日本では同種の抗議活動としては、いまのところ「フジテレビの韓流中心の放送に抗議する」という無意味な出来事しか起きていません。

 インターネットを使った抗議活動は、組織立っていない点が特徴です。「OccupyMarines」と「OccupyOMC」をネットで検索すると同じアドレスに辿り着きます。こうした不可解なグループもあるでしょうが、退役軍人の参加規模は是非とも明らかにして欲しいところです。

 この運動には大きな期待がかけられます。 

 大衆の不満が一定限度まで大きくなると、インターネットで呼び掛けることで大きな抗議活動が可能になるのです。運動を形にするには、最終的には組織を作らなければならないわけですが、そこで対立が起きて、運動を台無しにすることもあります。そうした失敗が起きず、当初の目的を達成できるようなら、これは新しい世界のツールとして存続していくことになります。つまり、新しい政治のツールとなるのです。これはひょっとすると、新しい平和追求のツールとなるかも知れません。たとえば、戦争になりそうな二国の国民が同時に協調した反戦運動を起こせば、両国の政府は戦争に踏み切れないでしょう。もはや、ラジオしか通信の手段がないという時代ではないのです。姿が見えず、謎の多い敵の攻撃に備えるという、過去に数知れず繰り返された愚行を防げるかも知れないのです。これは大いに研究すべきテーマだと言えます。



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