イラクとアフガンで米人の汚職が増加

2011.10.31
追加 同日 17:25


 military.comによれば、イラクに派遣された海兵隊員が密輸などで摘発される事件が増えています。

 あるイラクの海兵隊員は盗んだ金43,000ドルをアメリカ国旗の小型トランクの中に隠して本国に送りました。ある兵士は数千ドルを動物のぬいぐるみに入れて送り、大使館職員は国務省を騙して、240,000ドルを外国の銀行口座に送金させました。

 土曜日に公表された2つの政府報告書によれば、イラクとアフガニスタンの戦争が次第に静まり、両国で贈収賄、窃盗、その他の再建関連の犯罪で起訴されて、有罪判決を下される人たちが急増していると言います。

 「これは我々にとって好況産業です」とイラク再建特別監査官(Special Inspector General for Iraq Reconstructio: SIGIR)と言いました。

 アフガン再建特別監査官(Special Inspector General for Afghanistan Reconstruction: SIGAR)のスティーブン・トレント(Steven Trent)「捜査官と監査官は有益な四半期を得ました」と、アフガン支援の窃盗に関する報告書は言いました。報告書は8月〜10月を網羅しています。

 過去13ヶ月、イラクでの米調査官は支援関係の罪の容疑で22人の告発を受け、これはSIGIRが2004年に創設されてから合計69件に至らせました。有罪判決は57人です。数百人以上の容疑者が102件の公開捜査で調査中で、数字は上昇するとみられています。

 取扱件数の増大は部分的に調査の副産物から来ており、起訴に直面した容疑者が別の容疑者への調査を引き出すのだと、SIGIRの副監察官、ジョン・ノヴァク(Jon Novak)は言いました。「協力者を裏切る者たちが増えています」と彼は言いました。

 捜査官が経験を積んだため、彼らはイラクの成長する情報ネットワークからよりよい情報を得られるようになったと、ノヴァクの副官、ダン・ウィルキンス(Dan Willkens)は言いました。捜査官向けの自動化されたデータマイニングシステムと、2年前に迅速な訴追のために3人の元米司法次官補を雇い、彼らに司法省に派遣させたことが助けになったと彼は言いました。

 アフガン再建監察官は2008年に創設され、これまでに9件の告発と7件の有罪判決しか報告していませんでした。さらに、トレントは最後の四半期にSIGARが着手した捜査が十年のアフガン戦最大の汚職事件を捉えたと報告しました。元退役陸軍予備役大尉、シドハース・トニー・ハンダ(Sidharth "Tony" Handa)は再建プロジェクトの請負業者から130万ドルを要求した件で有罪判決を受けて、禁固刑を科されました。

 アメリカの捜査が解明した二つの戦争の犯罪のほとんどは、収賄、リベート、窃盗です。

 エリック・ハミルトン1等軍曹(Gunnery Sgt. Eric Hamilton)は、イラク人請負業者が海兵隊員に電気を供給するための発電機70台を盗むのを手伝った件で有罪を認めました。彼は分け前の一部をトランクで家に送り、その他は送金していました。

 米政府の職員数名は、契約を地元の共謀者に流すためと内部情報を契約で競合する者たちに与えるためにリベートを受け取りました。氏名不詳の元陸軍軍曹は、現金12,000ドル以上を着服して起訴されました。この現金は別の軍曹が盗み、動物の縫いぐるみに入れてカルフォルニアに送ったと伝えられます。

 ヨルダン国籍で米大使館職員、オサマ・イザム・サリーム・アイエシュ(Osama Esam Saleem Ayesh)は、約240,000ドルを盗んで有罪判決を受けました。この金は国務省の職員が家財道具を運ぶ時にかかる輸送費と通関手数料をまかなうためのものでした。金はアイエシュのヨルダンにある口座に送られました。

 再建プロジェクトから盗まれた金は自宅への手紙に入れたり、防弾ベストに詰めて送られました。一万ドルがサンタクロースの服に縫い込まれたこともあります。

 検察官は金の一部を取り戻しました。8,300万ドル以上が9月末に終わる会計年度中にイラクでの事件から取り戻され、7年以上で取り戻した金額を1億5,500万にしました。SIGARは昨年、5,100万ドルを取り戻しました。 しかし、取り戻した総額は2つの戦域から盗まれた金のごく一部と考えられています。

 アメリカはイラク再建に620億ドル、アフガン再建に720億ドルを投入しました。

 8月に、戦時契約に関する独立委員会は、少なくとも310億ドルがイラクとアフガンで浪費と詐欺で失われ、総計は600億ドルに達する可能性があると見積もりました。再建費用ではないものの、同盟軍の補給と保安機能の能力のために2,060億ドルがかかりました。

 委員会は2,060億ドルの10〜20%が浪費され、詐欺が別の5〜9%の損失を占めることを見いだしました。


 先に予告したとおり、最初に掲載しなかった後半も掲載しました。

 戦争の背後では、国を問わず、必ずこういう犯罪が進行します。そして、こうしたことに目を向ける人たちはほとんどいません。危機的状況であるほど、人々は軍隊に期待を向け、犯罪の温床を作ろうとしていることに気がつきません。

 軍事費や国際的支援の費用はその美名の故に、チェックが甘くなり、そこに汚職がカビのように広がるのです。イラク侵攻直後にも,こうした問題が露見し、大金がどこかへと消えました。そして、戦争が落ち着いた今、また事件が増えているのです。

 安直に軍隊を海外に派遣しようという人たちは、こうした問題にも目を向けなければなりません。自衛隊の南スーダン派遣と聞いて、日の丸を振りたくなるような単純な頭では、こうした犯罪を防止できないということです。



Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.