カンダハル攻撃の準備が進行中

2010.8.24

 military.comによれば、第101空挺師団第502歩兵連隊第2大隊指揮官ピーター・N・ベンチョフ中佐(Lt. Col. Peter N. Benchoff)は、来月、タリバンが誕生した地域を攻撃する準備を進めています。

 「治安は最悪です。進展ですか?。実態は何もありません。情報キャンペーン?。誰も我々を信じていません。統治?。この2ヶ月半で政府当局者が1時間、1度来ただけです」「ここではタリバンがホームチームです」「ここは116平方マイルのザリ地区(Zhari)です。武装勢力が戦士、薬物、爆発物を送り込み、市内に向けて攻撃を行う、カンダハルのすぐ西の地域です」。

 ホウズ・エ・マダッド(Howz-e-Madad)の米軍基地から約3kmにある地域は、タリバンが1994年に創設された象徴的な場所です。上級指揮官はザリ地区の戦闘を、国内で2番目に大きなカンダハル市を平定する広範なキャンペーンと呼び、全体的な勝利につながるとしています。ザリ地区はここ数年間、NATOが5回主要な作戦を行いましたが、武装勢力の手にあります。2006年9月、カナダ軍が主導する部隊がザリ地区とパンジャワイ地区(Panjwai district)付近で作戦を行い、28人の兵士を犠牲にしてタリバンを追い出しましたが、タリバンは数ヶ月後に戻りました。

 ベンチョフ中佐は、塹壕、迫撃砲、地雷で守備を固めたオマル師の学校があるシングザル村(Singesar)を制圧し、タリバンの動きと国道1号線の待ち伏せを止めなければなりません。10,000人の住民にタリバンとのつながりを止めさせることは、さらに難しいとみられます。1,000人の米軍と400人のアフガン軍が、住人10人に兵士1人という、理想的な比率で配備されています。

 2月に作戦が行われた隣接するヘルマンド州(Helmand province)のマルジャ(Marjah)は、依然として治安が確定し、効率的な政府が存在するか分かっていません。ザリ地区では、パトロールが毎日出され、アフガン軍はシングザル村へ何度か効果的な襲撃を行いました。

 この地域唯一の医療施設は倒壊しそうな市場にある小さな薬局だけです。唯一の学校は2年以上前に閉鎖され、地雷が仕掛けられています。住民は、新任で疑問符のままのカリム・ジャン地区知事(Karim Jan)の地域政府にすらつながりを持ちません。米軍は、地元民を雇い、バザールや農民の市場、小さなダム、農場と市場をつなぐ道路を造るために50万ドル以上を持っています。このメッセージを伝えるために、ラジオ局が放送を行う予定です。

 それから別の話題ですが、military.comによれば、バーレーンの米海軍通信センターの指揮官マリー・アン・L・ギース中佐(Cmdr. Mary Ann L. Giese)が解任されました。海軍広報官によれば、解任の理由は不適切な人間関係がいくつかあったことです。ギース中佐は2009年1月から通信センターの指揮官でした。この重要な時期にあって、海軍指揮官の解任事件が止まりません。


 記事から興味深い部分だけを拾い上げてみました。

 この記事は、来月行われるカンダハル作戦の準備が着々と進められていることを報じようとしたものですが、実際には、何もかもうまく行っていないことを説明しています。

 米軍とアフガン軍はカンダハルの西方から徐々に接近しているようですが、事態が進展しているようには見えません。特に、マルジャ戦の結果が依然として不明だというのは、地域を制圧しても、数ヶ月すれば元に戻る実態を表しています。ザリ地区も過去に掃討作戦を行ったのに、いまはタリバンが支配しています。仮に、カンダハル市を制圧しても、しばらくすればタリバンの支配に戻ると予測できます。こんな成果につながらない作戦のために兵士の命を危険にさらすことは避けるべきです。太平洋戦争中の硫黄島上陸作戦で、海兵隊のホーランド・スミス中将は、犠牲ばかりが多い作戦として反対したといいますが、戦争において人は案外と犠牲を顧みないものです。結果が出るかどうかを無視して、人はあたかも兵士の命を祭壇に捧げるだけで満足するものなのです。

 治安作戦には住民50人に兵士1人が必要といわれますが、ザリ地区では、その5倍の兵士が投入されています。これでうまく行かないのなら、誰もこの作戦を成功させられないでしょう。

 こういう不毛な軍事作戦を見ることほど、嫌なものはありません。


 

Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.