進む女性戦闘要員の誕生

2011.1.15
修正・追加2011.1.16 14:00


 女性を戦闘部隊に配備する件で2件の記事が報じられました。まず、military.comがアフガニスタンの海兵隊員の意見を掲載しています。

 ナワ州(Nawa)のジェーカー警戒基地に配備される第3海兵連隊第2大隊のジョン・ロルフェス伍長勤務上等兵(Lance Cpl. John Rolfes)は、「我々がやらなければならないことは、とても大変です」「私は個人的にその役割を満たせた女性を1人も知りません」と言いました。

 同じ部隊のマイケル・セデノ1等軍曹(1st Sgt. Michael Cedeno)は、この提案に葛藤しています。彼は女性と共に通信部隊に勤務しており、アフガン女性と交流するために、彼が歩兵部隊に配備されるときに海兵隊の女性戦闘部隊(Female Engagement Team: FET)がすでに最前線にいることを認めました。「海兵隊員は海兵隊員です」「彼女たちは間違いなく戦士です」。今日、女性が勤務したことのない歩兵部隊にいて、彼は女性を統合する際の潜在的な問題も理解しています。「徹底的な調整をしなければなりませんでした」「物事がどうなるかを知るための試験期間のようなものが間違いなく必要です」。

 この基地の第3民生隊のファレス・モーガン少佐(Maj. Juarez Morgan)はまったく躊躇がありませんでした。「私は恐らく、この辺ではかなりのリベラル派ですが、女性…同性愛者…白人…なんであれ彼らが必要な仕事をする限り、任務を妨げない限りは大賛成です」「私は女性は他の誰とも同じように戦えるべきだと考えます。この辺にいる女性たちはすでに我々がするのを同じことにさらされています」。

 一部の海兵隊員はそれが女性には不適当な任務だと考えます。

 第2大隊のカイル・ハープスター伍長勤務上等兵(Lance Cpl. Kyle Harpster)は「私はアメリカが自分の娘を自分たちのために戦闘に送る準備ができているとは思いません」と言います。彼は戦地に派遣された海兵隊員にはほとんどプライバシーがないと言います。「こんなに狭いところで暮らします」「私にはよいアイデアだとは思えません」。

 ジョシュ・バーネシー伍長(Cpl. Josh Bernethy)は反対意見で、「女性が死ぬと、男たちは男性が死んだ時と違った反応をしそうです」と言います。

 第1機甲師団特別任務大隊のデビッド・ブラウン技術兵(Spc. David Brown)は、女性に戦闘を担わせるのは、一部の部隊で戦友愛を減らすかも知れないといいました。「彼女たちはそこに馴染みません」「邪魔になるかも知れませんし、すべての状況を取り扱えるという問題があります。彼女たちは一部の状況で重荷になります」。

 第2情報大隊のジョン・マクタイヤ技術兵(Spc. John McTyre)は、女性の戦闘を認めることは軍隊の進歩になると言いました。「我々がEO(機会均等プログラム)を持つことの証になります」「我々がEOプログラムを持つなら、最大限に活用した方がよいです。つまり、EOの完全な可能性です」。

 第1機甲師団特殊任務大隊のマシュー・シー1等軍曹(First Sgt. Matthew Shea)は同意しました。「2011年のことでした」「私は歩兵や装甲部隊の人々と並んで勤務できる陸軍に女性がいると確信します。こうした部隊と一緒に勤務する身体的な能力と力があるなら、いいんじゃないでしょうか?」。

 基地で5人ほどの女性の1人となるために、別の女性隊員や女性通訳と共にジェーカー基地にやって来た女性戦闘部隊の予備役メレディス・バーンズ3等軍曹(Sgt. Meredith Burns)も同意しました。彼女はFETのメンバーは1日に15km歩くと言いました。「それは大変ですが、男性はそれをやります」「我々はここを出て似たような仕事をします。私は男性がするのと同じことをします。私は男性がするのを同じ方法でパトロールしています」

 女性の能力は敵私的に過小評価されてきたとバーンズは言います。最初に海兵隊への入隊が認められた時、女性は体力テストに合格するために1.5マイルしか走りませんでしたが、今は3マイル走っていると彼女は言いました。

 次は、政治レベルでの動きです。military.comによると、軍の諮問委員会は、女性兵士がどんな制限もなく戦闘部隊に勤務することを勧告する準備ができているようです。

 2年前に議会が設立した「軍統率多様性委員会(The Military Leadership Diversity Commission)」は、軍務における多様性における答申案の一部として提案を出しました。最終報告はこの春に議会で行われることになっており、委員たちは今週、バージニア州で最終調整のために会合を開きます。

 答申案で委員は、現在の政策は彼らの任務に最も適した人材を選ぶことで指揮官の能力を制限しているとして、資格のある女性に地上戦部隊の追加の特技分野を開くために段階的なアプローチを要請しました。

 「今日まで、かつては締め出されていた部隊や職種への女性の統合が、部隊の団結のような重要な任務に関連した能力的要素へ負の影響があるという証拠は僅かしかありませんでした」と答申案は書きます。

 「さらに、国防総省の諮問委員会による女性の軍務に関する研究は、調査のために抽出されたグループの大半が、イラクとアフガンで戦闘に従事している女性が任務の達成に肯定的な影響があると感じていることを見出しました。

 答申案は戦闘部門における制約は、陸軍と海兵隊の職種の約10%に女性が勤務することを禁止しており、構造的な障害は彼女らの昇進、進歩を妨げかねないと指摘します。

 戦闘における女性の役割を支持する者は、この差別は支援部隊が日常的にIEDや武装勢力の待ち伏せ攻撃に巻き込まれるようになっているイラクとアフガンの新しい戦闘環境においては時代遅れだと主張します。

 2011年以来、114人の女性の米軍隊員がイラクで戦死し、23人がアフガンで戦死しています。

 しかし、軍事即応センター(the conservative Center for Military Readiness)の代表、エレイン・ドネリー(Elaine Donnelly)は、委員会の提案は、最前線の攻撃的な戦闘任務につく、危険な状況にある兵士を混乱させると言いました。

 待ち伏せ攻撃て英雄的に行動することは、身体を酷使する最前線の戦闘とは違います。「男性と女性の身体の違いが問題です」と言いました。「変更の目的がキャリアの発展と多様性ならばよいのですが、目的が国防をよりよくするのを助けることなら、現実から乖離します」。

 ドネリーは女性が一部の軍務から除外されているのは彼女らの功績を損なわないものの、女性兵士の数パーセントだけが厳しく野蛮な最前線の戦闘で必須の体力と耐久力の条件を満たすと認めます。

 しかし、「American Women Veterans」の創始者、ジェヌビエーブ・チェース(Genevieve Chase)は制限は現在、主に意味論の問題だと言いました。

 指揮官は女性兵士を必要な時に戦闘部隊に「随行」させ、彼女らを戦闘部隊に配属することなく戦闘を担わせることを許していました。

 「しかし、それは昇進と経験に値する軍歴の問題になります」と彼女は言いました。「我々はその仕事で女性が存在を認められ、認知されるよう求めています」。

 アフガンで勤務した陸軍予備役のチェースは、女性の戦闘員のための基準は男性用のそれと同じである必要がありますが、腕力だけが唯一の条件ではないと言いました。言語技能、指揮力、経験、その他の戦闘に関連する技術も任務の成功に不可欠です。

 24人の退役、現役の軍高官を含む委員会は、戦闘に関連する役割を担う女性は、直ちに戦闘部隊に配属するために開放すべきだと提言しました。

 報告は、提案は全会一致ではなく、何人かの委員は最前線の持ち場を女性に開放するのに反対したとも指摘しました。

 今月初め、陸軍参謀総長ジョージ・ケーシー大将(Gen. George Casey)は、他の進行中の軍事評価と共に、委員会の報告は女性の軍隊での役割についての議論を再燃させると予想すると言いました。

 戦闘の制限を解除するのに議会の承認はいりませんが、国防当局はどんな変更であれ、それを実施する少なくとも30日前に議員に通知しなければなりません。


 私が考えていたよりも遙かに積極的な改革が考えられているようです。2001年以降、米軍は戦いによって組織変革を迫られてきました。第2次世界大戦時、戦地へ行って人数が減った男性の代わりに婦人部隊が拡大され、それが戦後の女性の自立を促したのに匹敵する大きな出来事です。クリントン政権からの課題ながら同性愛者の軍務公認、そして女性の戦闘部隊への配備は、ここ数十年で最も大きな変化です。同性愛者の軍務公認はできれば平時にやりたいことでしょうが、もはや待ったなしの状況に来ています。

 ここで見られた意見が多様なように、女性の戦闘部隊配置は簡単に結論を出せる問題ではありません。記事に併設される掲示板には意見が沢山書き込まれていました。

 しかし、この記事に書かれていることが、答申案のすべてなのかという疑問があります。基本的に、答申案は完全に男女平等な戦闘部隊への配置を目標としていますが、勧告するのは現在女性が実際に担っている役割を開示することに留まるようです。この記事に書いてあることがすべてなら、現実の追認に留まります。しかし、最終案はまだ決まっておらず、他の重要な条項が含まれていながら、記事に書かれていない可能性もあります。最終案が出てから、もう一度考えてみたいと思います。



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