韓国が非武装地帯にロボットを実験投入

2010.7.14


 military.comによれば、韓国は非武装地帯に、侵入者を探知して、殺害できる歩哨ロボットを配置します。

 韓国国防省広報官は「我軍はこうしたロボットを境界線沿いでテストしてきた」とAFPに語りました。広報官は詳細は避けつつも、偵察、追跡、攻撃、音声認識システムを持つ2台のロボットが1つのユニットに統合されていると言いました。聯合通信によれば、4億ウォン(330,000ドル)のロボットのユニットが、朝鮮半島を二分する非武装地帯の中央区域の警戒哨所に先月配備されました。匿名の防衛当局者は、このテストが成功したら、警備ロボットは非武装地帯に配備される、と言います。ロボットは潜在的な脅威を探知するために、熱と動きを用い、指令センターに警報を発します。指令センターのオペレーターがロボットの音声、映像伝送システムで脅威の潜在性を識別できない場合、オペレーターは銃か40mm自動グレネードランチャーで攻撃を命じます。韓国は、武器と戦場の人間の兵士を補完できるセンサーを持つ、高度に洗練された戦闘ロボットも開発しています。120万人の北朝鮮軍に対して、韓国軍は655,000人。出生率の低下は、韓国が将来、兵数を維持するために奮闘することを示唆します。

 もう一つ、military.comによれば、先日、北朝鮮がアメリカに申し入れた実務レベル会議を「管理上の理由」により延期しました。ソウル大学のヤン・モージン教授は、北朝鮮が十分に会談の準備ができなかったことを感じると言います。「彼らはまだ、会談の戦略に関して、キム・ジョンイルの賛成を得ていないのかも知れません」。


 類似する記事が朝鮮日報に載っており、歩哨ロボットと思われる写真が掲載されています。見た感じでは、歩哨ロボットは固定式のようです。おそらく、哨所内に配置するのでしょう。戦闘ロボットの方は、おそらくキャタピラで移動するはずです。こうしたロボットを韓国が開発していることは、以前から知られていましたが、現場に投入されるのははじめてです。

 これは歩兵の侵入を食い止めるための兵器です。脱北者を発見するためにも使われ、最初の接触時に韓国軍に損害が出るのを防止する程度の役割を果たします。非武装地帯での警備活動の中心は、侵入者の識別です。脱北者か軍人かを見極めるのが、最初の仕事です。防衛する韓国軍にとって、脱北者であっても、侵入に気がつかずに素通りされることは恥であり、そうした部隊は師団単位で配備替えされるといいます。歩哨ロボットは、こうした任務を、より安全で簡単にします。

 記事の末尾にある開発理由はいかにも理屈という感じがします。北朝鮮が120万人中の何割が動員できるかが問題です。編成上の兵数と、実際に動かせる兵数には、普通、大きな差があるものです。北朝鮮の場合、兵数を大きく見せかけて、韓国を威圧しようとする意図があります。かつて、ヨーロッパ諸国は軍事予算を低く公称し、戦力をより小さく見せようとしたものです。アドルフ・ヒトラーはそれと正反対のことをやり、実際には少ない兵数をより大きく見せようとしました。北朝鮮は、このナチス・ドイツと似た環境下にあり、兵数を大きく見せようとしていると、私は考えます。また、兵器は韓国と米軍の方が優れています。Google Earthを見ると、非武装地帯の北側には、巨大な陣地が構築されており、北朝鮮軍がこうした防衛施設を歩兵で食い止めようとしていることが分かります。兵数が多いのは、こういう陣地に張り付ける人員を確保するためと考えられます。しかし、南進しようとすれば、優勢な装甲部隊と、それを支援する航空部隊が必要です。北朝鮮には、その両方がありません。ロボット開発の理由は、損失の防止が目的なのは当然ですが、志願者を確保するための工夫でもあります。天安が撃沈された事件以降、海軍へ志願する者が減ったという報道もあります。韓国人は戦争で子供を失いたくないと考えています。高度な技術を手に入れた韓国は、当然進むべき道を進んでいるわけです。

 北朝鮮が申し入れた会議は、おそらく、北朝鮮が国連の議長声明について評価中で、対応の練り直しのために延期されたのだと考えます。北朝鮮は、国連による制裁はなく、議長声明のレベルで終わり、声明で名指しされなかったことで、一応の満足を得たはずです。さらに圧力を強めるかどうかの検討に入ったのでしょう。

 ところで、先日から、ロシアが天安沈没と現場海域から発見された魚雷の部品は直接関係がないという調査結果を、中国とアメリカに非公式に伝えたという報道がなされています。真偽のほどは、まだ不明です。私はこの報道について懐疑的です。続報が出たら、また検討してみたいと考えています。


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