インターネットに溢れる誤報・偽情報

2010.7.6


 spacewar.comが世界人口の26%、18億人がつながっているインターネット上の誤報、偽情報について報じました。

 記事には、とほうもない情報に関する最近の実例がいくつも載っていますが、3つだけ引用します。

-- サウジアラビアは、戦闘爆撃機がイランの核施設を攻撃し、帰還し、空中給油を行うために、イスラエルと領空通過権の秘密取引を行いました。


-- イスラエルはイランを空爆するためにコーカサスに軍用機を集結しています。


-- オサマ・ビンラディンとアイマン・アル・ザワヒリ副官、過去5年間、革命防衛隊に保護されてイランに隠れていました。イラン北部、コーラサン州、マシャッドから西130マイルにあるサブジバーは、世界で重要手配されているテロリストが、アフガニスタンに関与する約40ヶ国の国家の情報機関による国際的な追跡を逃れた場所です。

 

 アメリカ人の60%が同時多発テロの背後にサダム・フセインがいると信じていました。また、同時多発テロがCIAとモサドによる陰謀だと信じている人が大勢います。68億人の世界人口の中で、18億人がインターネットを、42億人が携帯電話を利用しています。1940年5月に、ウィンストン・チャーチル首相は「真実が靴を履く前に、偽情報は世界を半分回る」と言いました。


 他は省略します。記事はインターネットによるデマの流布を懸念する内容ですが、特に具体的で、重要な情報が書かれているわけではありません。しかし、インターネットが混乱をもたらす可能性は常にあると、私も考えます。

 メディアが報じる内容でも、インターネットにより誤報はすぐに伝わります。私は、テポドン2号打ち上げの際に流れた誤報が、すぐに地球の反対側のメディアでも引用されていたのを見たことがあります。インターネットのニュースは更新間隔が短いので、こういう現象が起きるのです。

 かつて、オーソン・ウェルズがラジオドラマで「火星人襲来」を放送した際、本物の地球侵略と信じた人たちがパニックを起こしました。その後、何度か同じような放送があった際も、やはりパニックを起こした人たちがいました。日本では、この種の情報が騒動を起こすことは少ないのですが、アメリカではそうではありません。ある米国内の地方警察は、住民から山の洞窟でビンラディンを見たという通報により、捜索を行って、誰もいなかったと公式に発表したほどです。それでも、私は「隠れUFOマニア」を2人知っています。こういう人たちは「人類は月に行っていない」といった類の話を本気で信じています。彼らの話を聞くと、想像が先行していて、根拠については頓着していないことが分かります。彼らにとって「あってもおかしくない」は「間違いなく真実」と同じなのです。

 見た場所は忘れましたが、軍事マニアが集うネットフォーラムで、白リン弾がいかに無害かを議論していたことがありました。白リンが皮膚に付着した場合、水で洗うことになっているのを引用して、彼らは「水で洗い落とせるのだから、白リン弾は大して危険ではない」と言っていました。核爆弾の死の灰を浴びた場合も、最初にするのは水で洗い流すことなので、こんな主張は成り立たないのですが、軍事マニアには、白リン弾が危険なのは都合が悪いようです。

 これらは笑い話で済む話です。もっと深刻なのはイスラム教国に定着している、アメリカやイスラエルの陰謀説です。これらを変えさせるくらいの広報活動をやらないと、アルカイダへの共感はおさまらないでしょう。戦いが始まって8年以上になるのに、まだそういう動きがアメリカに見られないのが心配です。ペトラエス大将は着任後に、一致団結で勝利を求めるという演説をしたようですが、それでは足りません。米国内では、オバマ大統領のアフガン撤退戦略に批判が出ているようです。共和党のマイケル・スティール上院議員が、アフガンでは勝てないと発言し、至極まともな意見なのに、批判を浴びたといったニュースがあります。こうした目先のことで議論するよりも、大局的な見地から、プロパガンダ戦略について議論すべきです。アメリカには、世界中の才能を集める映画の技術があります。これを用いて、イスラム教国の映画監督も参加して、イスラム過激派への共感を和らげるような映像作品を作ることは可能なはずです。


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