アウラキ殺害の政治的プロセス

2011.10.7


 military.comによれば、中堅の国家安全保障当局者の秘密委員会は、最終的承認を得るためにホワイトハウスに送られる、アメリカ国民を掲載できる「殺害もしくは拘束」リストを確立していました。

 委員会の勧告はまず、国家安全保障会議の長(閣僚と情報機関の長官)を経由して大統領に届きます。

 無人攻撃機に殺害されたアメリカ生まれのアンワル・アル・アウラキ(Anwar al-Awlaki)はこの方法で殺害が承認されました。ホワイトハウス広報官、トミー・ビーター(Tommy Vietor)はコメントを拒否しました。

 委員会の作業に公的な記録はなく、法律は実質的に制定されておらず、その機能は説明されていません。

 アル・アウラキの死は過激派の指導者を見つけて殺すアメリカの決定と能力として広く称賛されましたが、政府が適法な手続きなしに、アメリカ市民の裁判官と陪審員、処刑人を務める権利はないと信じる市民的自由の擁護者の怒りと懸念を招きました。

 保守派すらオバマ大統領のブッシュ大統領がテロ容疑者を尋問するのに拷問を誓ったことを非難したことを思い起こして、偽善と攻撃しました。

 大統領候補者である共和党のロン・ポール下院議員(Rep. Ron Paul)は、アル・アウラキ暗殺でオバマ政権を批判するのにすばやく、こうした殺害にアメリカ市民が抵抗しないなら、ナショナル・プレス・クラブで報道記者も暗殺リストに載ることになる可能性があると言いました。


 記事から重要な部分を取り出しました。

 決定プロセスは常識的に見て、これ以外には考えられません。この記事が面白いのが、これを誰が言ったのかについて何も書かれていないことです。普通なら「機密について話す権限を与えられていないので匿名を希望した情報当局者」といった情報筋を示す文言があるのですが、この記事については見当たりません。しかし内容からして、CIA長官とか国務長官レベルの高官から出された情報でしょう。アル・アウラキ殺害に関する批判を避ける狙いで、大統領の許可の下にリークされたのだと考えられます。この辺がアメリカ政治のグレーゾーンと言えます。敵が多いので、何もかもクリーンに運ぶことはできないのです。アメリカには他国に比べると、より高潔な政治を望む国民性がありますが、すべて理想的には行きません。アメリカ以外の国、たとえば日本がそうしたアメリカが弱い面をカバーできればよいのですが、日本の政界と官界はアメリカの指示に従うことにしか関心がありません。このため、アメリカは常に救われない孤軍奮闘をする傾向にあります。



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