BW社創業者がソマリア軍の訓練に関与

2011.1.22
追加 同日 11:45

 military.comによれば、ブラックウォーター社(Blackwater Worldwide: 現在のXe Services)の創業者エリック・プリンス(Erik Prince)が、ソマリア軍の訓練を行っていることが分かりました。

 この計画に詳しい人物とAP通信が確認した情報によると、プリンスはアフリカの沿岸に脅威を与える海賊と戦うために約2,000人のソマリ人志願者を動員するという、アラブ首長国連邦を含む数カ国のアラブ諸国が資金を提供する高額の計画に関与しています。

 プリンスへのインタビュー申込みに対し、彼の広報マーク・コラロ(Mark Corallo)は電子メールで、ブラックウォーター社の創業者が「ソマリアが海賊による害を克服するのを助けること」に関心を持っており、彼は対海賊活動に助言してきたと答えました。コラロ氏はプリンスはこの計画で資金援助はしておらず、プリンスの関与に関するいかなる質問への回答を拒否しました。

 プリンスの役割は軍事請負業者の使用に関する疑問を再燃させます。批判者は、アルカイダにリンクした武装勢力と戦うソマリア軍の訓練と資金援助を行う国際社会の努力を台無しにするかも知れないと言います。ヨーロッパ連合は約2,000人のソマリは兵をアメリカの支援で訓練しており、8,000人のウガンダとブルンジ共和国の平和維持軍からなるアフリカ連合軍がソマリア政府を強化しています。

 ナイロビに拠点を置く「International Crisis Group」のアナリストE・J・ホジェンドーロン(E.J. Hogendoorn)は「国際社会に少しの責任しかない、戦争の民営化を見るかも知れません」と言いました。「誰がこれらの民間会社の責任を持ち、何が彼らが自分の都合で顧客を変えるのを防ぐのですか?」。

 ホジェンドーロン氏の懸念は米当局者の一部が共有しますが、民間警備会社の長は活動とプリンスの関与を歓迎しています。「34ヶ国が海賊を阻止しようと海軍資産を提供していて、それだけが地上で阻止し得るのです」と「Maritime Underwater Security Consultants」の長、ジョン・ブルネット(John Burnett)は言いました。「プリンスの経歴とむしろ傑出した評判があります。私はそれは機能する高い可能性があると考えます」。

 プリンスは現在、アラブ首長国連邦を拠点とし、すでにブラックウォーター社とは関係がありません。

 先月、AP通信はソマリアのプントランドで1,000人が対海賊部隊として訓練されていると報じました。その後、AP通信は当局者と書類からプリンスが1,000人の対海賊部隊が武装勢力が装備の乏しい政府軍と戦う首都モガディシュで計画されていることを知りました。(過去の記事はこちら

 「サラセン・インターナショナル(Saracen International)」の社長ラフラス・ルーティン(Lafras Luitingh)は、会社は海賊を急襲するために計画の秘密を守ろうとしたと言いました。彼は彼の会社が3月にソマリア政府と契約したと言いました。彼はプリンスが計画に関与しているかと彼がサラセン社の一部かを言うことを拒否しました。

 契約のあと、新しいソマリア政府が政権をとると、サラセン社やその他との取引を調査する委員会を設置したとアブドルカリーン・ジャマ情報大臣(Minister of Information Abdulkareem Jama)は言いました。彼はプリンスの関与を承知していないと言いました。国連は密かにソマリアの計画が同地域への武器輸出制限に違反していないかを調査しました。

 サラセン社はすくなくとも3社あります。1社はレバノンに登記され、ルーティンのビジネスパートナーが経営し、ウガンダに拠点を置く2社があります。同国の政府職員はAP通信に同社の登記謄本が消失したと言いました。ベイルートのAP通信の記者はソマリアの契約書にあるルーティンの会社の住所を発見できませんでした。レバノン当局はサラセン社はレバノンには住所がなく、それはアラブ首長国連邦に拠点を置くと言いました。サラセン社と共に活動する2隻の船を所有するアフロート・リージング(Afloat Leasing)は、同社がレバノンに登記されていると言いましたが、AP通信の記者はレバノンの記録にある住所で同社を発見できませんでした。

 メディアに話す権限がないので匿名を希望した元米政府当局者は、海賊を狙うかたわら、プントランドの新しい部隊はソマリアで最も恐れられる武装グループ、アル・シャバブ(al-Shabab)に武器を供給するとされる部族長を追求するだろうと言いました。ルーティンはそのような計画は聞いたことがないと言いました。

 ルーティンは議論を呼んだ1990年代にシエラレオネ、アンゴラ、パプアニューギニアの紛争に関与した南アフリカの傭兵集団「Executive Outcomes」の創立メンバーでした。彼はサラセン社は子ども兵を採用せず、定期的に新兵に給料を払い、ソマリア政府に対して法的な説明責任を負うと確約すると言いました。11月に150人の新兵のグループが訓練を終え、2番目のグループがすぐにそこでの訓練を終えます。モガディシュでの訓練はまだ始まっていません。

 サラセンは資金供給源を明かすことを拒否しました。メディアに話す権限がないために匿名を希望した計画に詳しい人物は、プリンスは対海賊訓練を監督していると言います。AP通信は、アラブ首長国連邦が資金供給者とプリンスを参加者と特定した、機密のために作者と作成当局を明かさない報告書を入手しました。いくつかの西欧治安当局者はこれらの発見は信頼できると言いました。

 一部のアメリカ当局者は、サラセン社の計画が、よりよい統治と武装勢力を打倒できる透明性のある国防訓練よりも、より多くの銃と金を後押しすることを憂慮しています。ソマリア軍は一連の腐敗した政権が兵士に給料を払えないために、脱走によって力を殺がれてきました。ヨーロッパ連合が訓練するソマリア人は100ドルの月給を与えられているとされます。匿名で語った米当局者はサラセン社は訓練中に300ドルの月給を、訓練終了後に500ドルを支払っていると言いました。これはソマリア軍から最もよく訓練された人たちを誘い出し、ソマリア政府がより高い標準に従う重荷を減らしていると米当局者は言いました。

 湾岸諸国を含む多くの国がソマリアに援助を与えています。金を与えたいくつかのアラブ諸国は、金の行き先が不明であることに気がつきましたとホジェンドーロンは言いました。それがアラブの統治者たちがサラセン計画を支持する理由ですと、彼は言いました。


 最近は民間軍事会社よりも民間警備会社と呼ばれることが増えましたが、実態は同じです。彼らは飽くことなく、自らの市場を開拓しようとしています。映画「ロボコップ」は警察の民営化を描き、当時はあり得ないことと思いましたが、現代では本当に戦争の民営化が起きています。

 ソマリア軍よりも対海賊部隊の給料がよいことが利点とは思えません。同じ問題は先進国でも起き、軍隊の優秀な人材が民間軍事会社に流出したことがありました。それはソマリア軍の質の低下を招き、ソマリア政府の活動の足を引っ張る危険があります。

 私は近未来において、民間軍事会社が小国を牛耳る恐れを予感します。なぜなら、それは彼らの出身組織である政府軍がやっていることです。たとえ、国連の平和維持活動でも、そのために用いる技術は小国を支配するための戦略と同じ場合があります。彼らは警備活動と名前を変えても、似たようなことをするのです。

 彼らと日本の警備会社を同一視するのは間違いの元です。警備会社は決まったら場所をパトロールし、異常を通報するだけです。民間軍事会社は敵の情報収集から襲撃までを行います。アフガニスタンで施設警備を請け負い、施設外での活動を禁じられていた会社が、周辺地域で夜間の待ち伏せを行っていたことが分かっています。彼らの行動は軍隊と同じです。

 軍隊も命じられたことを超えて動きたがるものです。イラクに派遣された陸上自衛隊は、周辺で外国部隊が武装勢力に襲撃されたら、駆け付けて巻き込まれるつもりだったことが分かっています。こうした軍隊の性質を示す事例は歴史上いくつもあります。

 数十年後、対海賊部隊の隊員はソマリアで実力者となっているかも知れません。彼らと外国勢力が結び付き、ソマリアを支配するような事態が想定されます。それは、アフリカにさらなる不安定化をもたらしかねません。



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