マレーシア軍も人質を救出

2011.1.25


 military.comによれば、王立マレーシア海軍もソマリアの海賊が乗っ取った船を急襲し、人質を解放しました。

 マレーシア海軍の特殊部隊は金曜日早くにマレーシア船籍の化学タンカー「MT ブンガ・ローレル(MT Bunga Laurel)」上で、銃撃戦により海賊3人を負傷させ、乗員23人を救出しました。急襲はアデン湾で海賊が拳銃とライフル銃で船を襲った直後に行われました。

 マレーシア海軍は船1隻とヘリコプター1機をブンガ・ローレルへ派遣しました。同船は金曜日の朝に乗員が避難所に自分たちを閉じ込め、救難信号を発信したあと14マイル(22km)移動していました。救出隊と乗員に負傷者はいません。

 海賊7人が拘束され、当局は彼らを裁判のためにマレーシアに連れてくるかどうかを検討しています。

 攻撃は、護衛の艦船が比較的安全な水域にブンガ・ローレルを送り届けた僅か2時間後に起こりました。

 なお、この記事には韓国軍の救出作戦の続報も載っています。海賊に乗っ取られた貨物船のソク・ヘギュン船長(Seok Hae-gyun)はオマーンの病院で治療を受けています。

 ソク船長は海賊が船をソマリアへ向かわせようとした後、時間を稼ぐために梶をジグザグに切り、救出作戦を助けました。


 マレーシア海軍の急襲は乗員全員が避難所にいることが分かっていたので、比較的やりやすかったと考えられます。しかし、韓国船の事件はそうではありません。朝鮮日報の記事を読むと、船員は艦橋に監禁されていました。

 つまり、船内と韓国海軍は何らかの方法で連絡が取れていたことになります。前回、それに関連するは公開されないだろうと私は書きましたが、朝鮮日報が今日までにすべて報じてしまいました。

 作戦成功のポイントは、ソク船長の超人的、英雄的な行動です。彼はエンジンオイルに水を混ぜたり、ソマリアとは反対方向に向かったり、無線で船内の様子を朝鮮語で話して、韓国軍に情報を伝えました。

 そのためにソク船長は、突入の際、激怒した海賊に撃たれて重傷を負ったのです。当初報じられたような、命に別状のない軽傷ではありません。銃創のほか、腕と脚に骨折もあり、かなりの暴行を受けたと考えるべきです。ソク船長がやったような行動は思いつきではできません。私は、ソク船長は日頃から海賊が乗り込んできた場合の対策を練っており、それを実行したと推測します。韓国政府はソク船長の表彰を検討しなければなりません。

 韓国では、作戦を撮影した写真を公開したことが、今後の作戦の支障になるという批判が出ているようですが、私が見た範囲では、それほど問題ではありません。むしろ、作戦の中身をかなり詳しく書いている朝鮮日報の記事の方が問題だと感じます。

 また、産経新聞が「すっとした」という韓国人の反応を報じています。ごく一部の反応とは思いますが、これは非常に気になります。北朝鮮による天安撃沈や延坪島砲撃で傷ついたプライドが回復したことによる意見でしょうが、軍事行動は爽快感のために行われるものではありません。規模の大きな戦争は不愉快なことの連続です。平時とは比べものにならないほど、物事はうまく行かなくなります。そういう中で冷静な判断をしていかなければならないのが戦争です。それをかんがえれば、こんなセリフは出てきてはいけないのです。

 今後、海賊の裁判をどうするかという問題が必ず出てきます。過去の忌まわしい海賊への厳罰を考えれば、文明人らしい裁判が行われなければなりません。そうした努力に両国が神経を集中することを願います。



Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.