カンダハルで増援の警察部隊が不評

2010.7.26


 military.comが、カンダハルに増援として投入されているアフガン国家治安警察(Afghan National Civil Order Police: ANCOP)の問題を報じました。

 ANCOPが行う捜索や検問に、地元住民は彼らが自分たちを敵だと思っていると感じて憤慨しています。カンダハルの警察指揮官アブドル・ハディ中佐(Lt. Col. Abdul Hadi)は、自分の地域にいるANCOPが、北東約300kmにあるカブールから来ており、地域をよく知らず、カンダハルで話されている言葉をよく知らないと言います。ANCOPの部隊は地元民と交流しません。米陸軍のタッド・ライマン大尉(Capt. Tadd Lyman)は、ANCOPはよく訓練されているけども、部族や民族による特徴のために、障害をもたらしていると認めました。ANCOPは地域に対する関心を持っていません。ANCOPはフランスの憲兵のような警察にならって、ANCOPは町を一掃し、治安を維持するよく訓練され、教育を受けた組織と言われます。しかし、海兵隊員は彼らの能力が不足していることを見出しました。検問に配置したANCOP隊員がいなくなるのです。彼らは夜間暗視装置なしに一晩中外にいたくないと言い訳します。ある海兵隊員は「タリバンが夜間暗視装置を持ってるって?」と笑います。また、ANCOPは町をパトロールせず、目標とされた地域に向かい、基地に戻るまで、数時間町に分散しているだけです。


 記事の後半は省略します。

 日本でも東京で大きな警備があると、地方から警察官が派遣されます。地元の事情をよく知らずに交通整理などを行うので、地元民から不満の声が出たりします。それでも、日本のように国家が統一されてから長い歴史を経た国では、それほど大きな問題にはなりません。アフガンのような国は、モスク単位で社会ができあがっています。国家意識もありますが、それよりもモスクを中心とした地域社会への帰属意識の方が強いというくらいです。

 米軍がアフガン軍を指導することには、大きな障害があります。アメリカには、民族の違いを乗り越えて、法律によって結束した社会だという意識があります。軍隊は地域ごとに作られますが、一方で全米から集めたオールアメリカン部隊もあります。米軍には、既定のルールに従う、例外は認めないという原則があります。髭を伸ばすにも規定されたとおりの方法があり、髭を伸ばさない場合は、綺麗に剃る必要があります。イラク軍を再建するとき、米軍はこのルールまで例外なく持ち込みました。イスラム社会では、男性は髭を伸ばすのが普通です。しかし、米軍は例外なしの原則に従い、これを強行しました。ANCOPも、こうした米軍の文化からは、違和感なく導入が決められたのだと思われますが、定着するのかは疑問です。また、オールアフガンの部隊を作るのは、かなり難しいでしょう。今後、これが大きな問題へと発展しないかを注していく必要があります。


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