「WikiLeaks」が情報公開を継続

2010.8.9

 military.comによると、「WikiLeaks」は、アメリカに軍の機密書類を公開する計画を中止するよう要請されても、機密書類を公開し続けると言いました。

 「WikiLeaks」の公報、ダニエル・シュミット(身元を隠すために匿名)は「私は、我々が書類を公表し続けると約束できます。それが我々がすることです」と述べました。シュミットは特定の書類についてはコメントできないけども、アフガニスタン戦に関する機密書類の公表は、この紛争に関する大衆の理解に直接貢献したと言いました。「アフガン戦のような進行中の問題に関する知識は、安全のようなものを生み出すのを助ける唯一の方法です」「この理解によって願わくは、大衆による精査はよりよい政策を展開することで政府に影響を与えるでしょう」。彼はリークされた米政府の書類を同団体が公表したことが、アメリカの安全保障に脅威を与え、人命を危険にさらしたという主張を拒絶しました。「だから、我々は公表する前にホワイトハウスに、国際治安支援部隊が我々に論評を求めるように要請したのです」「この要請は開かれたままです。しかし、ペンタゴンは『損害の最小化』には関心がなく、この提案を議論するために直接、間接に我々に連絡しませんでした」とシュミットは言います。ペンタゴンは、安全への脅威を減らすために書類を編集することで「WikiLeaks」に連絡しなかったと言いました。ホワイトハウス広報官トミー・ビーター(Tommy Vietor)は、先月末に、「WikiLeaks」が書類を調べさせるために米政府に連絡したのは「絶対に、明確に、真実ではない」と言いました。

 「WikiLeaks」が公表した機密情報の問題点も浮上しています。military.comによれば、「WikiLeaks」が公表した資料から、無人偵察攻撃機(UAV)の運用実態の一端が明らかになりました。「WikiLeaks」が公表した書類から「UAVが戦闘任務に使われていること」「それらの一部は非常に強力で高価なミサイルを発射すること」「UAVがしばしば操縦不能になったり故障すること」が明らかになりましたが、専門家はこれらは明らかなことを報じただけだと言います。しかし、批評家は「WikiLeaks」のレポートには背景が欠けているといいます。UAVは10年間近く飛んでおり、UAVの任務完遂率は90%です。UAVは大方において成果を収めているという専門家の見方を記事は伝えていますが、Globalsecurity.orgの代表ジョン・パイク氏の「ハエを殺すためにハンマーを使うようなもの」という見解も紹介しています。


 事前に通告したという「WikiLeaks」と米政府の主張と、どちらが正しいのかは不明です。「WikiLeaks」が意図的に注意をひかない形で通告し、米政府がそれと気がつかなかった可能性もありますし、「WikiLeaks」が米政府にまったく連絡していなかった可能性もあります。「WikiLeaks」が、国防総省のどの部署に通告したのかを公表してくれれば、この疑問は解消されるでしょう。「WikiLeaks」にとっても、それを公表することは、自らの正当性を立証する最大の手段であると思われます。(彼らがなぜそれをしないのかは疑問です)

 また米政府も、公表によって危険にさらされた理由を、少なくとももう少し公表すべきです。「それは機密事項なので言えない」という主張は、この場合、妥当ではありません。というのは、こういう批判の手法は、その根拠がなくても行え、この分野では珍しくないものだからです。とりあえず、こう言っておけば相手の信用性を失墜できる、手軽で便利な手法なのです。例えば、太平洋戦争中、海軍がミッドウェー島を攻撃する計画を立てたことは機密事項でした。しかし、軍国少年たちはだれもが、「次はミッドウェー攻略だ」と確信していたといいます。地図を開いて考えれば、子供でもこれくらいは見当がつきます。しかし、これを公に口にすれば、たちまち憲兵隊に逮捕され、拷問を受けることになります。

 「WikiLeaks」がやった情報の公開は、生のデータを開示して、人々の関心を惹くという点で意味があると思います。しかし、内容は精査される必要があり、数も膨大なので、そのままとか、それらの一部だけを切り取るだけでは、意義は小さなものになります。私には、米軍の報告書の形式や使われている略語などが分かる点では興味深いのですが、これらの情報から何か言い得ることを引き出すのは、かなりの努力を要します。記事にあるように、UAVの問題点を見出したとしても、それはかねてから言われていたことだったりするわけです。UAVの墜落問題は7月に報じられていました(記事はこちら)。もちろん、複数の情報源によって問題を確認することも大事なので、その点では貢献していると言えます。

 むしろ、軍人も不満に思うような戦争を政府が命じれば、このような情報漏洩を誘発し、それが無謀な戦争がはじまる危険を減らすかも知れません。「WikiLeaks」の行動に価値があるとすれば、そういう政治的な意義だと考えられます。これは歴史的な転回点です。かつてなら、こんなことをした者は、政府によって処刑されました。今世紀は軍隊内の文化、戦争に対する考え方そのものが変化する時代なのかも知れません。今後、長い時間をかけて、この傾向が定着していくのかを確認する必要があります。この変化が当たり前になったとき、戦争文化は大きな変貌を遂げているはずです。この「変化」を見逃すべきではありません。

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