キアレッリ大将が兵士への薬物投与を否定

2010.8.10

 military.comによると、8月8日放送のABC番組「This Week with Christiane Amanpour.(日本語版タイトル『アマンプール』)」で、陸軍副参謀長ピーター・キアレッリ大将(Gen. Peter Chiarelli)は、陸軍は兵士が戦闘に耐えられるように薬物を与えることはしていないと言いました。

 キアレッリ大将は、兵士の自殺と犯罪が急増しているという7月の陸軍の報告書を引用し、この研究が「データは(陸軍が)軍を安定させるために、より薬剤に依存し始めているかも知れないことを示唆します」というのを懸念していると言いました。報告書は、3分の1の兵士が何らかの処方薬を用いており、「事実、ケーススタディの情報は、軍が合法、非合法の薬物の両方に徐々に依存し始めていることを示唆しています」と続けています。キアレッリ大将は、昨年106,000人の兵士が3週間以上、抗鬱剤や抗不安薬を含む処方薬を用いたことを認めました。しかし、薬物は米中央軍の医療部が認めたものだと言いました。

 「高度8,000フィート(約2,438m)を70〜80ポンド(約31.7〜36.2kg)の荷物を詰めたナックサックを背負って歩く、2〜4回派遣された兵士は、苦痛のある膝や脚を負います」「(彼らは)帰国して手術を受けるべきでしょうが、次の派遣に戻り、鎮痛剤などを用います。我々は、常に愚痴を言わず、痛みがあるのを指揮官に隠す兵士を抱えています」とキアレッリ大将は言いました。大将は繰り返される戦地派遣が問題の一部だと言いましたが、自殺の急増は頻繁な派遣のせいではないと言いました。自殺した兵士の約60%は1回目の任期で、自殺は派遣の初期に起きていると言います。


 キアレッリ大将が兵士の脚の怪我について触れた理由を説明します。

 重い荷物を背負って歩く兵士が膝や脚に障害を持つのは、よく知られたことです。私がまだ若い頃に怪我で入院したとき、病院の医師は自衛隊病院にも治療に行っている人で、自分の手元に置きたい患者を転院させていました。私の病室には3人の陸自隊員がいましたが、全員が膝の故障でした。米軍でなくても、脚の怪我は陸軍の隊員につきものといえます。

 こうした怪我は苦痛を伴います。常時痛むのを緩和するために薬物に依存することは、特に思考を要しません。我々も仕事で疲れたらビールを飲んで眠り、翌日すっきりと目覚めたいと思うものです。その程度が進むと、アルコールから薬物になるのです。ビールの場合、アルコールで筋肉が弛緩するのと、ホップに含まれるハーブ成分が睡眠を誘発するためです。麻薬になると、これがもっと強力に効くのですが、副作用という問題があります。軍人にアルコールや薬物の中毒者が多いのは、肉体的、精神的にきつい仕事であるためです。せいぜい、アルコールを苦痛の緩和に少量使うだけで済ませるのが健全といえます。

 しかし、兵士を戦わせるために薬物を使うことが、アメリカで懸念されているとは思いませんでした。いくらなんでも、それは常識外です。かつて、日本軍や米軍で兵士に麻薬を与えたことがありましたが、現在もやっているとは思いません。治療に麻薬が使われることが混同されるのかも知れません。兵士が個人的に麻薬を使う可能性は常に高く、それこそ懸念されるべきだと思います。

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