米陸軍がスマートフォンを戦場で活用へ

2011.1.1


 military.comによれば、米陸軍はスマートフォンを戦場の兵士に携帯させる実験を行っています。

 先月初め、フォート・ブリス基地(Fort Bliss)を拠点とする陸軍評価部隊(the Army Evaluation Task Force)は、様々な状況の演習を行い、iPhoneやAndroidシステムを搭載するその他のモデルのスマートフォンを初めてテストしました。

 マリーサ・タナー大佐(Col. Marisa Tanner)は「すべての兵士は無線機を持たず、すべての兵士はコンピュータを持たず、すべての兵士は状況認識や作戦環境の理解を得ているわけではありませんが、彼らは致死的、非致死的に突入したり交戦する前に、それらを知る必要があります」「敵はすでにこういうものの一部を持っており、彼らはそれらでとてもうまくやっています」と言いました。演習では電話機とアプリに加えて、携帯電話のネットワークが評価されました。

 携帯電話を使う主な利点は状況認識を提供することだと当局者は言います。電話機にロードされたソフトウェアを使い、兵士たちは他のチームメンバーや友軍の居場所を知ることができます。彼らはIEDが発見されたり爆発した場所のようなデータにもアクセスできます。演習の間、兵士は道路への検問所の設置、急襲の実行、指定された地域の治安確保などの任務を行いました。マイケル・トレズ技術兵(Spc. Michael Torrez)は、検問所で人々の写真を撮り、それを指揮所へ送信した時、バイオメトリック情報を収集するアプリが有益だったと言いました。評価員は、兵士が状況認識を強化し、重要な情報へ素早くアクセスするだけでなく、兵士たちが電話機と部隊指揮官に鮮明な写真を与える報告アプリを使って指揮系統により多くの情報を送ることに気がつきました。

 テストで発見された主要な弱点はネットワークそのものでした。携帯電話サービスは米軍により、2基のデータトラフックを処理するサーバーを持つ移動型携帯電話アンテナで提供されました。多くの場合、信号の受信はアンテナが見通せる場所に限られました。データー転送も鈍く、VoIPアプリが使えなくなりました。同時に複数のユーザーを支援できるシステムは今のところ開発中です。陸軍は民生用携帯電話技術を受け入れ、イラクとアフガニスタンの兵士へ、評価部隊が2011年中期までに評価し、改良する一部の軍用アプリをロードした電話機を装備する準備ができています。未来部隊統合委員会(the Future Force Integration Directorate)のマイク・マッカーシー(Mike McCarthy)は「来年の春か夏の初めの時点で携帯電話が戦域に配備され始めるのを見ることは非現実的ではないでしょう」と言いました。


 面白い試みですが、敵が携帯電話を活用しているというのは、2003年にイラクに侵攻した際、イラク軍が砲撃要請に用いていたことやイラクやアフガンの武装勢力がIEDの起爆に用いていることを指すのだとすれば、米陸軍は遅れをとりすぎです。

 明確な証拠はありませんでしたが、携帯電話を使う者がいる部隊が砲撃を受けることが多かったため、米軍は民間人の格好をした者を軍人とみなし、部隊の近くで携帯電話を使う者を攻撃するよう交戦規定を変更しました。携帯電話でIEDを起爆することも、よく知られています。映画「ハート・ロッカー」にも、イラク戦以降の戦いを象徴する携帯電話が登場します。もっとも、米陸軍はスマートフォンのアプリを使おうというのですから、話はかなり進歩したのかも知れません。

 当サイトでもコーナーを設けて、若干ながら軍用アプリを紹介していますが、これらの多くはリファレンス・アプリです。軍用の実用アプリとしては長距離狙撃用のアプリが有名です。近距離では照準器の通りに狙えばよいのですが、長距離では状況によって狙い目を変える必要があります。このアプリは弾丸の種類や目標までの距離などを入力すると、どこを狙うかを教えてくれるのです。しかし、こうした機械には専用機があり、風速計がついたものもあり、性能では一歩かないません。米陸軍が開発しているのは、戦場で情報を共有するための専用アプリのようです。写真撮影で使うのは、当然、撮影した写真が自動的に指揮所に送信されるようなアプリでしょう。

 民生用の機材の弱点は耐久力や信頼度です。iPhoneはそれほど丈夫ではありませんから、硬質のケースで覆うことになりそうです。時々、アプリは正しく動作しなくなります。兵士が勝手にアプリを追加して、それが動作不良を起こすかも知れません。敵の手に渡っても使えないようにするためにパスワードを設定しても、パスワードを入力するのが面倒だと感じた兵士が解除するかも知れません。データが受信できないと、古いデータが更新されず、ずっと前の友軍の居場所を見ることになるかも知れません。こうした問題をすべて解決するのが評価部隊の仕事です。

 IEDの起爆と情報共有とどちらが戦場での効用が高いのでしょうか?。アプリの内容が分からないので何とも言えませんが、IED起爆の方がより役に立つという印象です。情報共有には別の専用機が必要と思えます。スマートフォンは「とりあえず何でもできる道具」であり、万能機ではありません。



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