海賊の被害が過去最高に

2011.1.19


 military.comによれば、2010年に海賊の人質になった人は1,181人になり、1991年にモニターを開始してから過去最高になりました。

 クアラルンプールの国際海事局(the International Maritime Bureau)の海賊情報センターによれば、昨年、全世界で海賊は53隻を乗っ取りましたが、ソマリア沖では4隻のみでした。同局のポッテンガル・ムクンダン局長(Pottengal Mukundan)は「これらの数字が増加し続けているのは憂慮すべき」だと言いました。

 ソマリアの海賊は身代金目当てに1,016人の人質をとり、現在は船を31隻、今年別の4隻をハイジャックした時点で、様々な国の乗員713人を保持しています。

 アフリカの角にあるソマリアの位置は、海賊がその長い海賊船を船を捕獲するために使えることを意味します。1991年に独裁政権が崩壊してから、国は機能する政府を持たず、水域をパトロールする国際的な戦闘艦の艦隊は海賊を防止するために奮闘しています。

 海軍のパトロールは多くの攻撃を防ぎましたが、海賊はハイジャックをより成功させるためにさらに沖合を移動していると、海賊情報センターは言います。

 「海賊の活動を制限する海上で取られるすべての手段は、ソマリアの責任のある政府がないために損なわれています」とその声明は言います。

 全体的には昨年445件の海賊の攻撃、2009年から10%の増加がありました。8人の乗員が死亡し、すべてがソマリ人の海賊が原因でした。暴力的な攻撃と武装強盗は、30隻の船が乗り込まれたインドネシアの海域で顕著でした。バングラデシュは、チッタゴン港で主にナイフで武装した攻撃者による21隻の強盗があり、比べてナイジェリアでは大半はラゴス港の近くで13隻がありました。


 同じ発表は国内でも報道されています。共同通信はアデン湾での海賊は半減したものの、ソマリア沖では増えたと報じています。

 国際海事局のウェブサイトには、海賊事件の発生場所を見るマップがあります(マップのページはこちら)。各事件のテキストによる報告もあります(報告のページはこちら)。

 このデータベースは分析するに値します。攻撃を受けた場合でも、増速して海賊船を振り切って、攻撃を防いだ事例があります。乗り込まれた場合も、船内に設置された避難所に全乗員が逃げ込み、内部から施錠して通報した場合は誘拐を逃れています。海賊は大型船の操船はできないので、腹いせに船を破壊して逃走するのです。あとは救助が到着するのを待つだけです。時間があれば、このデータベスを分析し、何が必要で、何が必要でないかを考えてみたいと思いました。

 特に、国内報道を見ると、海賊がいるのだから何か対処をすべきだという意見ばかり見ます。そうした意見は時として性急で、不要なことまでやろうとすることすらあります。先日のゲーツ国防長官が言ったように、全世界での軍事的貢献は日本の安保理事国入りにつながるという餌に進んで飛びつきたがる人が出てくるわけです。海賊対策に必要なのは冷静な分析が生み出す戦略です。それを考えるためには、過去の事例を詳細に検討してみることが重要なのです。



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