2011年以降もイラク駐留は必要か?

2010.8.14

 military.comによれば、アメリカとイラクで、2011年の撤退期限の後も、米軍をイラクに駐留させるべきかどうかの議論が湧き起こっています。

 両国の安保合意は、2011年末までにイラク駐留米軍はすべて撤退することにしています。9月1日までは、50,000人がイラクに残りますが、戦闘の権限は厳しく制限されます。

 クルド人のイラク軍指揮官ババキル・シャカット・ジバリ大将(Gen. Babaker Shawkat Zebari)は6月に、AP通信のインタビューの中で、陸軍は2020年まで国を守る準備ができないかも知れないと述べ、それまでは一部の米軍基地が駐留してほしいと述べました。フロリダ州タンパでの式典に向かう途中、ロバート・ゲーツ国防長官(Defense Secretary Robert Gates)は記者に、イラク政府が望むなら2011年以降も駐留する可能性があると述べました。爆弾事件はバグダッドで毎日起きています。7月に死亡した武装勢力に殺された民間人の数は過去2年間で最高になりました。スンニ派とシーア派の報復攻撃が内戦を最高に激化させた2005〜2007年の間よりも暴力はかなり減ったとはいえ、イラクは安定にはほど遠い状態です。マリキ首相すら、米軍の援助は660,000人と推定されるイラク軍、警察、民兵組織のために、2011年以降もずっと必要だと言いました。


 記事のタイトルに惹かれて読みましたが、撤退を遅らせるには弱い理由ばかりで、大した記事ではありませんでした。で、要点だけを紹介しました。

 撤退が決まった後で、ジバリ大将みたいな意見が出るのは自然な話で、ゲーツ長官が多少含みを持たせた発言をするのも自然な話です。しかし、オバマ政権が撤退延期を決断することはないでしょう。現在、スンニ派とシーア派の対立は解消されていませんが、両者共にアルカイダによるイラク支配は望んでいません。彼らの対立とアルカイダのテロは性質が違い、同一視すべきではありません。何があろうと、イラク軍が独力で治安を守る努力を続けるのです。米軍は戦費を削減して、アルカイダやその他の脅威に備えなければなりません。この方針を変更する余地はまったくありません。米軍は無人攻撃機による活動は続けますし、支援が完全に途絶えるわけではありません。問題はいつイラクから撤退するかではなく、その後にどんな戦いをするかです。今後も、こういう意見が出てくるはずですが、気にすべきではありません。


 

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